境界を越えた者への罰?
『闇の空間・森の中』【武史】森の中の静けさと言ったら、ほとんど無音だった。時々風が吹き、木々の葉がそよぐ音がするのみだ。そんな清らかな自然が、科学技術に包まれた俺たちに、罰を与えたのかも知れない。俺たちの鎧の動きを補完していた油圧が、俺のも篤師のも故障してしまった。今までは何も着ていない時より、動きが軽かったのが、今は油圧系も含めての30キロの鎧が、俺の動きを鈍らせた。「篤師・・・鎧、脱いでいいか?」バテた俺は聞いた。「お前・・・武士の魂とも言える鎧を脱ぐって言うのか?武士道馬鹿のお前から、武士道を取ったら何が残る?」それを言われると、言葉もないが・・・「それに鎧を脱ぐと鬼に姿を見られてしまう。ここは鬼の住む世界だ。何がいるか分からない」それを言われると、言葉もないが・・・「地味顔のお前から、鎧をとったらキャラとしてどうなの?」それを言われると、言葉も・・・って俺って、地味キャラだったのか?派手な顔じゃないけど。。地味キャラだったからかも知れない・・・俺の限界は30分後にやってきた。30キロの鎧が身体に圧し掛かり、俺の足は動きを止め、俺の意思とは関係なく地面にひざが着いてしまった。ボクシングで言えば、ダウン扱いだ。ひざを着いた俺に、篤師はため息をついた。そして、俺の肩を抱えてくれた。俺は篤師に身体を預けながら「また、篤師に負けた・・」心の中で俺は呟いた。篤師は言った。「この跡を付ければ大丈夫だろう。とりあえず水の飲める場所を探すか」鬼は、賞金首とボディーガードを引きずりながら歩いていた為、地面には引きずった跡が残っていた。川の音は聞こえないが、水の匂いを察知した。生きる欲求が感覚を研ぎ澄ましたのかもしれない。木々を掻き分け、俺たちは水の匂いがする方へ歩いた。川のせせらぎが聞こえた時の感動と言ったら、もう・・・地味な男2人が笑顔をこぼしたさ。本当に小さな小川だったが、俺には大いなる恵みだった。俺は兜と鎧を脱ぎ、倒れるように小川の水を飲んだ。身体が水で満たされていく~幸せ。でも、兜と鎧を脱いでしまった俺って、「絵的に地味なんだろうな」とか思いつつ、ふと後ろを振り返ると、俺を守るように、篤師は周囲を警戒していた。俺はいつ、こいつに勝てるんだ?「武史・・・・計器と無線が故障してしまったらしい。」篤師が言った。疲れと乾きで気に留めなかったけど、たしか俺の計器と無線も、電源が入らなかった様な・・・・気が・・・する。つづく気が向いたら、お願いします (・ω・)/↓