2010/03/27(土)10:09
人民裁判
何か大きな事故が起きたとき、あの時ああしておけば、こうしておけば、と言った後悔をすることは良くあります。同じ失敗を繰り返さないためには反省をすることは大切なことですが、同じ論法で刑事罰を与えるのは間違いです。
結果が出てからは、どうしても結果論に陥りがちです。いわゆる後出しジャンケンです。そのような判断の誤りを防ぐためにはそれなりの教育や訓練が必要なのですが、検察官・警察官・裁判官といった司法関係者ですら、そのような過ちを犯しやすいと、私は思っています。素人の集まりである検察審査会であれば、やはり感情的な後出しジャンケンになるのも無理もないのでしょう。
神戸第1検察審査会の議決要旨/尼崎JR脱線事故
2009/10/22 19:01 四国新聞
尼崎JR脱線事故でJR西日本の歴代3社長を起訴相当とした神戸第1検察審査会の議決要旨は次の通り。
【元社長3人の過失】
1992~2006年にかけて井手正敬、南谷昌二郎、垣内剛の3氏はそれぞれJR西日本の代表取締役社長を務めた。JR東西線の開業によって福知山線の利用客を増加させ、収益拡大を図る経営方針の下、井手氏は福知山線から東西線への列車乗り入れを円滑にするため事故現場の線路変更工事を96年に完成させ、快速列車の本数を1日当たり34本から94本に増加させた。
南谷氏は宝塚―尼崎間で、垣内氏は塚口―尼崎間でそれぞれ快速列車の基準運転時間を短縮させ、1日当たりの快速列車本数を増加させた。
3人とも事故現場のカーブには自動列車停止装置(ATS)を整備すべきであることを総合安全対策委員会の職員に指示すべき業務上の注意義務を怠り、速度順守の指導で十分と考え、転覆限界速度を上回る速度で事故現場のカーブ手前の直線で列車を運行させた過失がある。
【信頼の原則】
3人はいずれも安全対策委員会の委員長で事故防止などを統括。安全対策を実行する最高責任者で、事故現場のカーブでの転覆危険性を格段に高めたのだからカーブにはATSを整備すべきことを委員会の職員に指示すべき業務上の義務は否定できず、担当職員に権限を委譲していたとして免責される立場にない。
【まとめ】
3人は96年の(JR函館線の)脱線転覆事故を精査することもなく、ATSの整備を指示せず放置した結果、106人の命を奪い、485人(兵庫県警発表は562人)に傷害を負わせた。担当職員に権限を委譲したとの理由で3人が刑事責任を問われないとの結論には到底賛同できない。
ATSを設置しないことが罪に問われるべきなのであれば、事故が起きる前に法的に義務づけるべきでした。事故が起きてから刑事罰を科そうというのは典型的な後出しジャンケンです。
また、当事者だけに責任を負わせようというのは、公平ではありません。ATSが刑事罰を科されるほど不可欠だというなら、設置を義務づけなかった行政も同罪です。後出しジャンケンとしてもたちが悪いと思います。JR西日本の当時の責任者を起訴するのであれば、当時の運輸省の責任者も起訴するべきでしょう。
素人に、起訴の権利なんか与えちゃいけないんじゃないのかな。菅家さんの冤罪が問題になっているけど、逮捕から判決に至るまで、メディアも民衆もみんなで菅家さんを警察や検察以上に犯人として断罪していたんじゃないでしょうか。今になって、警察や検察に非難の矛先が向いているけど、我々も同罪ですよね。