父さんの一人旅

　大げさに言えば
命を預けることにもなるパートナーが
知らないところで知らないうちに決まっていた。
今夜は女房のオヤジが広島から出張で上京。
「品川で飲みよるから仕事が終ったら来んさい」と
集合をかけられていたので
指定された寿司屋へ駆けつけると
義父と義弟のほかに初対面の金髪青年が座っていた。
何でもオヤジの説明によると女房のハトコらしい。


　どう見ても年下には見えたけど
社会人として先に挨拶でもしておこうと思ったら
オヤジは「２７日の運転は頼んどいたけ」とまくし立てた。
２７日？　１２月の？
そう、彼は既に広島へ帰省する際のセカンドドライバーとして
指名を受けていたのだ。



　我が家は慣例として女房が娘達を連れて１２月の中旬あたりに帰省。
オレは仕事納めの日に
寝ずにクルマで横浜を出て一路、
広島を目指すのが定番となっていた。
クルマの運転は嫌いじゃないんだけど
寝ないで約９００キロを走るのは、かなり辛い。
話し相手がいるだけでも
ずいぶんと助かるんだけど、今回
パートナーとして選ばれた青年は
女房も「１５年以上会っていない」という遠い親戚。
大丈夫なんだろうか。



　話を進めていくと彼の人となりが何となく判ってきた。
何でも芸人を目指して修行中で
フリーターをしながら夢を追っているらしい。
オレが到着する前に
オヤジにかなり飲まされていたらしく
目がウツロだったけど
話している限り、素直そうな好青年だ。



　何かあったら嫌だから
クネクネした道の続く足柄周辺や
積雪や路面凍結の心配がある関が原周辺など
要所は自分で運転するつもりだけど
９～１０時間の道程で計３時間くらいは寝かせて欲しいのが本音。
会ったのが初めてなら運転技術がどれほどかも分からないけど
ロスタイムや危険を回避するには
早め早めのドライバーチェンジが重要になってくる。



　セカンドドライバーと次に会うのは帰省当日の２７日。
頼んだぞ！　金髪青年！！