2007/12/16(日)09:36
猫魂
戦時中、母の実家で疎開生活をしていたとき、
一緒に住んでいた、義理の叔母が猫好きで、たくさんの猫を飼っていたが、
私にいたずらされるのを嫌って、
「猫をいじめたら猫魂(ねこだましい)が来て
おまえをさらっていくよ」と言った。
叔母は冷たい美人だったから、その冷たい大きな目が怖かった。
ある日、ちいちゃな可愛い赤ちゃん猫をだっこしていたら
黄色い水を吐いて死んでしまった。
私は自分が殺してしまったかと思い、それからは、毎日、
猫魂(ねこだましい)がわたしをさらいに来ると思って心配していた。
終戦になって父が復員してきて、夜中に初めて大きな父のいびきを聞いた。
それは、父が家にいる、初めての経験だったから、
私はまだ、豪傑いびきというものを知らなかった。
それは、猫魂がわたしをさらいに来た音かと思い、
急いで、掘りごたつの中に入って一晩中、
汗をだくだくかきながら、ふるえていた。
4才か、5才の時のことです。