テーマ:好きなクラシック(2299)
カテゴリ:クラシック
LPレコードが駆逐されて、CDが登場して以来、20年以上そのお手軽さ加減に嫌気がさして、クラシックからは遠ざかってしまった私ですが、たまには古いLPやビデオを引っぱり出しては聴いてみます。
ここのところのビデオ録画の技術は、音響のほうでもすごい発達をしていて、ハイビジョンのライブ録画など、昔のLPを凌ぐような音を聞かせます。ときどき気づいては自分の気になっている指揮者やオーケストラの画像を録画しているのですが、このごろはLPやCDよりもビデオで聴く(観る?)ほうが、多くなってきました。 ビデオのクラシックライブは、最近の私のビデオ試聴の中では、映画やスポーツの録画より観る機会が多くなっており、自分の嗜好性が変化しているように思えます。それにしても最近の映画はつまらないですね、一回は観てもまた観よう、ずっと残しておこうという気がしないのです。スポーツはライブの同時参加でこそ意味があるので、長く残して繰り返し見るという録画の主旨とは、そもそも相反する性質があります(私にとってはトリノの荒川静香さんのFPだけが、長く残して繰り返し見るべき唯一のスポーツ録画です)。 そんな中で、小澤征爾が2002年でしたか、ボストン交響楽団との「お別れ演奏会」で指揮したG・マーラーの「交響曲第9番」は私のクラシックライブラリーの中でも、お気に入りの一つです。 私のビデオライブラリーは、初めのころは当然映画が主体だったのですが、C・アッバード、ベルリンフィルの「復活」のライブが、ことのほか音も良く、例のカラヤンのビデオのような嫌味もなくて、クラシック録画の価値を見出したのでした。それまでクラシックの録画については、LPの最高度の録音技術を聞きまくっていた身としては、どうしても音響的な不平がずうっとあったのですが、アッバード、ベルリンフィルのは画質音質とも、それまでの私の先入観を覆すほどの出来で、これなら(タダだし?)残しておくに値するかなと思ったりもしました。 こうして私のクラシック録画が始まったのですが、そうこうしているうちにLPのときとは違った聞きかたをしている自分に気づいたのです。 簡単に言えば、沈思黙考してヴァイオリンやオーボエの一音一音を聞き逃すまいとしていたLP時代と違い、指揮者やオーケストラの画像を見ることで、ずいぶん音響に関しての、私の閾値が低くなったような気がするのです。そしてよく考えてみれば、音楽を聴くとは、そもそも会場でナマの演奏を、積極的に見るという要素があったはずで、レコード音楽というのはひょっとしたら随分いびつな音楽だったのかなと思ったりもしました。 視覚と一体の音楽は、それまでLPで音だけで聴いていた音楽とは、明らかに聞こえかたが違うので、そのぶんLP時代の極端に異音に小うるさい聞きかたをしていた自分が、不思議に思えたものでした。これは同時に音楽が与えてくれる感動とか、影響とかいうものが、たんに音だけではなくて視覚と一体となって迫ってくるものだということがわかってきたのです。 早い話が、以前にも言いましたが、尺八の演奏などライブで聴いていると、明らかに音が出てないのにも拘らず、演奏者が首を振っていると(尺八特有のバイブレーション)、音が聞こえているような気がする、横山勝也の海神道尺八の「産安」など、一種のバレエを観て(聞いて)いるようで、これは例の武満の「ノヴェンバーステップス」や「エクリプス」では大いに意識して取り入れられてましたね。 それはともかく、指揮者の振りやオーケストラのパフォーマンスを積極的に画像に残しだしたのは、ご存知カラヤン・ベルリンフィルなのですが、オーケストラを指揮するというよりは、音楽を指揮している(あるいは牛耳っている)という画像で、とてもじゃないが気持ちよく見ていられるという内容ではありませんでした(一つにはフィルムによる録画で、画質、音質ともオーディオファンにとっては、がまんができないような内容だったこともありますが)。 その点、小澤征爾はカラヤン流の見せる指揮者の系統の筆頭だと思うのですが、カラヤンのような嫌味がないのは、音楽に対する姿勢が多少カラヤンと異なっているからかもしれません。ひとことで言えば、カラヤンは音楽の頂点(作曲家もオーケストラも聴衆も)に立って指揮しているのに対し、小澤はオーケストラや作曲家や聴衆と等価の位置に立って指揮しているように見えることです。これは彼が武満などの現代作曲家と、積極的に交わっていることと無関係ではないでしょう。 このあたり、「黙って聞きなはれ」のカラヤンと違い、小澤の音楽には聴衆やオーケストラの気分が、多かれ少なかれ反映しているので、彼の人気はこのあたりかなと思ったりもします。 というわけで、小澤の2002年のマーラーは、オーケストラと聴衆の気分が一体となって、小澤の指揮棒に乗り移ったような音楽で、これをライブで聴けた人は得しましたな。 ― つづく ― お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.07 11:35:38
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