2007/01/13(土)02:58
2006年のふり返り~読書編2
一昨日の続きです。
本で振り返る2006年。
前回は、海外の小説3冊でしたので、今回は国内作品から。
「チョコレートコスモス 」
著者: 恩田陸
出版社: 毎日新聞社
響子と飛鳥、ふたりの少女を通して描かれる演劇の世界。
伝説の名プロデューサーが新作を上演することになり、その主役をめぐって熾烈な闘いの火蓋が切って落とされます。
……なんて書くと、まさに、未完の大作である演劇大河ロマン少女マンガ「ガラスの仮面」の世界。
(未完の大作といっても、まだ美内すずえ先生は生きているのだけど)
世代から言っても、きっと作者の恩田陸も読んでいらっしゃるのでは。
演劇一家に生まれた響子は、すでに若手の中では実力を認められる存在。
姫川亜弓を彷彿とさせられるけど、彼女はそんなに孤高の女王様でもなく、読んでいて私の中のイメージは、松たか子。
彼女自身もまだまだ成長過程にあり、自分のあり方を模索中です。
対するずぶの素人だった飛鳥。
こちらは北島マヤ的存在ですが、やはりキャラクターはちょっと違います。
突然演劇の世界に飛び込んで、すぐさま周りの人間をうならせる才能を発揮するあたりは同じです。
二人を通して描かれるのは、演出方法論ともいえる芝居そのもの。
演劇界のどろどろした人間関係とか陰謀とかマスコミとか、そんなものは脇に置いといて、ひたすら舞台の上の世界が描かれます。
それがおもしろいかと問われれば、それがおもしろいのです、としか言えません。
何しろ、かつて「ガラスの仮面」にはまりにはまった(今もマンガの完結を望んでますが)身です。
難しいお題を出された役者たちが舞台の上でどう動くのか、ということを詳細に描かれる小説に出会えたのですから、すごい僥倖です。
そして、緊迫のオーデションシーン、息もつかせぬ展開に手に汗握ります。
ひとつのお題に対して、役者の人数分その回答を用意して、それぞれにそれなりの説得力ある演出を見せ、その中でも秀でているものを光らせる、そんな作者の力量のすごさも感じさせられます。
私にとっては、恩田陸の小説の中ではこの作品がいちばん好きです。
小説としては、まだまだ序盤で終わってしまう物足りなさがあります。
なにしろ、新作上演までこぎつけずに、主役決定の段階で終わってしまうわけだし。
(これまた「紅天女」をなかなか上演してくれない「ガラスの仮面」と同じだ……)
しかし、その段階まではきっちり詰めてあり、それはそれで満足した気分で本を閉じることができるのです。
恩田陸の小説を読んで、すごくおもしろいのにいつも何かしら釈然としない思いをさせられることを考えれば、すっきりした読後感を得られたのだから、文句ありません。
できましたら、乞う、続編。
ちなみに私の恩田陸ベスト3
「チョコレート・コスモス」
「黒と茶の幻想」
「真夜中のピクニック」
……1冊だけの紹介だけで、ずいぶん書いてしまいました。
夏頃読んだ本のわりには、ちょっと力入りすぎでした。
続きはまた後日にします。