今日も世界の片隅で

2005/08/14(日)12:58

迷路に思ふ

人生(13)

我が家から南西に車を40分ほど走らせたところに、マンスターという小さな町がある。そこでは北米最大という触れ込みの生け垣迷路群を擁するソーンダーズ農場が、多くの家族連れを引き寄せている。 秋の収穫時には、子供達におどろおどろしい楽しみを与えるアトラクションが用意されるらしい。夏の今は、ちょっとした水浴び施設から、黄色い声が聞こえてくる。 生け垣迷路は世界中にあり、日本でも珍しくないが、実は今日、人生で初めて楽しんだ。全部で10個ある迷路のスタンプラリーで、一番複雑なのは「15分~1時間かかる」と入口に書かれている。果たして、45分は費やした。 迷路を意味する英語にはmazeとlabyrinthの2つがある。かつて英語の授業で習ったのは、より難しいlabyrinthだ。「迷宮」という訳が通っているが、迷路でもある。 古代ギリシャの神話には、こうある。知っている方も多いであろう。 クレタ島のミノス王は、ポセイドンとの約束を破り生け贄を捧げなかった罰を受け、半人半牛の子ミノタウロスが生まれた。ミノタウロスは成長すると凶暴になったので、ミノス王により迷宮クノッソス宮殿に閉じこめられる。 一方、クレタはアテナイに戦勝し、アテナイから9年毎に7人の少年と7人の少女をミノタウロスへの生け贄として送らせた。アテナイの王子テセウスは自らミノタウロス退治をするため、クレタ島に渡る。 ミノス王の娘アリアドネはテセウスに恋をし、彼が怪物を退治し、迷宮から脱出できるよう、魔法の剣と糸玉を与える。テセウスはミノタウロスを退治し、迷宮に閉じこめられていたアテナイの若者たちと一緒に無事脱出する。 ところで、mazeとlabyrinthは通常ほぼ同義で使われているが、厳密には違うと農場のしおりに記されていた。途中で道が枝分かれしない、くねくね一本道なのがlabyrinthで、枝分かれや袋小路が用意されているのがmazeだ。 クノッソス宮殿は道が複雑すぎて、一度入ったら誰も出られない。そうであれば、これはmazeであって、labyrinthではない。しかし、クノッソス宮殿はlabyrinthの代名詞のようなもの。間違いはどこから始まったのか。 社会も人生もmazeだ。枝分かれもあれば、袋小路もあって逆戻りもする。ただ、人に作られた迷路を迷いながら進むより、自分で迷路を作った方が余程おもしろい。のではなかろうか。

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