トカトントン 2.1

2006/07/30(日)22:24

童夢 / 大友克洋

読書(416)

■本のサイズということに普段はあまりこだわらない方で、たとえそれが漫画でも、物語として面白ければ文庫本で読んだとしてもそんなに違和感は感じない。でもこの大友克洋の「童夢」はA5サイズよりも縮小されたもので読みたくはない。ちなみに私の持っているのは1983年8月18日第1刷とある。もう23年前なんだ。 ■できれば、さらに大きいA4サイズくらいで読んでみたい。ま、それはすごく読みづらいだろうけど。ページをめくるのも一苦労だろうな。でも、動画と比べてコミックを読むという行為は自分のペースとか、呼吸で次の一コマ一コマに進んでいける自由がある。特にこの作品の場合、新しくめくったページに現れる展開に驚くことが多くて、途中からは少し息をついてから、次のページに進むこともしばしばだ。 ■特に高山刑事がチョウさんの取り調べに部屋のドアを開けるのと同じタイミングで次のページを開くと一面に現れる悪夢があり、そこでしばらく放心、そしてドアを閉めるタイミングでめくる次のページではいつもと変わらぬ風景が描写される。こういった手法は特にコミックにおいて非常に有効で、後発の劇画にも大きな影響を与えたのではないか。 ■大きなサイズで読んでみたいもうひとつの理由は、エッちゃんとチョウさんの対決シーンで、浮遊するふたりのバックにそびえる団地群の詳細な描き込みをじっくりと鑑賞したいという想い。この感じは何かに似ていると思ったら、「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号の内部だった。ぜひ大画面で読んでみたいワンシーン。 ■非常に映画的表現が目につくわけだけど、実際には生身のカメラワークでは表しえないような縦横無尽なアングル、構図も多々あり、この、メディアならではの表現力にくらくらさせられる。もちろん団地の陥没だけでなく、人がはじける描写も実写では不可能だろう。 ■「ドサッ」「バン」「ゴト」「ピチッ」「ゴォ」「グシャ」「ペタッ」「バキン」などという擬音は今まで聞いたことのなかった音をたてていたし、見たことのないような風景、見開き画面いっぱいの老人のクローズアップなどめくるめく描写力に異次元の表現を見る思いだった。しかし、そんな表現第一主義みたいなこの作品にもストーリーと呼べるようなものがあって、それが破綻していないのは見事。そういえばエッちゃんは今年30才になるんじゃないだろうか。

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