

着せ恋シリーズ第3回です。
はるちこ「いきなしすずさん登場っすか?」
すずさん「なんだか呼ばれて来てみましたけど…私の写真ですか?」
はい。ちょうどいい教材かなあと思いまして。
すず「企画書もなしにアドリブでよくここまで進めましたねえ」
みほさん「いつも言っていることだから,アドリブも何もないからね^^;」
ふれしの「そだにゃ。基礎だにょ基礎」
さて前回はカメラの選び方とレンズの話,その単焦点編でした。

今回はズームレンズのお話です。
ちこ「お師さんが飛んできそうな写真っすねえ」
この南海2000系ズームカーはウィキペディアから拝借してきたものですが,こちらもズームレンズで撮られている写真です。焦点距離は109ミリとのことです。
すず「でもどんなレンズかは分かりませんね」
キャノンなので24-120はないでしょう。70-300とか70-200,100-400などが考えられます。
ちこ「ほお」
さて,ズームレンズの特徴は画角(撮れる範囲)が変えられることです。こう撮りたいという要求を1本のレンズが仕様の範囲内で応えてくれます。
これがズームレンズのメリットでありデメリットです。
ちこ「前回の話し方からしても,いい話だけではなさそうっすね」
単焦点はレンズ自身で画角が変えられません。変えるには人が動く必要があります。その際は必ず目線がカメラのファインダーや液晶から離れます。前回申し上げた通り,被写体が一番輝くポイントは他にある可能性があります。そのポイントは果たしてどこにあります?
ちこ「ポイントは画角の外にあることが多い…ハッ!」
その通り。単焦点では必ず巡り合うチャンスが必ずありました。目線を離したその時です。
ズームレンズはこの機会を逃すリスクが非常に高くなります。ズームレンズ最大の特徴である画角が変えられるという能力によって。
これが拗らせた結末は悲惨です。最悪の写真の形…所謂『棒立ちで撮った写真』量産という事故があなたの目の前にやってきます。
全く学のない,カメラを引っ張り出して撮る必要がないような写真がゴミのように量産されかねません。
みほ「更にこれが性能の高いズームレンズの場合は撮らされる形になります。カメラと同じく,レンズ性能に物を言わせた間違いをする人が絶えません。単焦点でもそういう人はもちろんいますが,ズームレンズを手にした場合そのリスクは跳ね上がります」
こういった機材に撮らされている人の写真は特有のつまらなさがあります。構図や露出など写真を撮る上で大事なことがごっそり抜け落ち疎か。妙に暗いかったり明るすぎたり,構図がワンパターンで迫力もなければバランスも悪く…いいところがない。でもそういう人は口々に『私はこれが好きなんだ!』と言い張ります。言い換えれば『私はこんな高級機材で撮っているんだ!悪いはずがない!私はこれを使っているから素晴らしい人間なんだ!』という傲慢な理論なのです。はっきりいいます。
機材自慢だけしたいならカメラの電源ではなくパソコンやスマホの電源入れて部屋の中で寝ながらやれと。
ちこ「これも某同僚Kさんと頭悩ましているネタなんすか?」
そのとおり。Kくんは『写真という行為をやっただけ』と表現します。私の何十倍もの鍛錬を経た人間の言葉です。間違いなく説得力があります。
使い方を間違えれば悲惨な結果を残しかねないズームレンズの能力。
でもそれを知った上でこの特徴を使うことに意義があるのも事実。今回は罠に陥らないための方法を中心にお伝えしたいのです。
私はズームレンズの特徴『画角が変わる』は最終的な結果の一つであって,実際に気にすべきところはそこではないということを言いたいんです。画角が変わるのと同時に変わるものがあり,本来はそれに注目すべきなのです。
ちこ「へえ…」


そこで見てみたいのは最初のすずさんの写真です。
左が24ミリ,所謂広角で撮った写真。左が62ミリ,若干望遠寄りの写真です。わかる方向けにお伝えすると絞りはF4で両者同じです。場所も背景こそ違いますが同じ。どこまでも似た環境。
そして何より同じ人物を全身写したことも同じなことに注目すべきです。
ちこ「でも見た目は結構どころじゃなく違いますね」
印象違いますよね?これがズバリ画角以外に変わったこと。本当に注目すべきところです。具体的にいうと…
ズームレンズは広角で出るべき特徴と望遠で出るべき特徴を変えられると考えるべきなのです。画角はそのオマケと考えるべきなのです。
広角24ミリ側のすずさんはスラッとして身長が高く見えます。これはパースペクティブ効果,つまり遠近感が強調された影響で背景…特にプール向こう側の景色がより遠く見えるようになったことがひとつ。さらにその派生で出るデフォルメ効果というものにより,身長方向にすずさんが引き伸ばされていたような形に写り,結果的に身長が高くすらっとした見た目になったのです。
すず「スマートドールの脚線美を強調するのに有効ですね」
対する62ミリの望遠側,標準域に近いのでさほど効果は大きく出ていません。でもすずさんの特徴と同じく背景の雰囲気が広角と違います。これは望遠側の方がピントが合う範囲が狭い,ボケやすいからです。広角はその逆となります。
みほ「スマホのカメラはピンボケしにくいのにはいろんな理由がありますが,その一つにスマホのカメラは20ミリ台の広角レンズを採用しているからというのがあったりします」
じゃあもっと望遠の写真を見てみましょう。

これですね。実質104ミリで撮ったマリーさん。この風景をiPhoneで撮ると…

完全に同じではないんですが,こうなっちゃうんですよ。
マリーさんの方は鳥居が妙に近くにあるように見えます。これは望遠の圧縮効果というもの。口角が遠近感を強調するなら望遠は真逆,遠近感を無くす方向に働きます。
ちこ「なるほどっすなあ」
あと望遠は画角が狭くなる都合,メイン・主役で撮りたい要素(主題と言います)だけを撮りたい場合にも有効です。このように。

メインがドンっと来ます。ポートレート写真で望遠が好まれる理由がここにあります。背景の情報量は最小限となります。引き算の写真というこう言った写真はメインの被写体を純粋に撮るという基本に則った写真です。
広角でも被写体に接近して撮れば似たようなものが撮れますが,背景に映る要素が多く情報量の多さゆえに主題だけになってくれないという問題がでてきます。もちろんそれを狙う撮り方はありですが(むしろ私はそういうのも大好きです。
みほ「広角の方が難しいという人は広角特有の効果に加えて情報量が多くなる写真(足し算の写真なんていいます)が苦手という人が多いです」
すず「さらにレイヤーさんやモデルさん相手だと広角だと接近しすぎて緊張させてしまうリスクもあります。ただ内面や空気感まで表現したいならリスクを回避しながら広角で挑むのが吉ということも」
ちこ「そこは技量と経験っすなあ」
難しい話になってしまいましたが,お伝えしたいのはズームレンズは画角よりも広角・望遠それぞれの効果をまず意識するのが大事だということです。
・撮る前に被写体を観察し,広角・望遠どちらの効果を使いたいか…そもそも効果を消したいか…などを考えてから撮る。
・数枚ごとにファインダーや液晶から目を離して,画角外にある良ポイントを自分の目で直接探すよう心がける。
・撮っている最中も「こうしたらどうだろう?」と考えながら撮る。
こんな対策をすればズームレンズの罠に陥らずに済みます。
ちこ「となると効果で画角を選ぶこともあるっちゅうわけっすな」
そのとおり。
前回,単焦点でもズームレンズでも画角の感覚は磨けると申し上げました。
その心は
・単焦点→何ミリな何ミリという形で画角そのものをダイレクトに覚える
・ズーム→画角をパースペや圧縮など効果という形でだんだん覚えていく
ということなんですねえ。写真は間違えなければ単焦点でもズームでも上達というゴールが必ずあるのです。
ちこ「でもズームレンズは落とし穴が多いんですな」
でも対策をすれば大丈夫。過度に恐れる必要はありません。またズームレンズは単焦点よりも画質は劣る傾向にあります。最初は気にならないと思いますが,極めていけばいくほど見れば気になってくるはずです。とはいえこれも腕が上がったとみなせますから,ポジティブに捉えるべきです。
ちこ「じゃあ初心者さんが買うべきズームレンズはどんなのですか?」

やはり単焦点と同じく標準域をベースに考えるのがベストです。APS-Cなら18-55mmのレンズが安く入手可能です。私はニコンの18-55で人様にお見せできるレベルの痛車写真を撮っていた過去があります。極めれば1万円以下で買える激安レンズが最強の武器になるのです。
ちこ「おお,これも説得力MAXっすなあ」
長い話となってしまいましたが,結局言いたいことはひとつだけ。
『カメラとレンズさえあれば写真は撮れる』
これです。
難しい話ばかりしましたが,文章でどうこうより実際にやってみていただくのがいいかと思います。
カメラは2〜3万,レンズは先ほどの18-55なら1万以下。標準単焦点なら2万円あればどうにかなります。これ以上高いものはむしろ損すると思ってください。
アニメから何かを始めることが何かと多い世の中です。ここまでの記事で,お力になれたら幸いです。
今宵はここまで。ありがとうございました。