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トヨタの前社長の張氏のインタビューを何かの本で読んで、とても印象に残っている言葉があります。 (例によって手元に正確な引用がなく、記憶もあいまいなのですが。ニュアンスは間違っていないと思います) 「私は、他社で経営者はできないだろう。しかし、トヨタの経営はできた」 確かこんな感じのことをあるインタビューでおっしゃってました。 一般的には、社会人の多くが「世の中で通用するスキル」の獲得に躍起になっていて、転職=ステップアップと考えられることが多い中で上記コメントはとても異色です。 しかし、事業会社に移ってみて「わかるような気がする」という気がしてきました。(気分的には「激しく納得」しているのですが、そもそも「経営」というものをしたことがないので、本当の意味で納得というのはあまりにもおこがましいですので) 上記の「納得」の背景にあるのは、 そもそも「世の中で通用するスキル」の通用する会社って、「世の中に通用する会社」なのだろうか?という疑問です。 って、書くとわかりにくいですが、例えばこういうことです。 転職を繰り返している「財務のプロ」がいたとします。この人は財務については精通していて、その分野を極めたいと思っている人なら誰でもがうらやむ実績を持っている(履歴書も立派)。(つまりこの人は「世の中で通用するスキル」を持っている) で、例えばこういう人がトヨタに転職したときに大きな仕事ができるのだろうか?給与に見合った働きができるのだろうか? ということですね。 最近強く感じるのは、「強い会社」って「戦略が適切」とか「先見性があった」ということは後付であって、実は「強い会社」の秘訣って「自分の得意な分野で深く深く井戸を掘り続ける」ことにあるのではないかと思います。 トヨタのプリウスは、電気自動車やら燃料電池自動車やら次世代自動車の議論が花盛りなころに、「先見の明をもって選択された」というよりは「とにかくハイブリッドと決め手、その分野を彫り続けた」ということが勝因なような気がします。もちろん、ハイブリッドを開発する上で、それなりの「勝算」はあったでしょうが、その「勝算」は経営戦略的な見地から出てきているというよりは、「トヨタという会社に何ができるか」ということを深堀した結果出てきたものではないかと。 で、トヨタの張さんの上記発言は、以下のような意味ではないかと感じました。 「張さんは、誰よりもトヨタの強み・文化・遺伝子を理解していて、やりたいと思ったことを出来るだけの信用・実績を社内で築いている。そして社長として、それらの「資産」を最大限活用することを考え続け、実行し続けた。その結果として、大きな仕事ができた。」 つまり、「トヨタという井戸掘りの名人」であって、「経営一般の達人」ではない、という趣旨のことをおっしゃったのではないかと思います。 もちろん、トヨタほどの会社のトップですから「世の中に通用するスキル」は当然持っているのでしょうが、それは張さん・トヨタが持っている「資産」をレバレッジするための手段に過ぎないのではないか、と。 そして、「財務のプロ」がいくらトヨタに転職してきても、「世の中で通用するスキル」をレバレッジできる範囲は(少なくとも転職当初は)非常に小さいのではないかと。 そんなことを感じました。 というわけで、現在の会社で自分が考える必要があるのは「自分にどれだけのスキルが身についたか」ということよりは「どれだけ深い井戸を掘ることに貢献できたのか」であり、社内外にどれだけ大きな「資産」を確立できたのか、ということになります。 「スキル」を身につけるのではなく、「大きな仕事」をする。その前に「大きな仕事」ができるだけの大きな基盤(=社内の実績・信頼・会社そのものの深い理解)を作る、ということに注力すべきなのだな、と思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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