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カテゴリ:書評
見出し:時代を刺激した或る放浪学者の再発見。
ジョルダーノ・ブルーノ著、加藤 守通訳『原因・原理・一者について』(東信堂 ) その有り余る才能の故に、結局ある種根無し草的に多岐な分野の研究へと“逃げ続けた”中世の放浪学者。コンプレックスをバネにしたセルフ・プロデュースの達人にして、その煥発な才気によってそこかしこでもめ事を巻き起こしたトラブルメーカー。あるいは、ローマ教会を敵に回し、思想の自由のために、その著書は禁書とされ、花の広場で火あぶりにされた殉教者なのか。 ジョルダーノ・ブルーノを、奇才と呼ぶか、落ち着きのない男と呼ぶか、その評価は400年の時を待たねばならなかったわけだが、ただでさえ少ないジョルダーノ・ブルーノ関連書籍の中でも、最も重要なブルーノの著作である、本書が邦訳で読めるのは大変貴重なことだ。 異端審問吹き荒れる時代、生きて“学の巨人”となるには、ブルーノの才能はあまりに奇異で、かつ壮大に過ぎた。そして、あまりに反抗的で、感情的に過ぎたかもしれない。 普遍は、変化を恐れ、変化は刺激によって孵化する生き物である。ブルーノは、まさに刺激そのものであった。神学を起点にしながらも、神秘主義的な源流を持つかに見られた汎神論という、曲芸並みの思考実験をこなし、記憶術など、突飛な研究に没頭し、最後は宇宙論にまで着手。四元素説に依ったものとは言え、当時としては文字通り破門級に衝撃的な彼の宇宙論は、のちの天文学に大きな可能性を拓いた点で見逃すことが出来ない。 かつて師に「ブルーノにはなるな」と教わった。果たして、今の私は、この天界図のいかなる座標に在るのであろう。(了) ジョルダーノ・ブルーノ著作集(3) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/04/03 09:05:13 PM
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