長峰ブログ

2018/09/10(月)19:04

御巣鷹山編

書評(272)

山崎豊子氏の「沈まぬ太陽」(御巣鷹山編)を読んだ。「沈まぬ太陽」は 5巻からなる。1巻、2巻が「アフリカ篇」で、3巻が「御巣鷹山編」だ。 4巻、5巻は「会長室編」となっている。映画化されたのはアフリカ篇だ。 ​沈まぬ太陽(3(御巣鷹山篇)) (新潮文庫) [ 山崎豊子 ]​ この「御巣鷹山編」は、主人公の恩地が労働組合活動で懲罰人事により、 アフリカへ送られた苦闘の末、東京に呼び戻されていた時の出来事だ。 出社しても新聞を読み、かかってくる電話を取るだけの「閑離職」の時 に起こった事故として扱われている。 もちろん、あのJAL123便の御巣鷹山墜落事故を詳細に調べ、小説化 したもので、一部、遺族は本名で書かれている。JALはNAL(国民 航空)として書かれている。所沢にある東京航空交通管制部の場面から 物語は始まっている。 機長からの「トラブル、羽田へ戻りたい」という声から始まる。有名な ダッチロールの際、機内で何が起こっていたか。そして墜落後の遺体の 状況など目を覆いたくなる記述が続く。でもジャンボ機が山に落ち、 一瞬にして520人もの命が失われたのだ。想像を超える現実があった。 恩地は遺族のお世話係として奮闘するが、遺族にも様々な事情がある。 一度に子供夫婦と孫を失った遺族や、3人の娘を失った遺族、働き盛り の夫を失った未亡人…。一方で、国民航空の幹部やボーイング社の対応 など企業の論理も絡んで、一筋縄ではいかない物語。悲しみ、怒り、 そして絶望…。飛行機が落ちるということは、こういうことなんだと、 改めて思い知る。 でも、シートベルトが凶器になったかもしれないのに、いまだに何も 変わっていないのではないのか? 教訓は生かされているのだろうか?

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