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医療報道を斬る

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2008.05.13
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カテゴリ:事件
 灯油をかぶってライターで火を付けて自殺しようとした人に、着替えもしていず灯油をかぶったままの状況で、たばことライターを差し出した人が居る。それも警察官が、警察署の中で。こんなドリフのコントのようなことが実際に行われ、人命が失われるとは思わなかった。最初にこのニュースを見たとき、「医療なら完全に業務上過失致死だな」と思った。

 以下は http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080511k0000e040016000c.html からの引用。元記事には図面もあり、たばこはテーブルの上にあって、取調官の誰からも見えていたようだ。

全身やけど:灯油かぶった男、取調室でたばこ引火し死亡
(毎日新聞社)
 愛知県警熱田署(名古屋市熱田区)は11日夜、泥酔して灯油をかぶり同署で保護していた無職男性(45)が、取調室で全身にやけどを負い、約21時間後に収容先の病院で死亡したと発表した。男性は灯油をかぶった服のままで、署員にもらったたばこを吸い、引火したらしい。署内は全室禁煙だった。消火作業中に同署地域課の男性巡査部長(54)も右手に軽いやけどを負った。

 調べでは、男性は10日午後8時40分ごろ、熱田区の自宅で同居女性(59)と口論になった。女性の110番通報で熱田署員6人が駆けつけると、男性は室内にあった灯油の容器(18リットル入り)を持って路上に飛び出し、約200メートル歩きながら計3回、約5リットルの灯油を頭からかぶった。

 男性がライターを掲げ、火をつける仕草をしたため、署員は午後11時ごろ男性を警察車両で熱田署に搬送。同15分ごろから2階の刑事課取調室で署員が交代で事情を聴いた。

 しかし、男性は飲酒検知を拒否し、たばこを要求。このため、男性巡査(24)が署内の自動販売機でたばこ1箱を買って取調室の机の上に置き、別の男性巡査(24)が自分のライターを添えた。

 その後、別の署員3人で事情を聴いていた11日午前0時15分ごろ、床にあぐらをかいて座っていた男性のズボンの右ひざが燃え始め、立ち上がると激しく燃えて全身に広がったという。

 同署によると、署員3人はどのように出火したか「見ていない」と話しているが、床にたばこの吸い殻が落ちていたことから、灰が衣服について燃えたか、ライターでたばこに火をつけようとした時、引火した可能性があるとみて調べている。

 熱田署の近藤道晴副署長は「男性の衣服を着替えさせず、禁煙の署内でたばこを許可したのは不適切だった」と話している。【式守克史】


 もちろん明らかな失態であり、故意に相当するほどの重大な過失かと言えば、その通りだと思う。いかに警察内部のこととはいえ、昨今の国民の処罰感情の高まりを考えれば、業務上過失致死を問わないわけにはいかないだろう。いつも業務上過失致死に問われることを恐れながら仕事をしている医師であれば、処罰感情は国民の平均より高いかも知れない。

 でも、以前書いたWHOのガイドライン“Draft guidelines for adverse event reporting and learning systems”を思い出してみよう。
Systems-oriented. Recommendations should focus on changes in systems, processes or products, rather than being targeted at individual performance. This is a cardinal principle of safety that must be reinforced by the nature of recommendations that come from any reporting system. It is based on the concept that even an apparently egregious individual error results from systems defects, and will recur with another person at another time if those systems defects are not remedied.

対象はシステム:勧告は個人の能力を目標にするのではなく、システムや手順や結果に焦点を当てるべきである。これが、あらゆる報告制度からもたらされる勧告によって補強される安全性の、基本原則である。これは、明らかにひどい個人的な過誤であろうとシステムの欠陥から起こり、システムの改善がなければ、また別の人が別の時に同じ過誤を起こすという考えに基づいている。


 どんな馬鹿なことでも、起きた以上は原因があるのだ。今回の事件も、報道に依れば、関わった署員は最低5人はいる。うち二人はタバコとライターを渡した張本人で、残りの3人も目の前にあるタバコに疑問を持たなかった。このようなことをする「馬鹿」が滅多にいないのであれば、5人集まる確率はほとんど無いだろう。おそらくは、何らかの条件がそろえば、ついやりがちなミスなのだと思う。重要なのは刑事罰を与えることではなく、原因究明と再発防止だ。それは医療だけではなく、すべての過失事例に共通のものだと思う。

取調室での焼死、署員らを捜査へ 業過致死容疑
2008年05月12日15時01分 asahi.com
 愛知県警熱田署の刑事課取調室で、灯油をかぶった状態の無職の男性(45)の体に火がつき、広範囲熱傷で死亡した事件で、県警は12日、取り調べにあたった署員らについて業務上過失致死の疑いで捜査を始める方針を固めた。

 県警は、署員らが取り調べの際に男性に不用意にライターを手渡し、男性の死亡という重大な結果を招いていることから、刑事責任の有無について調べることが不可欠と判断した。

 県警によると、10日午後11時15分ごろから取調室で男性から話を聞いていたところ、男性の右ひざ近くから火が上がっていることに、室内にいた巡査部長ら3人が気づいた。衣服が燃えて全身にやけどを負い、男性は11日夜に死亡した。

 取調室の床にはたばこの吸い殻1本が落ちていた。男性が「たばこを吸いたい」と言ったことから、男性巡査(24)がライターを手渡していたという。


 起訴まで行くのかどうかは分からないが、これでは個人のミスで終わって、認知心理学的な面からの調査や、システムの検証などはおざなりになりそうな気がする。





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Last updated  2008.05.13 05:59:22
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