2009/02/12(木)18:30
初めてのお酒
私が大学生になった時
両親は、東京の家はそのままにして、仕事の為、地方へ移った。
東京の我が家には、私とすぐ上の姉だけが残っていた。
お正月に、引っ越し先の家に帰省すると
仕事関係の人々のお年始で盛り上がっていた。
私は、お酒の席に挨拶ができるような女の子ではなかったので、
茶の間にいた。すると米屋の女主人が入ってきた。
この女性は、常に母をサポートしてくれている頼もしい女傑だった。
いつも私を可愛がってくれていた。
「お嬢さん、一緒に飲みましょうか?」と、どんと座った。
お酒の大好きな女傑は、一升瓶を前にしていた。
私と米屋の女主人は、湯飲み茶碗で飲んだ。
私は、まだ、お酒の味などは、何も知らなかったから、
いくらでも飲める気がした。ぜんぜん顔に出ない体質なのだ
「突然、泣きたくなるほどの感情がこみ上げてきた。
丁度、その頃、友人の恋人に横恋慕していた私は、
どうにもならない切なさが、酔うほどに噴出してきたのだ。
自分でも、信じられないのだが、苦しいほどの悲しみが襲いかかった。
大声で、わあわあ泣いていると、母が部屋に布団を敷いて寝かせてくれた。
枕元では、「申し訳ございません!私が悪いのです」と米屋の女主人が
平身低頭していた。
母は、濡れたタオルを私の額に当てて
「あら~~この子は、泣き上戸なのね~~」と呑気に言った。
私は全く、誰にも、叱られなかった。
でも、泣いたのは、あの時限りだ。
その後の50年間のお酒は常に楽しい。
人間は、ほんとうに悲しい時だけ、泣き上戸になるのかな?