2016/12/11(日)10:38
癌になってもニセ医学にだまされないように
癌に限らず、重大な疾患を宣告されれば、誰でも心が揺らぎます。
そんな時、安易な道を示されれば、そちらの方に行きたくなるでしょう
麻酔がいくら発達したとは言え、手術となればいろいろとつらいことはあります。
手術と比べればわずかですが、抗がん剤にも好ましくない副作用があります。
どちらもやらないで済むならやりたくないですよね。
実は、癌放置療法を推奨している医師が居ます。
療法というのはおこがましくて、要するに、何も治療しなくて良いという主張です。
手術や抗がん剤に不安を感じている患者の中には、心を動かされる人も居るでしょう。
標準的な手術や抗がん剤といった治療を受ければ治癒が見込める患者が、そんな戯言に惑わされ、みすみす悲惨な死を迎えるのを見るのはつらいものがあります。
こんなことを書こうと思ったのは、幻冬舎が近藤氏のこんな記事を配信したからです。
一部を引用します。
では膀胱がんを放置した場合、その後はどうなるのでしょうか?
他のがんと同じく、(1)増大 (2)不変 (3)縮小 に分かれます。縮小するのは少数でしょうが、増大と縮小を繰り返した浸潤がんを診たこともあります。
実際には増大することがほとんどで、不変や縮小は、そんなこともたまにはあるよね、というレベルです。
増大する場合にも、がんから毒がでるわけではないので、死ぬことはありません。尿がだせなくなることも、まれにありますが、手術以外の対処法で、腎不全になるのを防ぐことができます。
膀胱癌を放置した場合、とりあえず問題となるのは血尿です。
膀胱癌で亡くなった松田優作氏も、治療を受けずにハリウッドでの撮影を優先したときに悩まされたのが血尿でした。
記事のあとの方で血尿は我慢して膀胱癌を放置することを勧めていますが、血尿はわずかなら我慢でも良いかも知れませんが、ある程度多くなれば貧血になって放置してはおけませんし、膀胱内で血液が凝固すれば尿の排泄が出来なくなり、これも放置できません。
近藤氏は、実際には患者を診たことはほとんど無いのではないかと疑いたくなる発言です。
膀胱癌が進行すれば壁外浸潤や転移によって癌は全身に広がります。
近藤氏は「がんから毒がでるわけではない」と言いますが、ある意味「毒」を出しています。
癌が全身に広がった終末期には、多くは見る影もなく痩せています。
いわゆる悪液質です。
がん細胞は異化作用を促進する物質を出しています。
そのため、筋肉や脂肪組織の細胞が分解され、がん細胞の栄養になっていきます。
いわば、がん細胞は健常細胞を食い尽くすことによって患者を死に至らしめているわけです。
私は残念ながら手術適応がないほど進行した胃がん患者ですが、手術の適応があれば受けたかった。
仕方が無いので抗がん剤の投与を受けています。
抗がん剤だけでは、残念ながら治癒は見込めません。
それでも、日常生活が可能な状態を保ったままの延命効果があります。
一昔前の延命治療と言えば、いわゆるスパゲッティ症候群といったものでした。
ベッド上で多くの管につながれ、意識もほとんど無く、心臓だけが動いている。
抗がん剤による延命効果はそれとは全く違います。
無治療だったら、私は今頃旅行どころではなかったでしょう。
治療に不安を感じたとしても、安易な道に落ち込むことなく、標準治療を受けることをお勧めします。
現時点で、根拠を持って効果があると言えるのは標準治療だからです。