|
テーマ:ヨーロッパ旅行(4243)
カテゴリ:フランス~スペイン旅行記
この日、いよいよ日本へ帰国とは言え、フライトは最終の23時だ。午後もたっぷり時間はある。
希望としては、今年はギュスターヴ・モロー美術館を訪れたかったが、こちらも休館。昨年も訪れたピカソ美術館に、再度を向かう。その後は、パッサージュ散策、ヴァンドーム広場からリヴォリ通りに抜けるカスティグリオーネ通りの古い印章店を覗いていようと思っていた。 昨年は、フランシス・ベーコン絡みの企画展を催していたピカソ美術館であるが、今年はピカソの初期のミューズ、ド・ラ・マールをテーマにした特別展が開催中だ。昨年はベーコンを大々的に取り上げていたので、常設の作品も少し控えて展示してあったようだが、今年は、ピカソ関連では世界でもっとも充実した美術館という評に違わず、彼の代表的な作品を含めて、かなり膨大な名作の数々を鑑賞することができたのは収穫であった。ピカソの精力的な作品群を、これでもかとばかりに堪能する。傍で少女が、巧みにピカソを模写しているのを見ると、やっぱりピカソは童心の方が正しく観られるのかな、と思ってしまう。 メーデーにもかかわらずオープンしていたピカソ美術館の賑わいを後にして、今度は散策予定の通りを地図で確認するが、それらはどうも、ここから近いとも言えそうにない。旅の疲れもピークを迎え、敢えてという気力が湧かない。ならば、今日は夕方まで、とことんアテもなく歩き回ってみようと決心し、街の目線でぶらぶらと辺りを歩き出す。 これまた、果たして自分の歩いているところがどこなのか分からないが、少なくとも堂々巡りをしてないことだけは確かである。この辺りは、比較的高価なアンティークなどを扱うお店が並ぶが、どこも大抵閉まっている。 と、前方に、なにやら見慣れない表記の、異国情緒漂う瀟洒なお店が見える。表記はロシア語だ。もしや!?急に心当たりができて、ぐんぐんと近づいてみると、なんと、ファベルジュの工房の作品を置く宝飾店だ。しかも、しっかりオープンしている。 中で、ひとしきり、その精巧で、あまりに美しい楕円に見とれ、一つ一つ吟味した後で、お気に入りを求める。願う力とはこうまでも強いものか!! そこからはすっかり安心しきって、ふたたびアテのない散歩を続行する。気がつけばノートルダム寺院まで来ていたり、そうかと思えば、文房具屋さんばかりの通りに出たり、あるいはギャラリーばかり集まる一角に出くわしたり、ストリートミュージシャンのたまり場の人だかりから首を出したり・・・。ファルセットでオペラを歌う、ちょっとなよなよした男性歌手、マヌーシュ(ジプシー・ジャズ)を弾く若手ミュージシャンのバンドらが気に入り、しばし耳を傾ける。 どれだけ歩いたのだろうか。コーヒーの一杯も飲まず、ミネラルウォーター片手に、ひたすらに歩き回った。何を見たのか、あまり覚えていない。つまり、いたって普通の暮らしを旅したのだ。そろそろ日も暮れてきた。フライトまでは時間があるが、空港には夕食を摂って早めに向かわねばならない。バスティーユ広場の真ん中でタクシーを拾い、混雑を後にする。同時に、この旅ともおさらばだ。(つづく) *写真はパリ街中。交通事情はあまりよろしくない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[フランス~スペイン旅行記] カテゴリの最新記事
|
|