575646 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2017.06.17
XML
カテゴリ:エレクトーンの日
レナード・バーンスタイン 続き
 「若さ」から漂ってくるデカダンな雰囲気だけではないとしたら、この「ゴッタ煮状態」が表わすものは何か?それは端的にニューヨークという「都市」、あるいはそれをも包み込むアメリカという国柄の風景そのものではないのか、というのが私の観測です。
 バーンスタインという人、ウクライナ系ユダヤ人の2世としてマサチューセッツに生まれたとありますが、これはアメリカ人としてはごく普通の出自。しかし音楽界では、純正アメリカ人(アメリカ生まれの)最初のクラシック音楽家として大書されます。それまでのアメリカのクラシック音楽界は、ヨーロッパからの移民一世で占められていたのでした。というわけで、彼はクラシック音楽に手を染める時点で、「アメリカとは何か?アメリカでヨーロッパクラシック音楽をやるというのは、どういうことか?」という問いに立たされたでしょう(同じような「問い」は、当然日本の西欧音楽家たちにも課せられているはずですが、あまり深く詮索しませんね)。
 バーンスタインはその問いに対して、かなり意識的に「アメリカ的=非ヨーロッパ的」であろうと振る舞った人でした。アメリカにも当然、純正ヨーロッパに近い響きを目指すオーケストラがあり、それは言うまでもなく、そうした保守的スタイルを支持する聴衆が数多くいる、ということを意味しています。

 余談ですが、日本のクラシック界ではたぶん圧倒的にそうでしょう。日本でのクラシック需要は、今でも純正ヨーロッパという「権威性」で、ピアノもヴァイオリンもオーケストラも維持されているのです。このあたり、同じ海外文化の受容といっても、ずいぶん受け入れ方の態度が違いますね。
 アメリカという国柄の面白味は、海外文化の受容にあたって、超一級の人やモノは(カネに物をいわせて)どんどん取り入れますが、それらが深々と放っている牢固とした「権威性」は、一切認めないということでしょう。一言でいえば、受け入れ側のアメリカの「必要」によって、それらは自然淘汰もしくは変容していく。

 日本ではその種の権威は頑として揺るがない。そうした権威は万古不滅で、どこか彼方には必ず「在る(だろう)」という、強固な信憑があるのです(これはクラシック音楽に限りません。能でも歌舞伎でも茶道でも武道でも何でも)。日本のオーケストラの目標は、あくまで本場(ヨーロッパ)の響きに近付くことなのであって、「当の響きを日本で演奏するということとは、どういうことなのか?日本においてオーケストラとは何か?」というような問いかけは行われなかったのです。
 しかし万古不滅であるはずの当のヨーロッパ自体もまた、それぞれの必要で変容していくのでしょう。バーンスタインがウィーンで大成功を収めたとき、日本のクラシック界は評論家もファンも、(口はつぐんでいたけど)かなりうろたえたのではないか?

 ところが(吹き出してしまうのですが)、こうなると逆にそれの受け入れも、これまた驚くほど早かった。ウィーンのお墨付きが大きな「権威」となって、日本の需要をたちまち喚起したのです。それまでバーンスタイン、ニューヨークフィルのベートーヴェンやシューマンをボロクソに貶していた評論家諸氏も、彼がウィーンフィルと「大地の歌」を録音したところ、手の平を返したように誉めそやす。ついでに、彼がそのはるか以前にニューヨークフィルと世に出した「春の祭典」も、いつの間にか名盤の一つに数えられるようになってしまいました。
 考えてみれば「ウェストサイド」の作曲者が、ストラヴィンスキーのバレエ曲と相性の良さそうなことは、容易に想像がつくのですが、それを素直に口にするのが何となく憚られるという雰囲気が、日本のクラシック界には業界にもファンにもあったのでしょう(私自身もそうでした!中高のころの私は、権威ある音楽評論を立ち読みで食い入るように読んでたし)。

 と、これまたここの話とは関係のないところで、大いに憎まれ口を叩いていますが、何もそれをくさしているわけではありません。要は外国文化の受け入れ方には、「受け入れ側のエートスが大いに表れる」ということなのです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.06.17 15:45:55
コメント(0) | コメントを書く


PR

Calendar

Archives

2024.04
2024.03
2024.02
2024.01
2023.12

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ@ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Category

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.