バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

2008/09/12(金)22:34

変則書評:塩野七生『ローマ人の物語』ゲージ

変則書評:『ローマ人の物語』(49)

*********************************************************** 塩野七生著『ローマ人の物語』(5)        ハンニバル戦記(下)(新潮文庫) 読破ゲージ: ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ *********************************************************** 第二次ポエニ戦役、事実上の決戦はザマの会戦で。歴史のダイナミズムのインパクトは、紀元前であろうが関係ない。年号は数字でしかない。古代ローマ人の常ならぬ所行をば書き綴ると著者は謳った(そう、常ならぬ所行の結果である歴史というものを、栄枯盛衰・盛者必衰などという運命論的な形ではなく、「興隆にも衰退にも理由がある」いう理知的な詰め方をするところが好ましい)が、人の行いというものは新旧の別なく壮絶である。優れた師弟同士は互いを試しあう為に相対峙する。結果については恨みっこなし、がフェアだろう。少なくとも古人はそうだったようだ。スキピオの存在そのものが革命であったこの時期、「異例」というのはハードルが高かったろう。年齢が人を頑固にするのではなく成功が人を頑固にすると。成功体験をはずすのは難しいだろうが、頑固さはオルタナティヴを選択する邪魔になる。統合された第三の道は、頑固者には塞がれているのだと。なるほど、抜本的改革は、過去の成功に加担しなかった新世代の特権らしい。優れたリーダーの条件。ただ優秀な才能で統率する者に非ず。率いられていく人たちに、自分たちがいなければ、と思わせることができる人物であれ。ハンニバル、スキピオさらば。両雄勝敗の要因を、日本語で考えてみる。破裂音の勝利と濁音の敗北。ハンニパルVS.スキビオなら、ハンニパルの勝利だったか?重厚だが深刻さを伴う濁音・ハンニバルは、破裂音含むスキピオの明朗さに敗れたのだ。本当の鍵は地中海世界最強のヌミディア騎兵也。第三次ポエニ戦役は、戦争機械と化したローマの独壇場へ。そのかわり、英雄も名将も、システムだけを置き土産に失意の中舞台を失う。カルタゴ、滅亡。お灸はきつかった。余談ながら、あくまで著者によれば、処女作が後の全作品の基盤を作るそうだ。ならば、まんざらでもない。(了) ローマ人の物語(5) ■「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。

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