High Flyer ハイ　フライヤー　高く　飛べ。　社長の夢幻飛行日記。　

[金融、起業、ビジネス、コンプライアンス] カテゴリの記事

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• 東京駅ビジネス英語研究会

  人事情報と経営に関する情報が満載のお役立ちサイト人事マネジメントフォーラム「東京駅ビジネス英語研究会」に参加してみませんか？本研究会では、以下のような方の参加をお待ちしています。○　英語でのディスカッションに自信をつけたい人。○　ビジネスに使える英語でのコミュニケーションを学びたい人。○　会議・発表・交渉などフォーマルな英語になると自信がなくなる人。○　将来の海外赴任に向けて自信をつけたい人。○　外国人とビジネス上の接点はあるのだが、より深いコミュニケーション技法やネゴシエーション手法を学びたい人。○　会社で英語資料を読んだりプレゼンを聞く機会があるが、より自信をもって望みたい人。○　自分で英語のプレゼンをやってみて、自信をつけたい人。○　異文化コミュニケーションに興味のある人。場所：東京駅近辺　日時：毎週火曜日ヨル６時３０分から８時まで　講師：笈川　代表講師　（バイリンガルで行います。講師が、日本人だからはじめて会員の「痒い所」に手が届く、しかも実戦で使ってきた英語能力とあっと驚くコミュニケーション手法を伝えることができます。）人数：４名限定費用：実費4,000円（一回）　ただし、教材費別（毎月2,000円）　（週４回で合計18,000円）　入会金2,000円（最低催行人員：3名）連絡事項：■　会合場所は、申込者にご連絡します。■　申込は、こちら■　開始日は、メンバー確定次第決定します。

  2009.05.18

• 第47話　テロ対策と空港警備

  英国入国にあたっては、とくにスーツケースの鍵をあらかじめあけておく必要はないようです。すぐに検査に応じられるようにとのことで団体さんの場合そういうことが言われていますが、実際は鍵はきちんと掛けておくのは当然でしょう。盗まれるリスクの方が圧倒的に大きいですから。一定量の液体の持ち込み禁止もどの空港にもあります。だからお土産に日本酒を成田の免税店で購入しても、他の地域経過だったりすると、せっかくのお土産も途中放棄を迫られますので、お土産選びは注意が必要。普通は一定量の基準がはっきりしないので、一定量なるものを２０ｃｍ四方のビニールに入れればOK,つまりこれに入りきらない液体やシャンプーやその他のリキッドは捨てることになります。ベルファストシティ空港はこれが厳しくて、いったん外に出て、２０ｃｍ四方のビニールを２０Pで購入しないと通れないという不可思議な状況となっていました。売店が自動的に儲かる（それほどでもないかも）仕組みなのかとも思いました。成田は緩やかなようですが、液体と爆発物の中間として、100円ライターがあります。これは摘発される可能性大です。飛行機への爆発性のものの持込のほか、最近は機内で暴れる乗客がいて、その対策として刃物類は持ち込めないのですね。テロとは関係ないわけ。成田はそうでないが、いったん靴を脱がせて歩かせるチェックはよくあります。パソコンはいちいち別に出して透視していますが、その意味は不明ですね。別にバッグから出す必要はない。ただ、パソコンの携帯電池部分は、取り外し可能で大きさからも簡単に中に爆発物を仕掛けることは可能ですから、そこを見ているのだと思います。入れたり出したりパソコンを海外旅行に携帯するのは止めたほうがいいと思います。もうひとつ。パソコンはこの携帯電池部分が鬼門で、飛行機で飛んでいる間に気圧のために電池が膨張して破裂したことのある人を複数知っています。ノート型の電池部分は飛行にはトラブルがつきものです。空港によっては、人の流れのデザインの上で、国内からの海外への乗り換え客と海外からの到着客が混入する人の列ができかねないものがあり、それは非常にあいまいなチェックですし、一度チェック済みなのに、2度チェックされる手間もかかります。よくわからないシステムですね。国によっていろいろだとしかいいようがありません。液体チェックだけは共通です。本当は、指紋登録も一緒にやると徹底すると同時に抑止力もあるのではと思います。指紋とられるのがいやなら海外旅行はあきらめるしかないということですね。しかし、ここまでどこの国でも徹底はしていないのでは？、

  2007.10.22

• 第44話　ある日、ロンドンにて。（その２）

  さて、さらにディープに見ていくと、今回気のついたことは他にもいろいろある。まず、路上観察の結果です。ロンドン中心部で道を行き交う人の人種ミックスだが、半数以上が非白人だということ。アラブ系、イスラム系、アジア系、インド系そしてなにより黒人が非常に多い。黒人といってもナイジェリア出身の人が言っていたけど、石油でイギリスは大金持ちになって現地黒人はたいへん貧乏だ、だからロンドンにきて出稼ぎだというわけ。イギリスは北海原油で産油国だからかねはあるよね。さらに資源を求めてナイジェリアというわけだが、黒人は結構勢いよくロンドンで頑張っている印象だ。目抜き通りのケンジントン・ハイ・ストリート近辺でそうなのだから、南のクロイドンなどは昔の面影もなく、アラブ系と黒人たちの世界になっていた。警察署の前でじっと中をうかがって動かない人もいるし、公園前の路上で止まった車がいきなり強盗にあったという話を聞いた。不穏な感じがする場所はもう誰が見てもそうとわかるので、すぐきびすを返して戻らないといかんですね。車に乗っていてもすぐ感じるのでその地域ではスピードもあげてなるべくとまらないようにした。昔はもっとのんびりした地方都市だったのに。南といえElephant & Castleという駅があるけど、そのあたり以南もそういう感じでしたね。テロがあって、イスラム系の人たちは肩身が狭そうだが、中心地でその姿を多く見かけることはない。そうはいうけれど、治安といえば、本当に全体として治安は良くなっている印象だ。あちこちにある監視カメラのせいだろう。普段はそんなに危険は感じない。中心部では深夜でもそう危険ではないと思う。チェルシーのあたりは綺麗な花が路上の柱に飾ってあり、華やかで夜まで、パブも住宅街なのに、賑やかで混んでいた（住宅街にあるので、9時30分過ぎると閉店）。が、昔と比べて、自分が非常に用心深くなっているというか、神経をとくに尖らせているせいだろうが、深夜の繁華街では気楽に周囲を楽しむ余裕はなかった。ピカデリーなど繁華街では何があってもおかしくない、という雰囲気はする。何か知らないがやたら人通りが多すぎるせいもあるな。12時近くなると、もう早くホテルに帰りたい！という感じ。人種の話に戻るけれど、それでは白人の人たちはどうですか？といえば、これが同じ白人でも、イギリス人以外の白人が多くなってきているんだね。たとえばケンジントンパレスの王室の住人だった彼女がよく通っていたというイタリア料理店がケンジントンにあるのだが、その店のいなせなイタリア人ウェイトレスはてっきりイタリア人かと思って出身を聞いたら、なんとポーランド人だった。オックスフォードストリート近くの雰囲気のよいイタリアのビストロもウェイトレスはポーランド人で、こちらの大学院に通っているアルバイト。ホテルのレストランの案内係もポーランド人。ポーランド人の女性は背丈もほどほどで肌も真っ白で人懐こく英語も上手で笑顔が綺麗で飾らずにとても魅力的な人が多いですね。ホテルのコンシェルジェはユーゴ出身。つまり、どういうことかというと、イギリスとくにロンドン社会における白人は、EUからの移民が多くなっているということ。イギリスはEU加盟国ではないけれど、人の動きではすでにEUのとくに東の国からの人口流入が急激だということ。統計がないからわからないけど、確実にポーランド系は目に付くし、旧東側の人たちの流入は多い。これは今までになかったロンドンにおける新しい社会現象でしょうね。彼らもとても元気だ。そうなると、昔からのイギリス人はさらに％が低くなるわけで、あくまで勝手な推計ですが、おそらく全体の人口の１５％ぐらいにまで減ってしまっているのでは？と思いますね。ウソだと思うでしょうが、本当の話です。人の印象は真実ですから。隠せない。

  2007.09.30

• 第42話　再度「数値規制から原則主義へ」について

  これは先述した保険業界でのプリンシプル主義に引き続いて、証券業界でも同じ問題が起きていることに驚いた次第。つまり、新株予約権の発行自由化が認められ、転換価格を自由に下方修正できる転換社債が海外からドイツ証券が持ち込んだ話だ。例とグッドウィルグループが発行した「毎日でも行使価格が修正できるMSワラント」である。そもそも転換価格をすぐに下方修正するのは認めないという「希薄化防止条項」を上場ルールに入れておいたのに、MSCBは私募なので上場ルールに関係ないとしてMSCBが乱発され、それならというので、1ヶ月で転換できるような株式数は発行済み株式数の１０％に制限するという新ルールを作り、MSCB引受全会員会社に通達した。ところが、この１０％ルールさえ逃れようと、今度はMSワラント（行使価格を下方修正できる新株予約権）へ乗り換える動きが出てきたというわけである。これは結局株価急落を招き既存株主の利益を損なう資金調達手法として禁じ手とされているもの。シティーでは発行しにくいので、東京で発行しちまって稼ごうという動きを封じ込めるにはどうしたらいいか？「1ヶ月以上とか6ヶ月以上とかいう期間規制」でなく、また　「％以上」という数値規制でなく、およそ「投資家や市場を欺かない」というシティーのルール、つまりプリンシプル・ルールを持ち出さない限り、こうした「いたちごっこ」はおさまらない、という理屈である。そのとおりでしょうね。でも、でもですよ。プリンシプル・ベース（原則主義）の規制手法の導入が不可欠だとしても、問題は、「投資家や市場を欺いた」といえるかどうかである。原則主義は、いうのは易しいが適用が難しいのだ。まず、それを実証する裁判（類似の）場を用意する必要があるだろう。そして、なによりも「投資家や市場を欺いた」といえるような行為を発見し検束する手段がなければ、無意味だ。プリンシプル・ベースの規制手法を入れれば、即、実効性がある規制になるとおもったら大間違いだろう。まず、専門的な裁判の「場」を整えること、騙し欺く行為を平常時の取引から捜索し「証拠を押収する権限」を認めること、そして、そのような行為を日常取引の「モニタリング調査」を満遍なく行うこと、という、「3要素」をコストを賭けて行うことが、原則主義移行への条件となるのではと思う。そうでないと、実効性を伴わないただの「隣の青い芝生」となる。

  2007.08.06

• 第41話「数値主義から原則主義へ」　について

  「IAIS」という国際会議がある。International Association of Insurance Supervisorsというわけで各国の金融庁の談合の場である。いい意味で。保険監督者国際機構。ここで、各国の金融規制が独善とならずに、かつ、国際的な規制の網を統一的に被せることが目的の組織で、きちんと日本の規制当局つまり金融庁も参加している。ここでも銀行業界規制の「バーゼルII」と同じく、保険業界に対する財務健全性確保のための指標、ソルベンシーマージンIIについて議論が進んでいる。ソルベンシーマージンは、「支払余力」とも訳され、通常時の保険金支払にあてる責任準備金はそれとして（つまり十分だと仮定して）通常の想定を超えた万が一のリスクに備えて余力（マージン）がどの程度あれば保険会社として財務的に健全だといえるかという角度で決まっている「係数」である。しかし、そもそも、通常時でも準備金の積立てが十分でないこともあるし、再保険先の破綻リスクもあるし、システムダウンでいくら保険金を支払うのかわからなくなる（！）リスクもあるし、契約者から説明不足を理由に訴えられたときの損害賠償リスク（クラスアクションが日本でも認められると、このリスクはかなり大きい！）だっていろいろあるのだ。だから、その部分をリスクマージンとして保険負債に上乗せさせ、それがテクニカルプロビジョンとなる。それっていうのも現在のやりかたのように予め収入保険料の一定係数を乗じる手法では計量できないことはすぐわかる。会社によってこういうリスク要素は千差万別だからだ。そこで、いわれているのが保険会社じしんの内部的モデルによるリスク評価に依存する方法論で、規制当局は、プリンシプル・ベースつまり原則主義でリスク評価の原則だけを示し具体的な評価手法を被規制者である業界各社にまかせる手法である。その分、各社の内部規制の度合いは実質的に、より、きついものとなる。数値だけ維持していればいいというものではないからである。これは明らかに銀行規制のバーゼルIIと同じ発想方法である。これは一つの金融規制の潮流として、ロンドンのシティーでの規制態様（イギリスFSAの主導するプリンシプル主義）と軌を一にしている。細かい数値規制をせずに原則で規制するやりかたがシティの独自な意気のよさと不合理性の排除という両目的の同時達成をめざすものとして高く評価されている。私もそう思う。その反面、原則に違反すると、（どれが具体的に原則違反かはあらかじめ数値では判明しないというたいへんなリスクがあるのだが）厳罰となる。しかし、原則に反しない限り、原則自由である。その証拠に、イギリスではすでにこうした原則主義にのっとり、商品・料率（つまり商品価格）の認可や届出も（！）一切不要とし市場の究極的自由化を進めている。日本でも同様に、ソルベンシーマージンIIを導入するのなら、その反面として市場の究極的自由化をみとめないわけにはいかないだろう。そうでないと、イノベーションの芽を摘み取るばかりで、ソルベンシーによる事後規制の狙いとマッチしないことになるからである。ところが、はたして、車の両輪のようにソルベンシーマージンIIの規制のありかたと同時に商品・料率の規制の自由化が同じピッチで同じ土俵で議論されているのだろうか？そうでないと、単に「規制手法の多様化」というだけの意味しかなく、金融業界のイノベーションを下支えする機能をもつことにはならない。そうでないと、規制ばかりで萎縮する業界を育てるばかりで、真に競争力ある業界育成にはならないだろう、と私は思う。

  2007.08.06

• 第40話「金融戒厳令主義」について

  ここ暫くの間、自民の歴史的退廃というか大敗というか、その選挙後の政局が動くのか動かないのか、非常にフラストレーションのたまる展開となり、日経平均のボラティリティも非常に大きくなり、金融規制も当局の頭領が変わり、厳罰主義から協調主義へと一大方針転換したとかいう報道も相次ぎ、何か大きく世の中の波動の変動がおきそうな予感がする昨今ですね。金融規制については、棟梁がかわったから家の作り方が変わるということもないはずなので、某局長がもし厳罰主義を改めましたというのなら、はなはだミスリーディングしているというそしりを免れない。それまで厳罰せずにおいて、急に厳罰主義だとして業務停止命令を頻発させ、そのあとそれが解除されたというのなら、それは「戒厳令主義」でしょう。規制を受ける業界は、厳罰主義のチリング・エフェクト（冷却効果）で伸び伸びしたイノベーションの高みに登る意欲は完全に失われ何をするにも全てを怖れる気風が蔓延している。契約者保護第一主義のためにまだ見積の段階で約款まで読ませないと駄目だといってみたり、およそ免責約款は契約者不利だから廃止しろというのは少し行き過ぎではないか？経営者も石橋をたたいてもわたらない主義というかそういう分野の経歴の方に変わってしまっている。トップがそうなれば下もそうなる。それを当局も期待したのだろうが、そのとおりになってよかったですね、でも活力は失われ、コストは増加し、その痕をそのままに、今さら厳罰主義は止めるというのは理解しにくい。むしろ厳罰主義はそのまま維持するとした上で、イノベーションを広く認める度量つまり自由度を認めるという政策をとるべきでしょう。何をしたら厳罰なのかをこうなった以上みなわかってきたので、それを維持する、他方で自由度を高める分野を予め文書で認めておく施策である。こういうやりかたで線引きすべきで、すべからく厳罰主義をあらため、業界発展・協調主義に変えましたというのでは、では、契約者保護はどうなるのですか？という突っ込みがでるというものである。方針を変えるのなら、そのロジックを見せることも局長としては必要だと思う。

  2007.08.06

• 第36話　「事故映像」　について

  http://www.zurich.co.jp/careservice/training/index.htmlこのサイトは、チューリッヒ保険会社のオフィシャルＨＰの一部である。ダウンロードに若干時間がかかるが、実際の「事故映像」を見ることができる。これは車載カメラの事故前数秒間の映像を契約者の了解を得て掲載しているものだが、その「事故原因」の分析と「保険担保内容」との結合がよくわかる。バリエーションに富んだ事故の実際映像が見れる、このサイトは日本初だし、世界的に見ても珍しい。これは、自動車保険の新マーケティングである。重要事項説明書にハンコを押す手続よりよほど交通事故防止に役立つし、保険のいざというときに働く動き方がわかるから、たくさんある担保内容のうちのどれがどの事故に機能するかがよくわかる。自動車保険は、モノ保険、傷害保険、賠償責任保険のどれもが一つにパッケージングされた複合商品だ。だからわかりにくいし、説明しにくい。これに着脱自由の各種「特約」をつけるから、いったい保険金が出るのかでないのか、千差万別の事故状況との連動がわかりにくいのだ。保険会社の営業社員で自動車保険商品の全てを説明できる人は、いないと断言できる。なにしろ業務部のヒトもわからないものがあるといっている。この点チューリッヒの試みは画期的だ。いままでどの保険会社もこれやっていなかったサービスだ。具体的なロードサービスよりも効用は高い。チューリッヒの保険に入っていないヒトも見れる。運転開始前にこの画面を一秒でも見ることは、運転前点検の一部だといってもいいくらい価値がある。保険はネガティブ情報を基に商品を売るので気色が良くない部分があるが、日常リスクにまみれている個人を防御する道具なのだという積極的な意味合いをもたせたマーケティングでもある。これは、別に自動車保険の「新商品」でもなんでもない。売り方、見せ方に工夫をもたせただけだ。これこそ、旧態依然の保険業界を革新する、もうひとつの「新商品開発」の最前線だと、わたしは思う。これを火災保険や地震保険にもぜひ拡大して、「見せて」ほしい。10年に一度の災害は他人事だがそのために保険にはいるのだ。そのとき、どうなる、の意味を映像化して実物の問題を目の前に出すこと、隠さないこと、酷い事実を避けようとしてるその酷い事実とは一体なんなのかを可視化することこそ、これからの保険業界の「新商品開発」ではないか？それで、ではこのときはどうなるのかとかもっとこういう酷いケースがある、という声があがると、それを今度は本当の約款吟味、新商品開発につなげていける、そのＰＤＣAサイクルを廻すことができるだろう。そう出会って初めてプロダクトアウトばかりで売り止め商品のオンパレードとなっていた保険業界の商品ラインアップを実効的に整理できる。一方的に商品数を減らすことが消費者にためになるのではない。単に不払原因を取り去って金融庁の検査逃れをねらって「商品イノベーション」と称していたずらに商品数を減らすべきではない。実際にこうして可視化して、効用をチェックする手続をして、初めて実需なきもの、実需あるものとを仕分けするべきだろう。可視化できないようなリスクは、プロダクトアウトでしかなくマーケットインでないのだから、だから、そのような理由で、整理淘汰すればいい、そのような理由を示さずにどのようにしてどの約款をどう整理したのだろう。それで金融庁の指摘に対する改善措置をとったと宣伝している保険会社経営陣の見識はいかがなものか？そのサイクルをまわす手続デュープロセスこそ、本当のコンプライアンス（法令等遵守）の姿勢だと、私は、思う。

  2007.07.08

• 第35話　生保証券の「買取」市場　について

  保険の分野でも新商品は出尽くした感があり、むしろ保険金不払など本来的機能の回復のほうが新商品開発よりも重要となっている。逆に、保険商品のラインアップをむしろ大幅に減らす動きが普遍化しつつある。三井住友海上だけでなく、業界トップの東京海上日動も同様なのだ。しかし、商品価値が「利用者の効用」にあるとすれば、内容が既存商品はそのままでも、全く新しい売り方ができてそれが利用者の利便性を増すことができれば、それは立派な新商品開発だ。今までにない保険の効用というとは、たとえばどういうことが可能か？それは、生保買取商品である。これは英米ではもう普通のことなのだが、たとえばドイツ生保市場でも第２市場としての買取会社が生まれて急成長している。キャッシュライフという名前だから、現金生保という名称になるのだが、そういうヘンな生保会社が誕生したのが1999年ミュンヘン。今、このキャッシュライフ社は前年比35％増の770万ユーロつまり12億円以上の利益を出している。このビジネスモデルは、簡単だ。ドイツには9100万件の生保とくに貯蓄型生保証券があり、市民の老後保障と貯蓄投資手段として使われているのだが、このうち契約者が30年間保険料を払い込んで満期を迎えるのはなんと50％に満たない。つまりドイツでは不況でキャッシュを手にする必要が生じたので貯蓄型生保を解約するヒトが急増したのだ。その結果93年にはたった４％だった生保解約率は、2003年には5.49％にまで上昇。2003年に解約された生保の金額は前年比35％増の124億ユーロつまり2兆円になる。その理由は、借金返済（26％）別の投資商品への乗り換え（26％）離婚〈16％〉失業〈15％〉不動産購入〈12％〉予期しない出費〈11％〉ということである。現金入手のために生保を解約しているのだ。しかし、満期返戻金に比べれば中途解約したときに得られる現金ははるかに少ない。解約時期が早いほど損だ。契約手数料と取られるから。そこで、キャッシュライフ社は、「あなたの生保を解約するより当社にあなたの生保を売ったほうが、有利です！」とやったのである。もちろん最低5000ユーロ以上の買戻し金額であり、かつ満期まで15年以下であることという条件付きなのだが、これは新商品開発の観点からは精密に計算できる条件である。「当社に生保証券を売ってくれれば、顧客は解約するより7％から15％多い金額を手にすることができます。しかも、保険料の支払は続けますから、あなたの死亡保障は継続して受けられるのです！」たとえば、50歳代で9年間保険料支払っていると、満期までまだ14年を残して解約すると受取る解約返戻金は36,047ユーロだが、これを当社に売れば、40,574ユーロになる、というわけで、解約するよりも12.4％多い現金を手にできる。これは中古の生保証券の下取り市場が出来たことを意味する。ファンドを組成し、こうした生保証券を集めて契約が満期になるまで管理継続し、利益を得る。このファンドは、その生保証券のもつ潜在的価値よりも低い価格でこの証券が買えることになる。つまり、将来のキャッシュフローを担保に資金調達する「事業証券化」の一種だ。これには、法律、税務、会計の細かな専門知識がないと事業化は不可能だが、やってできないことはないことは容易に想像がつく。これで生保契約者も現金を得た上に保障継続という利益を得る。ファンドも利益を得る。だれも困らない。果たして日本でこれが可能か。第一に、こういうことを認めると過剰流動性をもたらすという批判がありうる。流動性は量だけでなく、こういう形で「回転率」を高められるとその分取引が活発化して流動性の回転率があがり現金の流通が増える、それが過剰流動性をもたらしインフレ原因となる、ということは、いえるかもしれないが、決定的問題ではないだろう。それよりも土地インフレのほうがよほど問題だからだ。第二に、金融庁がこれを認めてくれるだろうか？そもそも生保では遺言で受取人指定ができるかどうかが議論されているくらいである。少し無理があるかな。そういえば、法務省法制審議会の保険法部会では、生保の保険金受取人指定ができるかどうかはグレーなので、これからそれを決めよう、などという鷹揚な議論を展開しているスピード感である。利用者の利便性の議論など全くそこではされていない。法律を口語体にしようなどという議論をやっていたり、正しい告知がされなかったときに故意重過失でも免責にすることは行きすぎだから一定額を支払おうとすると、いや、うっかりミスでも支払うのは制度自体を崩すなどという議論をやってるのだからほとんど意味のない空理空論に議論に時間を費やしているのね。でも、私は、この新商品を持ち込んでみたいと思っている。ノーアクションレターでまずこれが違法かどうかを聞いてみようと思っているのだ。これが、イノベーションでなくて、他に保険のイノベーションは、ない、と思っている。

  2007.07.07

• 第33話　「金融商品の説明義務」　ってホントに有効？

  最近の日経広告に「ジャパンエクセレント投資法人」がある。みずほ・モルスタ証券による不動産投資信託（東証上場）のブックビルディング開始、募集売出し開始の巨大広告である。そこの広告に、３つの立派な近代的なオフィスビルの写真が掲げられている。この写真掲載のビルには、場所もビル名もない。ということは、これは実在なのか、まさかＣＧではないでしょうね？あるいは投資対象外のオフィスビルでは、もちろん、ないでしょうね。しかし、投資対象のオフィスビルなら、場所やビル名ぐらいは載せるでしょう！非常におかしい。なぜおかしいか？リートでは、どんな物件に投資しているのかが最大のポイントであるから。最近の都心の優良物件不足を背景にリートの運用担当者（社）が、悪条件の物件を割高に買っている可能性がある。そうなると、空き室が多くなり思ったほどに賃料収入が得られないことになり、配当も減る可能性がある。そもそも投資家から集めた資金で不動産を購入して賃料収入や売却益を配当として分配するのがリートである。だから、これはリスクだから、だからこそどんな物件に投資するかが最大のポイントで、自分の目で確かめる必要があるのだ。それに役立たない情報や写真を掲載するのは、金融商品募集の説明義務を果たしているといえるのでしょうか。物件情報を示さない（写真だけ）広告は、投資家のリスク判断に役立たないもので、単なる申込の誘引にすぎないとしてもあまりに稚拙。金融商品販売法の適用条件を云々する前に、こうした投資勧誘に値しない低品質の情緒的広告自体を規制する必要があるのではないか、と思う次第。どうしてこれが「Japan Exclellent, Inc」（ジャパンエクセレント投資法人）なのだろう。悪い冗談だろう。これを日経広告に載せる見識を疑う。

  2007.07.03

• 第３２話　「資産運用はプロにまかせる時代」　でしょうか？

  第３１話では、契約者保護のために「規制強化」の方向と、契約者保護のために「規制緩和」の方向と、相反する二つの方向性が共存していることを述べた、同じ目的なのに。そして規制強化として説明義務を強化するとしても、その日本語の程度の問題が解決されないと、ほとんど意味がないことも述べた。金融商品は、複雑怪奇なのだが、たとえば、拡大を続ける変額年金市場で、最近「目標設定方変額年金」が注目されている。東京海上日動フィナンシャル生命は、旧スカンディア生命で変額保険専門会社だが、資産運用に関して目標値を設定して運用成果を確保するタイプの商品つまり運用期間満了まで待たずに自分で積極運用して　その成果を早めに手にできるメリットがある商品である。で、同社は２００５年にこれを新商品として投入後突然売れ出して、2005年4347億円、2006年1兆823億円と急伸して18万件以上の契約を拡販した。これが2006年度個人変額年金保険の特別勘定資産残高第一位！大躍進。こういう仕組みの目標設定型変額年金は今まで世界に例がなかったし、商品説明もわかりやすく出来る銀行側もシンプルで取り組みやすかったのが銀行窓販急拡大の理由のようである。いずれにしても変額個人年金のうち運用期間満了時の最低保証で、年金受け取り総額保証型のものである。今や、変額年金全体の資産残高は15兆円である。どのみち、資産を完全にプロにはまかせずに、自分である程度積極運用が効き、しかも、最低保証つきである程度安全性もある、という金融商品が大きく伸びていることがわかる。4月には、フランス最大の銀行窓販専門の生保、クレディアグリコル生命保険が誕生したが、その売り出し予定の変額個人年金は、これに似たものか、もっと革新的つまりイノベーションで連続性のない全く目新しい商品か、どうかが非常に注目される。この分野ではハードフォード生命が第一位で外資系が強い。さらにアリアンツサービス（生命保険）も虎視眈々と変額年金保険市場を狙っている。おそらく、新商品戦争の次は、「手数料引下げ戦争」が勃発するだろう。大体預け入れ単位は、500万～1000万円程度のようだ。このように、これからは、保険分野では、変額年金保険市場が主戦場となるだろう。注目すべきは、どれもみな、資産運用をプロに任せつつ自分でもコントロールするという発想である。４０１Ｋも同じ。他方、証券会社が今躍起になっているのは「ラップ口座」である。これは資産運用を個人がプロに委ねる一任勘定口座である。2000万以上のカネがあればそれをあずけて、10％刻みで投資信託だの現物株式だのいろいろに自由に分割アロケーションして運用する。2000万最低必要だから、変額年金よりも大きな資金が必要だ。コストは、株取引のように取引のつどではなく、資産残高に対して報酬が決まっているようだ。変額年金の手数料とどう差が出てくるのだろう。仕組みは、401ｋや変額年金と同じ、個別運用をみとめつつ、プロに委ねる方式だ。こうしてみてくると、全く個人の自由運用をするときは、確かに説明義務は必要だろうが、そのばあいは覚悟して投資するスタンスで個人投資家サイドでリスクがわかるだけに自分で勉強せよということになるから、それほど厳格な説明義務は必要ないだろう。供給者側に義務をつけるのではなく利を求める側つまり自分から儲けようとしてリスクに接近するのであるから、だから、内容の説明を求める「権利」がある（だから供給者側にはこの質問にトコトン応じる「義務」があるということを積極的に承認すれば十分だ。また、「４０１ｋ」「変額年金」「ラップ口座」のように、個別運用を認めるけれど基本はプロに運用を委ねる場合は、これまた、総花的に詳細すぎる説明義務は不要となるだろう。そもそもこまごまとしたことを気にせずプロに運用をゆだねるのだから。こうしてみてくると、実は金融商品取引法において要求される厳しい取引制限や適合性原則の厳格適用すべき場合は、「本当は」少ないことがわかる。これが必要なのは、自分でリスクがわからないのに危ない海に乗り出そうとしている無謀な契約者を「保護」する場合だけ、である。だから、こうした実質論からすると、コストと収益性から、このような無謀な契約者を敬遠する営業政策と商品政策を戦略的にとる場合は、資産運用をプロにまかせる商品に特化することが最も効率がいいことになる。無謀な契約者は、適合性の網にかかり膨大な資料を読み込んで勉強しない限り投資活動に踏み切れないことになる。こうして無謀な契約者を少数化させる、それが法の政策的な立法趣旨だろう。ところが、プロに任せるもの、権利として商品説明を認めればいいものまで、不必要に形式的に適合性義務を要求してコストアップさせてしまっているのが現状の法規制なのである。羹に懲りて膾を吹く状態である。立法趣旨と政策手段の「適合性」こそが問題視されてもいいのではないかと思う次第。

  2007.07.02

• 第３１話　「金融商品のイノベーション、ン？」

  保険は、言葉だけで、将来の莫大な補償義務を保険会社が負うという約束である。その対価として保険料を支払う。金融商品取引法では、リスクをとるような商品の場合に素人の相手方には十分そのリスクがわかっていることや、その実需に合っていることという適合性原則を満たすことなどをとくに要求している。その意味で、取引にはいる、つまり契約をするときは、立場の強い保険会社は細かくリスク内容を説明し弱き素人である相手方の了解をうる努力をしなくてはならなくなった。しかし、しかしですよ、投資信託やリートなど、そのリスク内容は極めて複雑怪奇でとても一目で理解することはできなくなりつつある。まして販売手数料の内容の適正性などわかる由もない。本当はリスクとともに、こういう手数料のようなコスト構造まで検討して始めて投資商品に対する顧客視点からのボトムラインのチェック、つまり収益性判断ができるというものなのにね。それが実にわかりにくい。それどころか、驚くべきことにネットで調べようにも、販売中なのにサイトで表示されるファンドグラフは「現在準備中」という表示の出ている大手銀行系の欧米リード投資商品もある。ひどいものである。これは、なにも保険商品や投資商品に限らない。株でも種類株が自由化されたが、一体どういう内容の権利をもつ種類株だかよくわからないものもある。自由化されたので権利内容を細分化できるようになったので、資本調達の機動性の幅と自由度が広がった反面、権利内容がわかりにくいものも出てきている。わからないものにはヒトは手を出したがらない。だから売れないのは当然だ。そこで、多様化と自由化の一方の「反潮流」として、できるだけ商品内容を簡略化しようという動きも顕著になりつつある。とくに保険商品は不払問題をきっかけに「お客様基点」を重視して顧客・社員・代理店がわかりやすい、説明しやすい保険商品を開発しようという動きだ。たとえば、三井住友海上の「商品イノベーション」は、２００８年度末までに個人分野の販売商品数を２００６年度の６８から約８割減の約１５まで削減する。特約の数も１４００（！）から約５割減の７００まで削減する。数を減らすのは売れないからかもしれないし、売り止めにした欠陥商品かもしれないし、なぜ「お客様基点」だと数を削減することになるのか、削減理由の論理的説明がないのでよくわからない。だからこれで「イノベーション」と言い切ってしまう感覚がどうかと思うが、こういう説明をして恥じない態度がよくわからないわけだ。「イノベーション」という言葉の定義からはじめなくてはならない。「お客様基点」とは何かから聞きなおさなくてはならない。こういう状況下で、いくら金融商品取引法で、説明義務を課すとか適合性とか書いてあっても、そう「言ってみる」ことの社会的意味は、ほとんど、ない、といってよい。そうお題目を「言えば」そうなる、実現されるというものではないのだ。言葉のもつ意味内容からもう一度考え直してみる勇気が必要なのではないか。

  2007.07.01

• 第３０話　「プリンシプル」による規制　について

  最近「プリンシプル･ベースの規制」が取上げられることが多い。「プリンシプル･ルール」とは、事前に細かく規制の数値化を行って規制するのだはなく、脱法行為を防止しつつ規制の実質を成果として期待する制度を指すが、具体的には、ライブドアのように「時間外取引であってもＴＯＢの買付をせずに株大量取引してもそういうことを禁ずる規制がないんだから、何をやっても自由、問題なし」とすることを許さず、たとえ、法律条文やルールに書いてなくても、やっていけないことはいけないのだ、とすることを言う。細かなルールに照らして形式的に合法性を判断するのではなく、目的が達成されていなければ罰するという実質本位の考え方である。確かに一理あり、変化の激しい金融取引は、「法律の条文やルールに書いてないから罰することができない」とばかりいっていると、市場監督の意味さえ失うことがあるからだ。％ルールなどという規制手法が主流の日本の金融規制とは違うやりかただ。これはこれで意味があるが、これに切り替われば規制はうまく行くというようだが、果たしてそうか？そもそも、柔軟実質主義を主張して「プリンシプルベースの規制」を先行実行しているイギリスのＦＳＡ（金融サービス機構）は、ドイツのＦＳＡであるバフィンと同じで、金融を横断的に規制する機関だが、実は事細かに、「報告義務」を金融機関に課すのでも有名である。これは大変なことで、一挙手一投足の数値報告は精緻を極め、その報告対象は海外の出先機関まで及ぶ。規制を緩和しているのではなく、とてつもなく厳しく平常時のモニタリング、つまり非常にコストと時間をかけて、平常時の「数値監視」を続けているのだ。この対応コストは金融機関側もバカにならない。私には、このような厳しい数値監視がセットでないと、このプリンシプル・ベースでの規制はほとんど意味がないと思っている。数値は細かすぎてどうかと思う報告もありそれを見てどうするのだと思うこともある。しかしこの数値監視（オフサイト・モニタリングの程度の厳しいヤツと思えばよい）があることで、見張られているんだな、という街頭監視カメラの機能を果たすわけである。実際に街頭監視カメラの映像はいちいち誰かが２４Ｈみ続けているわけでない。なのに犯罪防止効果はある。それを金融市場に応用したのだ。だからこの数値規制は、街頭監視カメラ機能なのである。世界の街角で街頭監視カメラの設置数が一番多いのがロンドンだということと符合する。

  2007.06.26

• 第29話　「青山、赤坂、六本木、外資系金融村　計画」　について

  さきごろ、青山六本木地域を中心に、国際金融都市構想がぶち上げられて、金融立国のためのインフラを整備しようということが正式に決まったようである。アジア・ゲートウェイ構想だとか金融審議会でこの方向性が強く打ち出されていたが、そこでは外資系金融機関誘致だとか、外国人子弟の教育機関充実だとか、彼らに住みやすい生活基盤作りをする、という。そして、これは昨今の新聞記事のコラムでは、「今後の日本は金融立国を国是にすべきという視座には賛成」という意見が出されている。具体的には、とりわけ金融産業強化は国力増強策だという戦略性をもっていること、そしてその実現手法は、金融の規制緩和にある、ということ、のようである。それにハードウェアとしての金融村、外資系金融機関の集積を想定してあるようだ。しかし、そもそも、アジア・ゲートウェイ構想で、カネの流れについて、東京を経由させる、という（だから、ゲートウェイという言葉を使用しているので。）発想は、東京経由で、シンガポールや韓国というオイルマネーの流れなどありえないのだから、（東京経由の意味ないから直接流れるに決まっているので）そもそも前提条件が狂っているとしかいえない。妄想をもとにした構想だ。そして、そのためにハードのインフラ整備が必要だということが、論理的になじまない。なぜなら、ゲートウェイで東京経由でカネが動く構想は、もともと現地インフラと無関係に東京経由にしようというのだから、その東京だって、東京現地インフラを必ずしも前提にしているのではないからである。実際のところ外資系金融機関は好きに（コスト見合いで）オフィスを構えるだけであって、外国人バンカーや金融関係者は、好きな外人向け住居に入居しているだけの話である。たとえば、子弟の教育機関は、ドイツの場合横浜にあるので、横浜に近いところに居を構えることが多いが、車でいくので、どこでなければならないということはないし、それなら、ドイツ人学校を青山か赤坂に移転するのですか？ということであって、オフィスを青山赤坂に集積させることとは無関係である。もともとバブル時代にも同様のインフラ構想があって、それが「東京マンハッタン計画」と呼ばれ、西神田から有楽町までの地域を広さでマンハッタンと同じなので、（だから、マンハッタンがどうしたという感じなのだが。ロンドンのシティのほうがいいと思うが。）インテリジェントビル集合させる金融都市整備計画である。これはこれで立ち消えになったのでしょうね。意味がないから。それなのに、また同じようなことを構想として安倍政権が持ち出すのはよく理解できない。規制緩和して金融機関に幅広い自由度を与えるというけど、コンプライアンスの話は一言もでてこないし、自由化といいながら業際問題（銀行証券分離の緩和、生保損保分離の緩和）などは里程標を作って自由化する話にはなっていない。日本の場合、そういう自由化の前に「金融取引の市場化」をきちんと行う必要が最優先だ。それに、金融の最重要論点であるコンプライアンスによる契約者保護の潮流と新・東京マンハッタン計画とはつながらない。論理的思考がないのではないでしょうか？もっというと、東京市場というけれど、たとえば、ロンドンマーケットというものに相当するインフラは、実は存在していない。たとえば、保険では、ロンドンマーケットはそれぞれの分野別に、たとえば貨物保険や船舶保険という海上保険では、それの引き受け手を捜すには保険会社のビルを訪問することは必要ない。なぜなら、そういう各会社のアンダーライター引受人たちが小さな窓口オフィスをひとつのビルの中にもっていて、いろいろの会社のそれが集合している。だから、ひとつの会社のアンダーライターの引受拒絶されても他の会社のアンダーライターに行って条件交渉することはいとも簡単だ。それがロンドンマーケットの真のインフラ的な意味である。ひとつの案件はすぐ他でも見れるし、いくつもの引き受け手が重なって大きく受けることもできる。だから、ロンドンマーケットは巨大リスクも引受でき、それが顧客利益になる。ということは、そういう実質的なインフラ整備こそが、マーケットを支えるので、そういうビルを建設するというのなら、意味はある。しかし、東京の保険会社はそうなっていない。だから、東京マーケットは存在しない。青山赤坂のビルをどうしようというのだろう。このような東京マーケット構想実現のためというなら、まだしも。そこには、何を効果として狙って、何を成果物としたいかについて、正確なイメージ共有がされていない問題があるのではないか。かくして、またしても、この計画も箱物行政の典型となってしまうと思います。一つのビルにいくつもの保険会社の出店が出ていれば、いくつも回遊できて、選択できて、おおいによろしい、というのも確かだし、こういうユーザーの視点では「来店型」のチャネルは利便性が高まるといえる。しかし、もし自由化をいうなら、保険ではほとんど禁止に近かった（完全禁止にはされていない、誤解を生じさせない限り）比較広告を自由にすることの意味は大きいでしょう？その場合、保険会社のビルが青山にあるか赤坂か、横浜かは、ほとんど、ユーザーには関係、ない、でしょう。所在地域でユーザーが購買を決めることはないのだから、外資系金融村構想は、ユーザーに無関係であることだけは、はっきりしている。そのこと自体が問題にされない視線の立ち位置こそ、本当の問題が潜んでいると思う。

  2007.06.21

• 第28話「金融業界の創造的破壊」　について

  前回まで、金融業界と規制、コンプライアンス、内部統制の話をしてきて、金融業界でのイノベーションは、ない、かもしれないと言って来た。本当に金融業界でイノベーションはありえないか、という問題に対しては、非常に歴史的に形成されたエスタブリッシュメントとしての銀行、証券、保険業界では、イノベーションはありえない、非連続の創造的破壊は不可能だと直感するのだ。金融業は継続が命なので、（サービスの停止や業務停止命令を異常に恐がる）まず、壊す、悪いところをとりあえず徹底的にぶっ壊す、そしてそれから、作る、というスクラップ＆ビルドの段取りを取ることができない。「壊す」と「作る」を同時にやりたい、という普通の経営者の尋常な人情を排することができるか、どうか、がイノベーションを起こせるかどうかの分かれ目だ。これをやってみたいな。認可行政の中でゲリラ的に認可をもらい、異端的な金融業態を創造することこそ、日本に残された最後のフロンティア・ラインだと感じる。西部劇ね。本当にできるかな。

  2007.06.19

• 第27話　「金融機関が　イノベーションできるか？」

  ここのところ、金融機関のコンプライアンスについて集中的に記事を書いてきたが、巷では、「社長、それはコンプライアンス違反です！」などというタイトルの本が売れているくらいだから、ある意味どの業界でもコンプライアンス・ブームとなっている。内部統制も同じで誰も彼もみんな内部統制だ。では、そもそも今まで逆に金融機関でのコンプライアンスないし法令遵守はどういう扱いをうけていたのだろうか。ある意味で金融はもっともコンプライアンスから遠い領域だったと思う。諾成契約であるのだから、原則自由に契約内容は決められるのだから、法令に違反しない限りグレーゾーン金利であっても、それを適用して恬として恥じずに、巨額に利益を手にしていたのが、消費者信用業界だった。今はそれが許されなくなり、巨額の引当金を積まなくてはならなくなった、ということで、低い金利と異常に高い金利とのギャップ・ビジネスモデルは突然破綻した。銀行が最初に変額保険を売ったときもリスクの説明なしにカネを貸し付けて生保を組み合わせ販売したことが裁判になったこともある。逓増定期保険も、途中解約を前提とする節税商品一般が本来の保険の意味以上のメリットを与えていたことが問題となったこともある。保険業界での保険金不払問題は、約束していた保険金さえ支払わない保険業界の体質をあぶりだした。コンプライアンスから遠かっただけではない。顧客からも遠かった。一律の営業時間だとか、店舗規制だとか、信じられないくらいの無意味にきめ細かい規制の網があったためである。こうしてみてくると、プロとアマの金融商品販売チャネルは、プロがアマを無視して強引に金利やカネを取り続けてきた歴史そのものといえる。そこで急に方向性を変えて「当社は顧客第一主義です！」と方針転換してもそもそも体質がそうなっていないのだから、それは無理な話。総合企画室の肝いりで顧客満足度向上プランが提言されて、その結果、午後3時のテラー窓口で客が多数並んでいるときに、顧客満足度調査をするためにテラーにアンケート用紙を客に配布させる、などという愚かなことを平気で繰り返すことになる。内部統制のための手続も同じで、やたらマニュアル作成（理論的にそうであるべきという作文）に時間をとられ、それも外部コンサルタントが作ったものを基準にしたりするので、内部の誰もが現実的だとは思わないので、オーナーシップのない内部統制文書があふれてくる。そのとおりに動いているかどうかの事後チェックもない。こうして、内部統制もコンプライアンスも、どちらも社内では価値創造部署では、ない。そもそも、金融機関は、価値創造業界とはいえない。なぜなら、金利の高いところから低いところに廻してギャップを取るモデルが基本であるから。保険も、損害が出たときに、それを保障してもらえるのでいかにも何もないところから価値を生み出す価値創造があるようだが、その保険金は他の多くの契約者の保険料負担が基礎にあるにすぎない。だから、そもそも価値創造していない金融業界が、コンプライアンスで「価値創造なしという」価値を優先して、仕事をするのなら、いったい、何が顧客に価値として残るのだろう。おそらく、現有の金融の構造自体を壊す「戦略」こそ、本当に意味のある顧客価値創造なのではないか。そのとき、トップが一番ふらついて危ないので、トップこそコンプライアンスの枠組みを超えずに、構造破壊をおこすことができれば、新しい顧客価値創造が実現できるのだろう、と思う。それが、できるだろうか？ウーン、現場の裁量認可行政の中では、ちょっと無理ではないか？かくして、金融機関ではイノベーションは成り立たないのでは、と思う。

  2007.06.19

• 第25話　「諾成契約」　について

  契約は、「契約書」がないと無効のように思えるが、じつはほとんど諾成契約である。つまり、口頭でも「申込と承諾」があれば、それで契約は成立するので、あとで契約内容について争いにならないように契約書を作成するにすぎない。金融取引関係は、すべてそうである。誤解とか思惑違いという要素があることや知識不足や理解力不足という要素もあるから、短い期間の契約の場合クーリングオフという「なかったことにする」条項をつけなくてはいけないとか、意向確認書で本当に受益者であるはずの契約者はその契約の裏にあるリスクについて覚悟していますか？大丈夫です。という確認をして拘束力を高める制度もある。それが金融上のさまざまな契約である。しかし、それは追加であって、あくまで口頭でＯＫすれば、それで契約は成立してしまう。同じ知識と経験値をもちいつも顔を合わせている同じ業界の商売相手なら、口頭でＯＫだ。それをそうでないと後から言う場合は、業界のツマハジキだから。しかし、一方が素人さんの場合に問題がおきる。金融はとくにそうである。だから、いっそのこと、口頭でＯＫでなく、細かい契約書を作って初めて契約が成り立つというように、法律を改正すれば、いい。契約書それも細かいヤツがないと契約じたいしたことにならない、とすればいい。これを要物契約というが、リスクを伴う契約や保険がなぜ要物契約でないのか、理解に苦しむ。口頭でＯＫといって入口を広げておいて、あとから意向確認書が必要だというのは、いかにもおかしい。初めから間口を狭くして相手をまもってあげればいいではないか？問題は、意向確認の中身なのだ。要物契約とすると、その中身も法定しないといけない。それをすると立法者が責任を負うことになる。だから、要物契約にはしたくないのだ。契約者保護の法改正です、といいながら、どう保護するかは、立法者は細かく定めず、業界にマル投げしている構図が、金融商品取引法ですね。以下、金融商品取引法の解説。金融商品取引法とは、平成１８年６月の通常国会にて旧来の「証券取引法」を土台に他法律との整理統合を行い、金融商品全般の取引に関する総合的なルールを定めた法律。証券取引法に加え、金融先物取引法、外国証券業者に関する法律、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律、抵当証券業の規制等に関する法律が統合されて構成されている。投資ファンドの出現など金融商品の多様化に対応し利用者保護を図るとともに、内部統制の整備・充実を要請するなど市場の公正性・透明性を確保し、金融・資本市場の発展に寄与することが改正趣旨とされている。 http://www.fsa.go.jp/access/18/200607c.html金融商品取引法は、個人投資家や消費者の保護の強化策も大きな柱に据えました。投資信託や変額年金保険、外貨預金など元本割れのリスクのある商品を販売する場合、これまでは商品別、販売業者別に販売・勧誘のルールが分かれていました。金融商品取引法が成立したことにより、これらを一本化することができ、横断的に規制の網をかけることができるようになり、法律のすきまに入って規制対象とならない商品で、詐欺的な被害に遭うケースを防ぐことが可能となります。例えば、三井住友銀行が優越的地位を乱用して取引先に販売し、金融庁から業務停止処分を受けることになった商品に「金利スワップ」があります。この金融派生商品の「金利スワップ」には、これまで具体的な販売・勧誘ルールがありませんでした。金融商品取引法ではこの金利スワップについても、販売時に元本割れのリスクを書面で説明するよう義務付けています。このように販売・勧誘に関して一本化したルールを設けることで投資家や消費者の保護の徹底を図っています。金融商品取引法の成立を受けて、大手銀行や保険会社は社員向け研修や専門の担当者配置などを通じ、コンプライアンス（法令順守）体制を強化するなど、来秋の法施行（金融商品の販売規制部分）を前に対応策に動き始めています。元本割れリスクなどの説明義務を徹底するため、三菱東京ＵＦＪ銀行は、金融商品の販売方法をチェックする専門員約２４０人を４月から順次、全国の主要７０支店に配置しています。専門員に対する研修のコストなどが増加することになりますが、金融商品取引法施行を前にできるだけ体制を整えたいとの方針から早期の配置を行っています。みずほ銀行も、行員への研修を増やしたり、新しい対応ルールを作るなどの動きを見せています。担当者がリスク商品を販売したときのやりとりを店舗に置いた独自のチェックシートに記し、副支店長がこれを確認するというルールを採用しています。顧客の投資経験や理解度が不十分だと思われるケースがあれば、別の行員が顧客に購入の意思を再確認する手順になっています。 また横浜銀行はすでに、リスクのある商品を勧誘する時に窓口での説明を２回以上行い、各回で担当者を入れ替える体制を取っています。適切な説明があったかどうか、担当者に互いに確認させることが狙いです。さて、他の法律で「金パン法」というのがある。正式名称、「金融商品販売法」で、売る側を規制する。だから、金融商品取引法ができれば当然売る側の行為規制法である金融商品販売法、金パン法もその影響も受ける。これは意外と金融機関にとっては大きな改革だ。私には、この改正が、金融機関の人事評価やベストプラクティスモデル（コンピテンシー）に役立つという意味で大きな意味を持つと思っているのだ。モデルがないとコンプラインス貢献度が測定しにくいが、こういう行為基準ができれば、それを守っているかどうかは、少なくとも外見的には数値化さえできることになる。今より、一年後にどれだけコンプライアンス度が上がったかが数値化できれば、それを人事評価に組み込むことが出来る。だから、評価する。怠け者の経営者に代わって金融庁がそれを図式化したということ。だから、この数値化あるいはパラメーター化ができれば、金融機関評価（比較）の参考にもなるし、金融機関のＭ＆ＡのＤＤにも大いに役立つことだろう。と私はおおいに評価している。金パン法への影響についての具体的な説明は、以下のとおり。まず、「１．購入目的考慮の追加」についてですが、金融商品取引法が施行されても投資信託販売の基本ルールは変わらないのですが、顧客への投資信託の募集勧誘をする際に最も重要なルールである「適合性の原則」に要件が一つ追加されました。現行の証券取引法では「顧客の知識、経験、財産の状況に照らして……」となっているのですが、これに追加されたのが、「……金融商品取引契約を締結する目的に照らして……」というものです。つまり、顧客の購入目的をも考慮すべきことが追加されたわけです。これが追加されたことにより、例えば、投資信託の知識や経験があり資産・財産が十分にあっても、その人が元本の安全性を目的としているのならば、ハイリスク・ハイリターンのファンドを勧めることは、適合性の原則に反することになってしまうわけです。次に「２．説明義務事項の追加」についてです。金融商品を販売する際に顧客に対して説明することが必要だった重要事項として、これまでは、「元本欠損が生ずるおそれ」という内容がありました。金融商品取引法では、これに加えて、「元本欠損や当初元本を上回る損失が生ずるおそれを生じさせる取引の仕組みのうちの重要な部分を説明しなければならない」という事項が追加されたのです。投資信託商品の場合、単に元本割れのリスクがあるという説明だけでは足りず、どのような仕組みで元本割れリスクが生じるのかを説明しなければならなくなると思われます。しかもその際に、説明義務を尽くしたかどうかを判断する基準として「適合性の原則」が適用されますから、「顧客の知識、経験、財産の状況及びその金融商品の購入目的に照らして、顧客が理解できるような方法及び内容でなければならない」わけです。ということは、次のようなことが販売担当者に求められることになります。・商品リスク、リスク発生要因、商品の仕組みなどに関するより一層の理解・顧客の理解レベルに合わせる形での説明・目論見書、販売資料なども、より詳しく分かりやすい説明

  2007.06.16

• 第24話　「金融機関の炎上」　について

  昨今の新聞記事の経済面には、保険会社の不払問題から昨日の東京三菱ＵＦＪの不祥事まで毎日毎日、百花繚乱、乱暴狼藉、複雑怪奇。東京三菱ＵＦＪ銀行のケースは、顧客との取次ぎミスで賠償しなければいけないのに社内報告にとどめていたというもので組織的にそれでいい（つまり法令違反でかまわないという）ルールにしていた（旧ＵＦＪはそうでなかったが、合併時にユルユルの東京三菱にあわせてしまったという失敗。で、これは法令違反で、その他海外での法令違反を含めると5分野で指摘を受けて、その結果業務停止命令というわけで、もう「炎上」状態といえる。それでもトップが責任をとって辞めないのは不思議。さて、この不祥事炎上についてであるが、それを防止するために、リスク商品に関する金融商品取引法の強化やそれを先取りした「契約者意向確認書面」のとりつけが喫緊課題となっているのだが、果たして炎上の真の原因はナンなのか？考えてみた。私には、金融機関に対しいくら業務停止命令を繰り返してみても、また処分者を何人もだしてみても、この炎上の種は尽きることは、ない、と断言できる。なぜか？東京三菱ＵＦＪもそうだが、現場の人事評価にコンプラが未だにビルトインされていないことが、昨日の夕刊に報道されていたが、私のブログ・シリーズでも講演でも何度も繰り返しているとおり、人事評価にコンプライアンスを織り込まない限り、永久にこの問題は解決しない。それは人事と会社の戦略を一致させる戦略人事の考え方から人事制度を見直さない限り実現は不可能だし、それを実現できるのは会社トップしかいない。ここまでは一般論なので、それにもかかわらず、戦略人事の考え方でコンプラインスを人事評価に入れたとしても、金融機関の炎上がこれからもなくならないといっているのは、実はこういう戦略人事論だけでは解決しない問題が裏にあるからだ。まず、こういう戦略人事の考え方でもヒトのスキルや考え方まで変容させることができないということ、つまり、制度を変えても、ヒトはかわらない、ということだ。例えば、実際最近あったことだが、あるどこかの金融機関が代理店主をたくさん集めて会議を開き、４０１ｋの販売攻勢についての説明をした。そこで強調されたのは何かといえば、個人型確定拠出年金とくに第一号被保険者（つまり自営業者）は、年間最大816,000円の所得控除があり（！）、運用益が非課税なので、巨大な複利効果が見込めるので、資産残高の益がでるという話をして積極販売をよびかけていた。別に目新しいことはありませんね。この商品はもう５、6年昔から販売している４０１ｋだから。では、なぜ今に限って販売攻勢なのか、というと、世の中、社会保険庁の「年金不祥事件」でもめていて一大関心事なので、401ｋがこの際マーケティングしたいというノリの「思いつきマーケティング」なのである。いっておくが、どうして社会保険庁の年金不祥事と４０１ｋが結びつくのか、未だに私には理解できない。が、この金融機関では、４０１ｋが年金不祥事に対抗する方法のひとつと考えているフシがある。その論理的な説明は何もないから、たいへん情緒的な４０１ｋマーケティングというか、年金不祥事便乗としか思えない。今、金融機関では年金不祥事に便乗したマーケティングが他にもあるのだろうか？こういう便乗型営業しかできないということそれ自体が、金融機関のもつ極めて貧弱なマーケティング力を実証している。だから、だからですよ、そもそも売る能力やマーケティング手法にスキルが全くないので、コンプライアンス以前の問題が潜んでいるのだ。だれもいわないけど。コンプラに問題がある、といえばカッコいいが、マーケティングスキルがない、というのは誰も実証できないし、ビジネスパーソンとして恥ずかしいからね。さらに、問題は、コンプラ前のマーケティングスキルがないということだけでは、ない。コンプライアンス問題として、捉えるなら、今この４０１ｋのこの手数料が500円近いということ。年間手数料ではありませんよ。「毎月定額」で抜かれる手数料ですよ。この営業部長は、毎月5000円から68000円まで無理なく積立可能と宣伝している。ということは毎月5000円の４０１ｋに入ったヒトは、この毎月500円の手数料だけですでに元本割れしている！ことになる。つまり、元本割れすることが確実な商品を黙って売りつけるというわけだ。ではどのくらいの積立額から500円近い固定経費を払っても元本割れしないかというと、これは一概にはいいにくい、いろいろケースがあるからという説明なのだが、それを説明するデータはここには用意していないというのだ。つまり、この点で営業部長からはお客にキチンと説明するようにという指導はなかったので、これは、少ない積立しかしないヒトを手数料負担部分で騙しているようなものだ。営業説明担当者にこういう知識や説明スキルがないのか、もしスキルや知識があって、説明を怠っているのだとすると、詐欺に近くなり、不利条件についてそれを隠して契約していることになりまた新たな金融不祥事ということになる。こういうことが金融機関で白昼堂々と配下の営業担当ないし代理店を集めて「指導」しているというのは、非常に問題がある、と私は思う。これは契約者に説明を要する「重要事項」や「不利益条件」ではない、とでもいうのだろうか？これでも最近金融庁の検査で業務停止を食らって反省したばかりの会社がすることだろうか。営業的に迷惑をかけて、申し訳なかったと謝った、その直後にこういう説明をしてなんとも思わないというのは、つまり、業務停止での反省点や改善は、この点では全く生きていないことになることが実証されたわけだ。それを現場が全く自覚していないことが問題だといっているのだ。もっといえば、自覚の問題というより、これはある種スキル不足ともいえる。プロなら当然知るべき説明義務について「はずしている」のだから。これはトレーニングでカバーできる領域だ。しかし、もしわざと外したのだとしたら、そのこと自体不祥事である。そして企業全体として、契約者保護・意向確認の風潮に無頓着ということを内外に示していることになる。だから、こんな基本的なことさえ実行できないのが現実だとすると、金融不祥事の種は尽きないといっているのだ。いくら制度改革しても、つまり意向確認だとか「適合性」だとかいってみても、「文書で確認」いるだけでは形式さえ整えばいいということで、こういう肝心の部分について犯罪的問題が見逃されてしまう。かくして、金融機関の毎日の営業には未来永劫、炎上の種はつきないのである。

  2007.06.16

• 第23話　「起業家の報酬曲線」　について

  起業したばかりの経営者はいったいいくらぐらいの給与報酬を得ているのだろうか。統計がない。とはいえ、自分の会社を興しているのだという点ではいくらもらってもいいことになるが資金を自分の生活資金にまわしてしまっては本末転倒だから、どうしても生活資金つまり給与報酬は自分で最低限に決めることになる。また、外部資本を導入したら、他律的に報酬額は自己の生活維持のための最低限とするのが道義的だ（そうでないと外部資本を自己の生活資金に流用していることになる。）ところが、まだ未上場の、まだキャッシュインつまり売上も計画どおりでないのに、普通の会社と同じないしそれ以上に報酬をとる起業経営者もいる。その理由は何か？彼らは、元サラリーマンであることが多いから、起業して「経営者」となったということだけで、「その勇気に値する」という、ただそれだけの理由で、「一般経営者」にふさわしい報酬を得て当然だという、優美なるないし短絡的なる誤解をしている。起業家は、経営者であって、経営者でない。つまり、本物経営者にまだなっていないのだから、それと同じ給与報酬を得るないし得て当然という考えをもつのは誤りだ。もうひとつ、自分はそれだけの能力があるから、まだキャッシュインがなくても報酬を得て当然というのも間違い。報酬は能力の対価ではない。成果の対価だ。能力があっても成果ないのに報酬を手にすることは出来ない。格差社会というが、最低限の生活を維持する年収は300万～350万ではないか？まず、その洗礼を克服して、こらえて、キャッシュが生み出されてくるサイクルを確立してからようやく給与報酬の増額を、それも少しだけして、上場したら、株主と共に莫大な上場益を手にする、というのが、「起業家の報酬曲線」だ。未上場、起業一年未満という会社ステージで、キャッシュインより多い金額の報酬ないし1000万以上の給与報酬を手にしている代表取締役起業家が、もし、いたら、それは起業家報酬曲線と全くかけ離れた対株主ないし対「よのなか」横領というほか　ない。シンプルなことだと思うが指摘する人間は少ない。日本ではね。報酬論議をきちんとできる人間はいないね。日本の農業社会のＤＮＡのせいだと思う。

  2007.06.12

• 第20話　「オフィス」　について

  オフィスの場所については、都心の家賃が高くなったとか、ベンチャービジネスのための期限付き家具付賃貸オフィススペースというのがはやっているとか、六本木ヒルズ在住会社が防衛庁跡にできたばかりの新高層ビルに移転始めたとか、いろいろの話が聞こえてくる。オフィスの中の改造や改装ビジネスも設計を入れる形でかなり流行している。外資系のサーブコープや、リージャスも、都心で到底手が出ない場所にある物件、たとえば帝国ホテルタワーやＡＩＧビルの部屋を居抜きで短期間（6ヶ月未満が多いようだが、場合によってはかなり長期間）借り上げ、ベンチャーが大きくなったときに卒業していく、そういうインキュベーション（ふ化）の場所も、便利に整備されている。でも、でもですよ、バーチャルオフィスということで、「オフィス・スペースのないオフィス」があっていい、と私はずっと思っていて、それを実行しているのだが、今日は、大きく重たい知的資産提供業務をしているのに、都心にオフィスがないなんて、携帯電話が連絡先だなんて、スゴクおかしい！と言われた。オフィスを借りることは、信用力だといいたいのだろう。携帯でなく固定電話がないと信用力がない、といいたいのだろう。なぜ、オフィスを借りることが信用力かというと、固定経費がそれだけ負担できるカネがあるというデモンストレーションである、以外の意味はない。オフィスですることはＰＣで作業するのがメインだが、それは都心の日比谷の中にある自由に出入りできるスペースや六本木ヒルズでも可能だし、むしろ快適だ。それ以外は、文書や書類の保管のためのキャビネットだが、そのために都心のスペースを取るのはコストパフォーマンスが悪い。ミーティングのための場所は、ヒルズでも確保できる。むしろ、賃貸料で固定経費をかけて、損益分岐点を上げることの愚のほうが問題だと思うのだが。オフィスを借りるだけの固定経費をかけるだけのカネがあるのなら、私なら別に使うけどね。大体、オフィスの設計上、フリーアドレスがたいへん有効なのは、人員負荷に対してフレキシブルで、しかもメンバーの交流が非固定的で自由になり違うセクションや考え方、仕事の進め方に寛容かつ学習しあう関係性を築けるという偉大なメリットがあるのだ。オフィスを借りてスペースを買ったとしてもフリーアドレスにしてタッチアンドゴー方式にするところも多いというのに、オフィスを借りるという物理的スペースにだけなおこだわりをもつのは、動物でいう縄張り意識なのだろう。毎日縄張りを見回りにいくのが野生動物の習性だ。そして、ベンチャーなのに、もしこういう物理的オフィスに「信用力」を見る人がいたとすると、それは保全性が強く、かつ、凝縮性の高いアンカー型の人で、規範重視の几帳面な守備の人。これではそのベンチャーは守り重視で営業力は（強いと自分では思っていても）実は弱い、というより攻め型では、ない、ということを自白しているようなものだ。既存顧客の保守はこのような人が担当するのがベストだが、新規顧客は攻め型人間でないと個性を生かせない。こういう人が社長の会社は、最初の設立はきちんと動くが、それ以後は拡散型人間にバトンタッチしないと、成長しない。オフィスを持つか持たないか、ということひとつとっても、どんな経営をめざすのか、が見えてくる。で、私の場合は、オフィスをもたない、バーチャル・オフィスだ、ということにこだわってみようと思っている。そんなにおかしいことかなあ。登記簿上のオフィスは自宅でもいいと思うのだが。シスコシステムの創業社長も自分の家の自宅をオフィスにしていたそうですよ。そして、私の場合、もし今後メンバーが増えてきたら、みなが集う場所としての（ただそれだけの意味の）魅力的なオフィスをつくってみたいな、むしろ。「発想する会社！」（トム・ケリー著）は、ＩＤＥＯという米国のイノベーティブな会社について書かれた本だが、これはとても強いインパクトのある本だ。温室のようなオフィス、夢中になれる場所、仕事場には見えない仕事場、スペースがありすぎると勢いを失う、序列を作るな、スタッフに外の景色のみえる雄大な眺望を与えよ、などなど。個性が生きる場所がワークスペースなのだと思う。そのためのコストが生産性を越えない限り、そしてその場合に限って、物理的なオフィススペースを借りる意味がある、と私は、思う。そうでないなら、そしてそうなるまでは、バーチャルオフィスで、いくぞ！

  2007.06.07

• 第１８話　「Ｍ＆Ａでの　儲け損ない」　について

  Ｍ＆Ａの話で、毎日の日経新聞は賑わっている。小さいＭ＆Ａも最近は次世代へのオーナー社長シップの移転との関係で、かなり活発らしい。そういうＭ＆Ａはおよそ「うまく行く」ことを期待して発進するプロジェクトで、失敗することは、念頭においていない。当然だが。でも、失敗するとどうなるか、も考えないといけないのでは。相手対象企業と自社社内経営陣・エキスパートが、つまり社内人のほかに、コンサルや会計事務所、法律事務所など第三者がＤＤ（資産査定）に関係し、判断材料を提供してくれる。問題は、こういう第三者がもっともらしく美しくいろいろの提言や数字、見込みを横から見せてくれるので、誰が真の決定権者か判断者か責任者か、わからなくなることがある。なぜ、Ｍ＆Ａをするのか、それをすることがどういうロジックで有利なのか、がキチンと説明ついているかどうか、よくわからないケースが多いのではないかと思う。たとえば、世上をにぎわすペンタックスとHOYAについてもいろいろの迷走の原因は、このような説明が自分にもキチンとついていなかったことが理由ではないかと。思うのだ。最初去年１２月に今年１０月に合併するという基本合意を発表したが、その後ＴＯＢに変更、合併断念。この間、本当は、どうやらchange of controlつまり大手社が研究開発レベルから関与しているためにＨＯＹＡには売るがペンタックスにはレンズを売らないという契約になっていてそれが理由で断念することになったという「落ち」が日経コラムに書いてあったようだが、そういうことは経営陣なら自社レンズの置かれている状況ぐらいわかっているはずで発表前にどうしてこんな事情が判明しないのだろう、そんなことは注意深い経営者ならすぐわかるはずの重大障害だと思うが、一体何を検討して基本合意を発表したのだろう。何も自分で考えなかったのではないかと推測する、誰かがＭ＆Ａの対象にペンタックスがいいですよ、といったのを経営者が丸呑みしたのじゃないか？と思う。ＨＯＹＡにとってみると、買付額は、７７０円で127,786,000株だから総額980億円以上の買い物だが、ペンタックスの土地含み益と負債修正を加えた修正純資産は、420億程度である。これはどういうことかというと、980億円から修正後純資420億を差し引いた値つまり560億円が「ノレン代」である。すなわち、企業の事業価値よりもノレン代のほうが多いのだ！本当にＨＯＹＡはこんな買い物をしていいのですかね。420円のものを980円で買ったら詐欺だのなんだの大騒ぎになるのに、桁が億になると、いいのですかね。この場合、ＨＯＹＡとペンタックスの将来営業利益が今のままの予測だとすると、どうなるのだろう。ノレン代は最高20年償却まで容認だが、5年にするのか10年償却にするのかによって全く変わってくる。どちらにするのかは重大経営問題だが、それって議論されているんですかね。買った企業の企業価値と同じくらいの大きなノレン代を5年償却すると、来期は70億の純益のあるペンタックスを買って大きく潤うはずが、アーラ不思議、ノレン代償却のために償却後利益は、むしろ元のＨＯＹＡの利益よりも小さいものにしかならないことが判明する。公表資料の試算では3年間はペンタックス買収しなかったほうが営業利益が多くなる、相乗効果があるはずなのに。騒擾効果しかなかったということになりかねないのだが、その説明がキチンとできているのですか？2007年3月期で実績1130億の利益が2009年3月期予測で1050億の利益になる。減ってしまうのだ。それ以降にどう現れるのか企業戦略をアナログとデジタルできちんと説明することが必要で、何よりも経営者自身が自分で計算してわかっているのかどうか、それが問題だと思う。償却5年か10年か20年か取締役会議事録に残っていることを祈ります。でも、最後にペンタックスがそれほどの実績を生み出さなかったときは、あきらめて、ノレン代は残酷にも直ちに100%「減損損失」計上できる。「間違ったらごめん」、という世界だが、それでそれなりにその期の利益は大幅に圧縮できるので、つまり、事後的な「ごめん」が通用するのが、Ｍ＆Ａの世界なので、だから、ＤＤもいい加減だし、経営者の判断が凄くユルクなってしまうのではと、私は思うのだ。これからも@驚くＭ＆Ａが続くだろう、そんなに深く考えることはないのだ。飛んでしまえば、それで、いい。これは確実に企業モラルを毀損すると思いますけどね。その状態でなお持分プーリング法に賛成の人がいるというのが信じられない。

  2007.06.05

• 第１７話　「検索エンジン　と　推奨エンジン」　について

  ６月１日の日経一面「ネットと文明」という記事がある。グーグルは、今売上高一兆２千億円、時価総額１８兆円という規模の会社だ。この大きさだと、グーグルにとっては、新日鉄（時価総額５兆７千億円）を対象に、株式交換の手法で、確実にＴＯＢで買収できる。とはいえ、ネット検索企業と鉄鋼業とはシナジーないけど、アルセロール・ミタルは、同業としていつでも競合相手の新日鉄を敵対的にでもいいから買収して競合機能をそぎおとすという「戦略的Ｍ＆Ａ」策に打って出ることも全く荒唐無稽というわけではなくなっているのが現実だ。なぜなら、アルセロール・ミタルの時価総額は９兆４千億円であるから、十分strategic buyerの資格ありだからだ。もちろん、Ｍ＆Ａは財務指標だけで決めることはできない。いろいろの要素をかみ合わせて最後に経営者の強力な「買収意思」というか、もっというなら、帝国を構築する「支配意図」がないと、Ｍ＆Ａには踏み切れない。それにアルセロール・ミタルがそんな買収を世界中で繰り返してきた後なお内部統制とガバナンスが行き届いていて組織として戦意が高い組織なのかどうか、それは、わからない。日本の全鉄鋼会社が大合併すればミタルの３角合併のＴＯＢに対抗することができるかもしれない、ということになるが、閑話休題、それはさておき。グーグルという、この巨大ネット検索企業は、１９９８年設立なので、満８歳、人間で言うと小学３年生。でも、もうこれも時代遅れとばかりにこれに投資していた老舗ＶＣが見切りをつけて別の高速動画のベンチャー企業に乗り換えたという報道もあった。ＶＣとしては新しい事業の目をみつけてその成長性にかけるのだからグーグルの成長性に見切りをつけたということだろう。グーグルのすさまじい成長力以上の成長性とは、何か。この記事は「検索（サーチ）から推薦（リコメンデーション）へ」という潮流を指摘している。たとえば、ガリバー（中古車販売大手）の車選びサイトでは、好みの車種を選ぶとお薦め車種を相関マップとして並んでオッファを出す。「走り重視」の人には同じ傾向の車をまとめて自動表示する。検索履歴から傾向分析する。同じことは、イギリスのラストＦＭも同じで、この会社の無料ソフトをネットで取り込みあとはパソコンに保存して好きな曲を流し続けると、サーバーが好みの音楽傾向を分析して把握、３００曲を超えた時点で自分専用のラジオ機能が使えるようになり、以後サイトからは自分専用に自分の好みにあった未知の曲ばかりが流れてくる、という信じられないようなサービスだ。検索エンジンは、自分から欲しい情報を探しに行く「セルフサービス」型で、推薦エンジンは、「欲しい情報が向こうからやってくる「ウエーター型」。これは大きい差だし、全くアプローチの方向が真逆だ。多変量解析とデータマイニングの技術がポイントだ、と私は思うが、それを可能にする技術よりも真逆の発想がポイントだ。もっというと、この推薦エンジンは実はいろいろの仕掛けがしてあって利用者の好みや要望、期待にぴったりのものを選択することになっているが、実は、その適用の結果が本当に期待にあったものなのかどうか　は、実は、誰にもわからない。期待感は検証不能だからだ。つまり、期待にあうのではないかという仮定で、ある基準にそってセレクトされたものにすぎないから、実際本当は「期待はずれ」ということも大いにある、はずである。未来予測だから例外があるのだし、未知の要素で新しく好きになったものまで今取り込むわけでもない。つまり、あらかじめ「仕組み」というか「期待の期待」を説明することで「期待にそっているはずだという」思い込み期待感があらかじめ形成されてくるので、あたかも（少し期待はずれでも）まあこれが私の期待の範囲内ということになるのである　と私は思う。もうひとつの「期待を期待する」仕掛けというのは、未来選択の車や選曲を「常に」「複数」用意することである。単数一個の選択だと、期待にあっているかいないかのデジタル２者択一となってしまうので、合っていない確率がランダムだと２分の一あるが、そうではなくて、つねに複数の将来選択肢を用意することで、アナログ的に連続したどちらでもない領域で期待合致の幅を広げておく手配をしておくのだ。そのやりかたで複数というより、「多数の」（これが魔法のポイントである。）将来選択肢を用意してそのいくつかが「期待合致らしき」ものであれば、「期待の期待感」を満足させるという心理的構造になっているとよめる。本当は、数学的なないし統計的な実体など、どうでもいいのだ。それが実は推薦ないし「推奨エンジン」の実体だと、私は思う。推薦エンジンが話題を呼ぶと社会的にその構造に合致しないような期待をもつことがおかしいと自分で思うようになり、「ちょっと違うのでは」という自由な発想が阻害され、ますます期待の期待感が強化されるという仕掛けで、それがガリバーやラストＦＭだろう、と私は思う。（データマイニングの専門家の友人に聞くと、文章間に散在する言葉の集合体で分析する技術があるというが研究途上で実用化はされていない由）。さて、検索エンジンと推奨エンジンとでは、実はマーケティングの方法が全く違う。検索エンジンは、探す人が能動的に自分から自発的に手を動かして（ＰＣやインターネットを操作して）情報に近づいていく。推奨エンジン利用者は、逆に自分から手を下してわざわざ探しにいかずに人を信用してその判断や推奨に身をゆだね、それで自分よりも何らかの形で優位な人から「気持ちのいい」情報を入手することで満足する。このアプローチの差は、金融商品の場合、決定的となる。「検索エンジン」を使うのは、デイトレーダーだ。自分から情報を探す、工夫をする、計算プログラムまで作る、なんとかして分析しようとする、マメなひとだ。他方、「推薦エンジン」となるのは、ファイナンシャルプランナーや、保険代理店だとか、銀行窓販ということになる。多くのひとたちは金融商品を推薦エンジンを利用して購入する。複雑でわかりにくいから、理解して判断する時間コストを考え、推薦エンジンを使う。検索エンジンなど使う人はいない。保険代理店で保険を買うとき、保険会社の信用ではなく、代理店主の推薦を買うのだ。富裕層マーケットは、実は銀行という「場」で推薦エンジンに身をゆだねる快適さを買っているといってもいい。いわゆる来店型代理店も、推薦エンジンの類型だ。こうしてみてくると、金融商品の販売チャネルの圧倒的多数は推薦エンジン型だということがわかる。だから、保険商品などのウェブサイト作りこみにやたら手を入れて金をかけて豪華で「凄い」サイトで客を誘引しようというのは、客が「検索エンジン」の使い手だと誤解しているのである。サイトをサーフィンしたりなんとなく探し物をしている人は「検索エンジン」の手錬（てだれ）ではないのだから、もともと見るだけで、それで売れるわけがない。勘違いで、こういうサイトを無駄に開いている保険会社もありますね。そして、さきほど言った推薦エンジンの心理的構造からすると、そこには必然的に複数の（ないし多数の）将来選択肢、つまり品揃えが絶対必要条件になることがわかる。品揃えは、やはり客寄せに必要な道具だてだ。専門家（らしき人）が多数の中から選択した、という様式美が推薦エンジンの本質だ。ところが、品揃えは在庫を意味するのでコストラインは高い。だから専門家が一点買いした一品銘柄だけを推奨エンジンとして推薦する、というモデルは、存在しうる。サンドラッグなどはそうだね。違うか？そうだとすると、金融商品の「新商品」の販売チャネルにダイレクトやネット販売を考えるとき、こういう「専門家の一点買い銘柄品」になりすます戦略は、あり、だと思う。それが専門家経由によるが故の、安上がりのブランド補完性となる。私は、これこそが金融商品というむつかしくも複雑な商品であって原価や効果の説明しにくい商品を扱うときの極意ではないかとひそかに思っている。金融も自由化されたが、マーケティングはまだまだ幼稚で、分析も未熟だと思う。

  2007.06.04

• 第１６話　「デジタル」　と　「アナログ」　について

  日記という以上、毎日つけないといけない、のではないか、という脅迫ないし強迫観念が沸くのだが、もともと日記は日記帳という意味もあり毎日の取引を発生順に記録した帳簿の意味であった。そうだとすると仕分帳という会計帳簿だから、毎日の商いの記録としてつけないとカネ勘定があわないことになる、だから、毎日つけるのね。でも、このブログはカネ勘定でないから、毎日は、書かない。それで、日記というタイトルをつけたけれど、業務日誌ではなく、第○○話ということにして、日々感じたことを書き溜めることにした。感じたことといっても、毎日のニュースや出来事に接して、日々問題解決を迫られるビジネスパーソンにとって参考となるような、なぜそうなるのか、原因仮説をたてて自分の頭で思考するという「仮説思考」を実戦してみようという試みの日記です。実はよくあるのだが、網羅的に情報を集めても意味はない。論文をwikipediaのコピー・ペーストで書いたため、クラスのほとんどの人の回答が同じ文章で同じ様にまちがっていた（wikipediaの記載が適切でなかったので）という報告をどなたかがしていたが、それは論外として、とにかくよくデータをデジタルで大量に集める人がいる。何でもすぐ、ＰＣで「検索」する人がいる。私が講演していて最近気づくのだが、座って人の話を聞いているそばから、その話にでてくる情報を携帯のハンドヘルドのＰＣで検索始める人さえいる。そういう人はいきなりＰＣを開いて情報収集にとりかかる、という所作に慣れきっているデジタル人間なのだろう。でも何でもたくさん情報を集めれば物事の分析や回答が出るわけではない。人から話を聞く、本を読む、新聞に目を通す、という日常の所作、手間のかかる作業をして、時間をかけて、自分だけの（限られている）情報を増やし、その中で自分の頭で考え出した問題解決や思考方法こそ、本当はひらめきと面白さに満ちたワンダーワールドを創出することができるのだ。そして始めて説得力がでてくる。まず自分が自分を説得できなければ意味はない。私はそう思っている。眼前の情報だけでも意味のある分析はできるし、それで結論を出して自分で動いて答えがでればそれで、いい。と、私は思う。「仮説思考」とは、ひらめき、つまり情報が少ない段階から常に問題の全体像や結論を導き出してみるという思考習慣のことだ。それはスピードのある分析で、すぐ書き留めておきたいと思うので、だから、「日記」に書くのでもいいか。すぐ、毎秒でも書いておきたいし、メモに残しておきたい。だから「日記」という「秒記」にしたい、というか病気かしらね。でもこの数日のようにどうしても時間がない場合、書く作業というのはむつかしいね。でも数日たつと忘れてしまう。忘れないうちに書いておこう。「デジタル」の意味とは、白黒、スイッチのオンオフ（電気信号で１か２か）、非連続、時計表示が数字、現代的、というイメージで、「アナログ」の意味とは、あいまい、連続、時計表示が文字盤、非現代的、直感的、曖昧さを残す、包容力あり、古臭い　ということか。Wikipediaによると、デジタルは、インプットオーバーすると計算しないという余白なしのイメージで、アナログは、２値的でなく多値的であるものとされ、デジタル＝新しさ、アナログ＝古さ　というのは「誤用」であり（なるほど！）、正しくは、「アナクロ」（anackronisam）という。と書いてあるのは、笑える。面白いね。Wikipediaも見上げた百科事典である。これを引用してほしい。最近のトレンドとして「高級時計」があり、とくにスイス勢のものが凄くて、銀座で一本のビル全体が違うブランドを並べる（同じグループだが階ごとにブランドめぐりができるという）ビルができたと１２チャンネルのＷＢＳで報道されていたし、雑誌にも特集が組まれ、なんとナショナルジオグラフィックの別冊にもなっているくらいの過熱ぶりだ。そこで見てみると、１００万円とか８００万円とか、超高級時計に「デジタル」つまり数字が現れるのは、皆無ですね。必ず、アナログで、場合によってはクオーツでデジタル発振なのにわざと針の動きを滑らかにして、連続にグーッと動くように作られているものさえ、存在する。でもいくらアナログでも、日付はデジタルというか日捲り方式で、それがアナログのものは一個もない。日付もアナログという本物志向の最高級時計がでてきたら、凄いというかデザイン的にどうまとめるのか凄く興味がある。どうかそこまでやって欲しいと思う。針の繊細な動きと文字盤デザインが美しいアナログなのに、窓があいてそこの日付がデジタル表示というのは１００万以上の時計では、ちょっと詐欺犯罪的というかデリカシーに欠けると、私は思うのだが。事業計画や財務計画でも、必ず右肩あがりの一次方程式というか線形理論で解かれているのは実に不思議だ。そんなはずはないのに。そして、計画時点で、それを上ブレ、下ブレさせる因子が何かも本当はわかっているのだから、多因子分析できないのかな？ここのあたり、知見を広げる動きがあってもいいはずだが、寡聞にして知らない。しかし、いくらそのように精緻に分析してみても、所詮は予測値であるからデジタルに表現されていればよく、それに至るまでのアナログの道のりは、別途ナラティブというか説明文（作文）に表現されるということなのでしょう。そういう経営戦略にそった連続的なアナログの、かつ、じぐざくの道のりをデジタル表示できるような（それですぐシミュレーションできるような）事業計画ソフトがない、だろうか？それができると、起業の方向性も説得力あふれるものになるだろうし、計画に実現性があるかどうか、どこに問題があるかがデジタルにもアナログにも目に見えるものになるだろうと思うのだ。事業計画の問題性ばかりＭＢＡではいうけれど、それをなんとかする努力も同時に必要だろうと思う。

  2007.06.04

• 「起業家のつく　ウソ」　について

  昔「マネーの虎」というTV番組があったが、それでは確かそんなに厳密な事業計画などなしに、起業家が何をしたいのかをインタビューするだけで、有名投資家が現金を投げ出すように投資するというパフォーマンスが見ものだったものだ。Harvard Bisiness Reviewの記事のなかにシリコンバレーの投資銀行家のThe top 10 lies of entrepreneursという読み物がある。あまりに皮肉っぽくてついていけない部分、たとえば秘密保持契約を最初に結ぶよう起業家が要求するのは「見当はずれ」で、投資家は同じような事業計画をいくつも見ることが多いのだから別の会社に投資することになったらこういう契約に署名していると足かせになるからそんなことはしないなどといっているところなど、不見識もはなはだしいというより、誤った見方をしているところがある。とはいえ、自社の成長予測のいい加減性だとか、市場の大きさを示す数字が誇張でないかどうか、など事業計画にまつわる「想像力」が問題だという指摘あたりは本当でしょうね。大体において、右肩上がりの成長曲線で計算した値を財務目標値に掲げるのが普通だが、本当はそんなことがありえないことは投資家も知っている。新しい会社の１年以上の期間にわたる財務計画や月次予算など想像力というか創造したものであって、売上予測さえわからない点が多すぎるのだ。その到達目標に達するまでの資本コストや時間軸を正確に予定できる起業家社長は、いないといっていい。だから、できあがった綺麗な事業計画や財務数値は、初めから投資家は軽視している。こういうお互いわかっていやっている想像上の数字操作が、不正確さの悪循環を作り出す。すなわち、これで投資を引き釣り出した起業家は、「夢」と「目的」を語る一方、身近な「目標」を語らなくなり、結果と目標が乖離しても、責任を感じなくなる。予算自体の価値が起業家の中で失せていくのだ。予算が期の着地目標にいかに近似し正確に３ヵ月後を予測できるか、今の施策の結果が３ヵ月後に実現するのだからそれが目標値にいかに正確にマッチするか、という帰結の正確性に対する価値観がどれだけgo-ing concernにとって重要かということが忘れられ、どこかに雲散霧消してしまう。これは危険なことだ。なぜなら、こうすればこうなるというシナリオを作りそれをなぞり、修正するという行動パタンをとらなくてもいい、大丈夫ということだから、そもそも最初の事業計画とその後の予算計画と、どれも実現性に乏しい、ウソをウソと感じない土壌ができあがってしまうことを意味するからだ。とくに、大型契約ができる、だとか、有名企業と提携ができ信用補完されて新チャネルができる、だとか、パートナーシップ契約ができる、だとか、商品が公的な枠組み作りのなかに組み込まれるので自動的に売れていく仕組みづくりができる、だとか、こういうたぐいの話をもとに、事業計画や予算を作ることが、よく、ある。あのですね。相手企業は、提携だとか、将来のシナジー期待の大型契約だとか、そういうオッファーを断定的に断ることは、まずしない。うまく行く見込みがあるから大魚を逃したくないので、「素晴らしいアイディアですね。商品もきっと売れますよ。今後ともよろしくお願いします。」と、必ず、言うのである。でも実際には連絡はない。いろいろの障害があったり危険があることを知っていても面と向かってネガティブ情報を出したりはしない。ところが、起業家側が、これをまともに受けると「話は進んでいる」ということになり詰めが甘いというか誤解というか、要は間違った結論を当てにして行動計画や予算、事業計画を作ってしまうのだ。大きな話や商談は、成立してから数字を当てこまなければならない。だのに、現実の予算はそれをもとに作ってしまう。危ないなと思いつつも、数字や予算を作ってしまうのだ。まず間違いなく罪の意識などない。そうするしかないからしているだけだ。起業家のつくウソは、事業開始後の社長や営業責任者のつくウソでもある。でも、間違っていたらすぐ修正して正確な着地点予測とする、という行動様式がある限り、ウソはウソではない。しかしながら、傲慢にそれをそうとは認めなかったり、致命的な欠陥や問題点を覆い隠して、あいまいな投資家からカネを巻き上げたりする意識があったら、それは「ウソ」になる。一旦出資したら、自分のカネだ、出資した以上丸損してもしかたない、とうそぶくことがあったとしたら、それは起業家として成功することは、ないだろう。投資家との信頼関係が失われるからである。結局は、ヒトの要素、起業家自身と内部の社内協力者や外部投資家を含め、それらのヒトが相互に信頼できるかどうかが経営の全てだと、私は、思う。

  2007.05.27

• 「監査役監査報告」について

  最近、関係会社の「監査役会報告」を執筆した。監査役の仕事は、取締役の取締り、つまり監督である。問題あれば訴訟において会社を代表するから本質的に取締役と仲がいいはずがない。そういうように会社法では機関設計されている。その意味で、思うのは、「会社の顧問弁護士との関係」である。顧問弁護士は、そもそも顧問料を会社からいただくので、執行部の代弁者あるいは保護者という意味を担っている。だから、日頃、契約だとか不祥事故だとか、個人情報保護だとか、取締役会の運営だとか株主対策とか、あらゆる日常のビジネス作法について、コンサルをすることになる。が、監査役との関係はどうなるのだろうか？監査役から顧問弁護士にあてて、実は折り入って相談がある、取締役がこういうことをしていてどうかと思う、問題あると思うのだが、法律的なアドバイスをしてくれと頼まれたとき、どうするのだろう。当の取締役（会）から委任を受けているという理解が強い場合は、弁護士の利益相反になる、だから、それを行ってアドバイスを断るかもしれない。しかし、会社から業務適正さ確保のために委任をうけているのだという理解が強ければ、監査役の味方になって会社のためにアドバイスを送るべきだともいえる。顧問弁護士の職業倫理として、どちらなのか？非常に興味がある。もし、後者だとすると、本当は問題が大きい。監査役は、独自に監査役の監査を実効性あるものにするために、監査役顧問弁護士の採用を会社に求めることができる（はずである。）というのは、会社法上は取締役会で、内部統制体制実施の決議をする義務があり、その強化施策のカナメが監査役監査の実行性（実効性）確保であり、専任（独立）補助者をあてがうとかの義務を明言するのが普通であるからだ。だから、監査役がその顧問弁護士選任依頼したら、反対することは、できない（具体的には費用を負担するということ）。そして、逆に、監査役は、その責任を十分に全うするために監査役補助顧問弁護士を委任しないと、まずいことにさえなるのだ。このあたりの按配にまで触れた、優れて実務問題意識あふれる論稿は残念ながら、まずみあたらない。法律家諸氏のご意見を伺いたいものである。さらに、決算取締役会で、総会にかける財務諸表の承認をするが、その前の会計事務所と監査役との関係にも疑問がある。監査法人が監査役宛に出した会計監査報告をチェックする。そして常勤監査役は特定監査役として、監査役会を代表して特定取締役である代表取締役社長に監査役会監査報告を提出する。無限定適正意見とか限定適正だとか、問題指摘意見だとか、会計監査人レベルと監査役会監査報告レベルとで２重に意見が示されることになる。監査役は、会計監査人の出した意見の妥当性の評価（監査）をしなくてはいけない。そこで、会計監査人は自分たちがいかに能力があり、経験が深く、トレーニングを積んできているかをアピールする文書（名称はどうでもいいのだが、監査経過報告だとか、いろいろのタイトルがつけられる結構ぶあつい文書だ。）も一緒に監査役に提出するのが通例だ。監査役は、会計監査人・会計士の監査方法や監査結果だけでなく、監査法人じしんの内部統制システムに問題がないかどうか、それに問題があればその旨を指摘しなければならなくなった。言い換えると会社法上の財務諸表監査では、監査役が会計士の職務執行を監査しなければならないのだ。これって、普通の監査役にできる相談ですか？私はこの監査役監査の本質がプロセスチェックであると思っているのでそれには業務を知悉しているので十分自信があるが、一般的にオールマイティだとはいえないし、私も同僚の監査役のひとりがたまたま公認会計士であるので、監査役間の業務分担として彼の力と知識を最大限使わせてもらってなんとか職責を全うしているのが実情だ。つまり、監査役が会計士の職務執行を監査する義務があるというのなら、「セカンド・オピニオン」を求める手続的保証があってよい、つまり監査役委任（顧問）公認会計士の選任ができて当然ではないか？そういう補助がないのに、結果だけを求めるのは、実効性がなく、とうてい正当・適正なプロセスとはいえないだろう。まして、監査役（会）が会計監査法人から報告を受けたその直後に同様の適正意見を出したとすれば、到底十分が監査役同士の議論等がなされたのかどうか、監査法人からの報告会で十分質問したのかどうか、が問われることになる。それを十分行い、その結果を監査役会議事録に残し、そして適正かどうかの意見書を監査役会監査報告として書き上げるのが監査役の法的責任回避のために必要なことである。監査役は、こうした会計監査だけでなく、取締役の経営や業務執行の合理性も、事業報告書のチェックの中で監査する。これも日常の会社動向に詳しくないとわからないことだ。その意味で常勤監査役の役割は大きい。常勤監査役は、常に会社動向とリスク動向に注目し、メール等の転送を通じて他の社外監査役にも常日頃から動向情報や知識を供給すべきだろう。社外監査役も独立性をもっているからである。これだけの能力ある監査役を選任することはたいへんだ。監査役報酬もはずまなくてはならない。こうしてみてくると、監査役はとても隠居仕事の閑査役ではない。監査役の権限はかくも強化され責任も重くなった。監査役がこのように弁護士や会計士の補助者を得て実効的に実務をこなしたら、経営者に対するたいへんに強力な牽制機能を発揮できることになる。そしてそれを期待されている。もっといえば、もし、監査役が会計監査人と連携すると、企業の実効支配さえ可能となる。経営者は監査役を、いろいろの意味で、大切にしなければならないのである。こういうことが、会社法の教科書や雑誌には書いてないよね。でもこれはたいへん重要なことなのです。ところで、監査役は監査法人の監査報酬について同意権をもっている。監査法人の選任についても監査役会は、同意権があり、それを取締役会に報告する。会計監査人を選任する手続はこのように、透明だ。しかし、しかしですよ、会計監査を行う監査法人が、当該監査を受ける企業から監査報酬を受けることは利益相反構造そのものといわれてもしかたない。監査役会が監査法人に報酬を出すというのならわかる。だから、年次で株主総会で監査報酬の大枠を定めそれをどこの監査法人を選択して支出するかは監査役に委任するという構造こそがのぞましい。立法論としていかがですか？こういう利益相反性の問題は、最近さまざまな局面で問題視され始めている。大体において証券取引所が上場審査すること自体、利益相反でしょう？今日も東証の西室さんが反省の弁をいっていたけれど、そもそも、業界団体とその構成者との関係こそ、法規制のメルティング（溶解）現象の原因であり、この本質的癒着性あるいはいい加減性こそ、法学者がもっと声を上げて糾弾ないし構造修正を迫るべき課題だと思料するが、いかがなもんでしょうか。

  2007.05.26

• 「内部統制」について

  内部統制は、いまや日経ビジネス今週号にも特集が組まれる「大衆的問題事態」になっている。いわく「すくむ経営」（組織蝕むリスク過敏症候群）。これは法律上の要請にまでなっていることからどの程度までやればいいのか、よくわからんというところが問題の根本ではないか、つまり内部統制にモチベーションがわかないということ、心理的障害があるということでしょう。およそモチベーション・やる気には、（１）目標の魅力×（２）達成可能性×（３）危機感・恐怖心　という方程式があてはまるとすると、（１）（２）がなくて（３）だけという感じだからだろう。（２）などは、膨大な文書化作業がまっていて日常作業と同時に為すには無理がありすぎる。結局、外部コンサルと入れることになるが、そうなると外部コンサル徹底依存体制が心理的に形成され、その結果、言われたことに対する批判的な取り入れさえできなくなる無批判症候群がはびこり、達成しようとする内部統制のレベル・方法・範囲が第三者依存となり、オーナーシップが失われるという根本的無意味さを惹起するのだ。これは由々しき事態で、コンサルの餌食になるといってもよい。オーナーシップがないから文書化成果物のレベルにバラツキが生じ部署間の統一的なレベルが保てない。だから「経営の品質」強化にならない。あるべき姿を書き出してしまい現実性がない。文書化テストが終わっても実質的な内部統制の強化につながっていない　とか、改善策（再文書化、再定義）のロードマップが書かれていない、とかの事態となる。これでは本末転倒なのだが、要はトップの認識が甘いとこうなるということ。

  2007.05.25

• 「敵対的M&A」について

  最近は、スティールのブルドックソース、ダヴィンチのテーオーシー、ホヤのペンタックスなど立て続けに敵対的M&Aが起こっている。でもこれらはみな企業の株のマジョリティを持つことでその株式から高いリターンを得ることを目的にしているから、いわゆるファイナンシャルバイヤーなんだろうけれど、グリーンメーラーとどう違うのよと言われるとあまり区別つかない。これ、レピュテーションリスクが大きすぎて普通はやらないのだが、敵対的買収の一番の問題は、そこにあるのではなく、その場合、事前のDDが全くできないこと（敵対的なので当然だが）、だから一般開示情報だけで勝負して力づくで買い取るのだからいい加減な評価で買収にとりかかるようなものだということだと、私には思える。それでもやるというのは、そういう買収を可とするその企業の株主がいるということ。たとえばファンド。少し前の王子製紙と北越製紙は、これと違っていた。Strategic バイヤーとして、自社の事業戦略上競合相手の取り込みを図り、相手消去による競争ポジションの確保を狙ったものであるから、まことにわかり易かった。力づくで北越製紙の生産技術・能力取得による国際的生き残り戦略だったといえる。なのに、でも途中で三菱商事がホワイトナイトで出てきたり地元企業の反対なんかがあってTOB負けてしまった。でも、でもですよ、王子がこの商事への第三者割当増資差止請求して裁判所に訴えたらどうだったのだろう。どうせやるのなら、司法判断を仰いだらよかったのではないだろうか。やはり日本人は戦略を立てることができるようになっても戦略遂行の決心の場面で、最後で腰砕けになる。敵対的だと人（従業員）がやめてしまうというけれど、実際はそんなに簡単には人はやめないもんです。家族がいるから。懐柔もするし。日本が本当に戦略家をもてるかどうかの試金石は、敵対的買収ができるかどうか、でしょうね。ロジックを貫くことができるかどうかでしょうね。社長はサラリーマンだとすると、これは無理だね。社長が」戦略家で起業家」だと、できる、と思う。ただし、買収後の経営がうまくいくかどうかと買収自体を成功させるのとは違うけれどね。ところで、戦略家で起業家というのは、可能だと思いますね。１０億資本金で、起業している場合、トップラインの売上が伸びないとき、打つ手のひとつは、M&Aだと思う。国内での横展開ではありません。上下展開でもありません。つまり、他の新興マーケットの同業他社を合併（買収）しますね。このメリットは大きい。勘がいい人にはこれがどれだけメリットがあるか、すぐわかるはず。こういうのは敵対的M&Aの問題点もほとんどないといっていいしね。三角合併で外資に呑まれるのは日本人は嫌いだけど、逆はいいんでしょ。日本のマスコミにとっては。（実に非論理的と思うが。）M&Aのメリットは大きいから、こういうプロジェクトは今後ちょっと考えてみたいと思っています。

  2007.05.24

• 「ビッグバン１０年」について

  今日の日経朝刊に日本版ビッグバンが１９９７年に始まって１０年、という記事があった。free， fair， globalという橋本総理の標語がなつかしい。それで、最近の保険金不払問題で、fairとはいえない現象が絶え間なく続いているし、海外取引は日系企業とだけで、現地外国企業との取引はリスクが大きいと敬遠し、デリバティブにも及び腰。というわけで、上場企業の時価総額が他のアジア諸国の合計値に抜かれたとか、優秀な米バンカーは香港に行くとか、進出している外国証券はシンガポールの方が多いとか、アジアの金融ゲートウェイとしての地位はシンガポールに奪われているといってます。そういえば、それが不満で、日本橋地区に外資系金融会社を誘致し、外資系金融に勤める人の住居だとか教育環境を高めるプロジェクトが始まったという報道も昨日あって、びっくりしましたね。何を今さらとおもいませんかね。そんなことしなくても十分満足の生活は送っているけどね。彼らは。でも、でもね、三井住友海上という保険会社は、むかしのCGU（「アヴィバ」という名称に変更）という英国コンポジット生損保兼営巨大保険会社のアジア現地法人網をまとめて５００億円で買い取って、今や東京海上日動よりもアジアのプレゼンスは大きくなって、そのかなり多くは日系と全く無関係の現地ないし英国企業関連ビジネスですよ。これでアジアの現地スタッフ数がなんと４６００人、マレーシアでは第２位、フィリピンで第３位、シンガポールで第３位、香港で第４位ですよ。アジアでの売上９０６億円でアジアでの純利益８０億円。これを考えてほしい。この買収は失敗するとかいろいろの雑音が当時あったのを私は知っているし、この争奪戦の一部を身をもって知る身としては、これは日本人も「戦略」を考える人がでてきているな、という印象を強くもっていますね。戦略家がでてきているんですよ。確実に。今までの日本の大企業にはこういう発想を実現する人はいなかったのは確か。ところで、今や日本の上場企業の純利益総額の３０％は「海外源泉」だと知ってました？日本企業の海外での起業やM&Aが多くなっているからです。そうだとすると、円高の議論でどちらが得かとか、ビッグバン１０年の日本の金融マーケットの閉鎖性だとか外国人に住みやすい日本橋金融村の建設だとか、ほとんど「アホか」と思いません？ご自分がグローバルになって自分が世界を動かすないし世界各地から儲ける、という発想がありさえすれば、こんなことは話題にさえならない、と私には思えます。

  2007.05.23

• 「ジェラルド・カーチス教授の話」

  六本木ヒルズライブラリートークでコロンビア大学教授ジェラルドカーチス氏の話を聞くことになった。本当は予定があったのであるが、事務局の熊田さんにお会いしたところ席があいているので大丈夫というので出席した。タイトルは「安部首相と日本の外交＝日本人にとっての外交とは」という切り口で５０人ぐらいの出席者。面白かったのは、日本には外交戦略がない、という話で、むしろキッシンジャーは最近「日本は外交戦略がみえないので隠しているのでは？」という質問が彼にあってそれに対して日本は隠しているのではなく、もともと「ないんだよ！」といってあげたというエピソード。それで、「時流」「世界の大勢」「世界の孤児」「国際貢献」という日本語に対応する「英語はない」という指摘があった。これは本当だな！これはビジネスにも同じような用語用法がまさしくあてはまる。時流にのって新規ビジネスを考えるだとか、社会貢献になる仕事だとかよく言っているし、「場」が読めてないとか、取締役会の「空気」で方向が決まるとか、よく言われるし、本当なのであるが、その英語がない。これを直訳でもしたら、バカかと思われるのは確か。ある目的があってそれを目指して結果をシナリオ化するということ、つまり「何をどうすればどうなるということ」を構造的な可視感覚といってもいいが、それを戦略というでしょう。それがないのね。それで、日本外交もreactiveになる対応型外交というのは正しい。Reactiveということは、passiveにもaggressiveにも両方なりうるという指摘もそのとおり。対応しているだけで、そのまま受身であるかと思えば、いきなり攻撃的に反応することもあるのだから。戦略ないから、反応の方向性がないわけ。そのとおりですな。と思った。そこまではいいのだが、今の外交状況からは、いろいろEUでも英国のブラウン、フランスのサルコジ、ドイツのメルケルというように新指導者も出てきていて、アメリカブッシュもレイムダック化しているときに、日本がリーダシップをもって「強く出る」と危険だという発言があった。安倍首相の訪米時の慰安婦問題での強気の無視（歴史的な事実と違うという）発言で「あやまりません！」とやったのは外交的には大失敗だったというのだ。議論しているからここでは話せませんといえばそれで済んだ話だという。リーダーにとっては、わざを論点を外すことも時には必要だというのだ。これは少し意外な感じがした。間違った引用があるのならそれを正確に認識を正すことは意味があると思うのだが。では、それをどういうべきだったのだろう。私には、論点を外すのはやはりおかしい。そうではなくて、「事実がどうなっているのか調べさせているのでそこから議論しなおしたらどうか？」という言い方がよかったのではないか。論点をずらす手法はリーダーとしてもどうかと思う。それをいうなら、北朝鮮問題で拉致問題が感情的には大問題だが、そのことよりも、ミサイルで一番攻撃を受ける立場にある日本が最も危険性が高いからミサイルや核問題こそ最優先とするのが「戦略的」だといえるはず。それなのに、論点はずしをして同情をひくかひかないかという拉致問題に固執するのは戦略的とはいえないだろう。戦略を語れないのなら、リーダーの資格はない。

  2007.05.20

• 「選択と集中」について

  選択と集中の戦略は、広い事業を整理して最も効率のよい事業や本業に経営資源を集中して事業リストラをしようということ。そこで、個人が起業するとき、この選択と集中のロジックが使えると思いますか？同じ起業でもいくらでも起業ネタを探してそれを比較考量してこれだ！と決めて疾走する若手の起業家なら、選択と集中ですね。しかし、５０歳を過ぎての起業の場合、リストラされて起業せざるをえない人、定年になったから起業してやるという人にとっては、選択と集中は無理ですね。そんな余裕はない。むしろ自分がやってきたことだとか得意（特異）分野だとか人脈だとかを幅広く網を広げて、クライアントを探すという道がもっとも現実的です。だから、そのキーワードは、広く、できるだけ広くです。私もこの１年それで自分の枠を広げてきました。金融・保険の本来の分野だけでなく、人事や組織分析、メンタルヘルス、その他いろいろ手当たり次第とはいわないけれど、これは可能性あるなというものは全て。どうしてかといえば、起業前の企業人だったころ、毎日生起するさまざまの「問題」は実に幅広く、信じられないくらいさまざまな課題が突きつけられていて、それを解決してきた自信があるから、起業もそのような幅広さを全く怖れず、自信をもって動けたからです。その意味で、かつてどのような事態にも動ぜず解決した身のこなしを起業後もネタにしたといっていいでしょう。実際そういう一人親方というか５０歳代６０歳代の一人社長は意外と多いです。そしてそういう方々とのネットワークも気が合う限り十分機能します。お互いさまですから。しかし、最近、これを成長軌道にのせるには、やはり、これは！と思うものにフォーカスしていくほうが効率がいいことに気がつきました。５０歳代起業もそこそこを狙うのでなく、急激な成長を狙うなら選択と集中が必要なことに気がつきました。見極めるという決断が必要なんですね。「見極める」ということは「見切る」ということもあるということです。その反面これは！というものにはリーン（傾倒）していくことが一番効率よく成長できるとおもうようになりました。

  2007.05.17

• 起業から一年経って。

  いくつもの仕事を平行してすることを会社時代は平気でやってきたが、それがかえって「やりすぎ」となり人の不審や嫉妬を買うことになる。しかし、会社を離れ個人で会社を逆に興していけば複数の仕事はむしろ当然となり、無限連鎖で人の広がりの楽しさと生活の糧の安定化を同時達成できる。これは素晴らしいことだ。24時間が足らない。 (2007.05.13 23:59:34)

  2007.05.13

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