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医療報道を斬る

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2013.01.16
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カテゴリ:医療
 今年初めてのエントリなので、皆様、明けましておめでとうございます。

 ここのところ医療ネタがなくて、以下にご紹介する記事を見たときに取り上げる気満々でした。でも、あまりに情報が少ないので続報を待っていました。ところが、いくら待っても続報が見つからないので、やむを得ずこのまま取り上げます。何があったのか専門家が分かるような記事を書いて欲しいのですけどね。

鼻の手術後に男性死亡 宮崎、業過致死の疑いも
13/01/09 共同通信社

 宮崎市の病院で昨年12月、同市の70代の男性が鼻の手術を受けた後に意識不明の重体となり、死亡していたことが9日、宮崎北署への取材で分かった。同署は医療ミスによる業務上過失致死の疑いもあるとみて、関係者から事情を聴くなどして捜査している。

 宮崎北署によると、男性は昨年11月末、蓄膿(ちくのう)症を訴え、同病院で麻酔の後に手術を受けた。手術は成功したが、術後に容体が急変。意識不明となり、宮崎市内の別の病院に搬送されたが12月12日に死亡した。

 同署は、男性の遺族からの死亡届を受け、遺体を司法解剖。死因は麻酔後に舌が気道をふさいだことによる低酸素脳症と判明した。

 宮崎北署は麻酔と男性の死亡に因果関係があるかどうか詳しい経緯を調べている。同病院では2011年6月にも、20代の女性が鼻の手術後に死亡している。

 「手術は成功したが、術後に容体が急変。意識不明となり」という記述と、「死因は麻酔後に舌が気道をふさいだことによる」という記述との整合性をどのように取るのかが問題になりそうですね。

 麻酔を行うのは手術の前ですから、麻酔の導入後比較的直ぐに舌が気道を塞いだ(舌根沈下)のであれば、そのまま手術を行わないでしょう。手術をしたのであれば、その間問題はなかったはずです。以上からの私の推論は以下の通り。

 推論に入る前に鼻の手術の特殊性について少し解説をします。鼻の中は止血操作が困難なので、術後にガーゼを鼻の中に詰め込んで自然に止血されるまで待ちます。そのためしばらくは鼻呼吸が出来ません。でも、蓄膿症の患者は元々鼻呼吸の出来ない人が多いので、あまり問題になりません。だからといって、そのような人がすべてではなく、中には鼻呼吸が主体の人もいるので悩ましいのですね。鼻呼吸主体の人が鼻をふさがれると、舌根の沈下による窒息が起きやすくなるということはありそうです。夜間無呼吸症候群の人は睡眠中に舌根沈下が起こりますが、そのまま窒息することはなく、苦しくなれば睡眠が浅くなり呼吸をします。でも、鼻が塞がれているとどうなのか、私には分かりません。

 まずは麻酔法ですが、単純に局所麻酔だけで行った場合、術後に舌根沈下による気道閉塞が起こるようなことは考えにくいのですが、夜間無呼吸症候群の人なら分かりません。

 局所麻酔に何らかの鎮静をした場合、舌根沈下が起こりやすくなり、鼻が完全にふさがれると呼吸が出来なくなることはあり得ます。また、全身麻酔の場合、覚醒が不十分だと同じ事が起こる可能性があります。鎮静効果のある鎮痛薬を使っていても起こりえます。

 全身麻酔直後であれば十分に観察をしているでしょうから、舌根沈下による気道閉塞で窒息に至ったのは手術室から病棟に帰った後と思われます。ということで、局所麻酔に併用した鎮静薬による舌根沈下か、全身麻酔に併用した鎮静薬または鎮静効果のある鎮痛薬の効果の残存による舌根沈下が起こった、しかも患者は夜間無呼吸症候群であった、というのが私の推論です。

 少ない情報から無理矢理推理しただけですので、もちろん事実と異なっている可能性は少なくありません。

 実を言うと、私自身も恐ろしい目にあったことがあります。鼻呼吸が出来ないことを考慮して、いつもより十分に覚醒してから気管チューブを抜いたのですが、鼻呼吸が出来ないことでパニックになって、患者が口を閉じてしまったのです。苦しくてよけいにパニックとなって歯を食いしばり、体色が完全に紫色になるほどのチアノーゼとなりました。何とか無理矢理口をこじ開けて酸素を送り込み、事なきを得ました。

 そんな経験をしているものですから、死亡したからと言ってミスだと決めつけるのも気の毒だと思います。まして刑事事件にするというのはあんまりじゃないかと。もちろん何らかの看過できないような、あまりにずさんなミスがあったのであれば別ですが。





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Last updated  2013.01.16 17:56:06
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