テーマ:好きなクラシック(2299)
カテゴリ:クラシック
イノセンス 3.
この歌はフジテレビ系の「風のガーデン」とかいうドラマの主題歌だったそうで、元曲はショパンの「ノクターン第20番遺作」。ご存知かとは思いますが、私はテレビドラマには(朝ドラ「カーネーション」をのぞいて)まったく興味のない人間で、したがってこの十年前のドラマも音楽もまったく知りませんでした。平原さんとしてはデビュー曲の「ジュピター」以来の大ヒットだったみたいですね。 さて肝心なことは、この曲は例によって彼女得意のクラシックカバーであること。そして全編英語の詞を付けているということでしょう。さらにこの作詞編曲はwikipediaによれば、作詞:史香/作曲:ショパン・椎名邦仁/編曲:椎名邦仁となっていて、要は純和製のカバー曲であるということです。 ここで作曲がショパン・椎名邦仁の連名になっているのは、おそらく有名なショパンの主題を起点にして、かなり大幅な編曲を加えているからでしょう。特にトリオの部分など、原曲にはなかった旋律が含まれます。しかしいちばん大事なことは、何と言っても、なぜ英語詞にしたかということでしょう。 まあ平原さんにかぎらず、それまでもJ-POPには、シャレて英語詞を挿入するということは、数多く行われて来たと思うのですが、全編を英語で通すというのはなかったのではないか?それかあらぬか、同じ曲に日本語の詞をつけて、「カンパニュラの恋」という挿入歌も一緒に出しているからややこしい(平原さん自身の詞だそうです)。 聴き比べると、「ノクターン」がゴスペル風の歌唱が濃厚なのに対し、「カンパニュラの恋」のほうは、なんだか昔なつかしの演歌のような感じ。まあ情緒纏綿たるこのような曲なら、どうしてもこうなるのかもしれないけれど、英語と日本語とではずいぶん印象が変わりますね。とはいえ私の率直な感想を言うなら、これはそのどちらでもなくて、気分的に一番近い印象なのは、たぶんシャンソンなのだろうという気がする。英語なのになぜシャンソンと迫られても困るわけですが、基底にあるのがショパンのメランコリックな旋律、でその彼はポーランドからの亡命作曲家で、パリに死ぬまで住んでいましたから、あながち的ハズレというわけでもないでしょう。 それと西欧でつくられた旋律は、結局やはり西欧語の発語によくなじむ。ましてショパンはピアノの詩人と言われたように、「語りかけるようにピアノを弾いた」作曲家だったのです。この曲で終わりに繰り返される -Everything has an end, but we'll be reunited- というフレーズ、ショパンの諦観ともとれる気分をよく汲んで、いいですね。 ところで、平原さんの歌の履歴でおもしろいのは、かなりの歌が英語で歌われていることです。またまた古い話になりますが、かつて弘田三枝子とかしばたはつみといった、かなり英語を巧みに操る実力派歌手がいましたが、いずれも欧米ポップジャズの翻案の域を出ず、オリジナルな魅力とは言えませんでした。 平原さんにおける英語詞というのは、まあメジャーデビューが「ジュピター」ということもあってか、その位置付けはかなり異なる。そもそも彼女のプロデビューのきっかけが、高校時代に学内でやった「JOYFUL, JOYFUL」が、スカウトの目にとまったということからして、子供のころから英語の発語になじんでいたでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.08.10 18:21:42
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