読まなくてもいい話

2008/12/23(火)19:13

父の後ろ姿

父(10)

父の家に久しぶりに行った。 いつもは、ほとんど家にいたことも無い父がいる。 父は、茶の間で、テレビを観ていた。 私は驚いて、父の背中をじっと見た。 何故なら、 父の人生は、常に積極果敢に走り回っていて、 あまり家にいなかったばかりでなく たまに家にいても、書斎で何事かをしていたり、 来客を相手にいろんな構想をエネルギッシュに話しているのが 通常であって、 呑気にテレビの前に座っている姿を見ることは、その日まで、 一度もなかったのだ。 しばらくして、昔、父がお世話をした男の訪問があった。 母が茶の間に呼び、女3人がとり囲み、昔ばなしに花を咲かせたが、 父は一度も振り返らなかった。 人をみれば、すぐにでもしゃべりだして、人を惹きつけ、 魅了しないではおかない男だったのに、テレビを向いたっきりだった。 そして、極めつけは、私達がきゃっきゃっっきゃと笑い転げた時、 くるりと振り向き、「やかましいっ!」と言い放った。 それが、初めて私が体験した父の呆け始めの姿だった。 ああ、これがアルツハイマーなのかな?と、哀しく父の背中を見た。

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