江戸東京ぶらり旅

小劇場跡＜築地＞

築地魚市場，本願寺，小劇場

　築地魚市場，築地本願寺，朝日新聞本社，国立がんセンター，勝鬨橋で知られている築地ですが，もともと１６５７年の明暦の大火後に埋め立てられたところ，そのものずばり，海岸に「築いた土地」というのが地名の由来ですね。

　築地魚市場はもともと日本橋にあった魚河岸が，関東大震災後に移転してきたものです。日本橋の首都高速の下には日本橋魚河岸の碑がありますね。多くの人は場外市場で買い物をしますが，場内市場には美味しい店があると雑誌などに紹介され，近年はガイドブック片手に朝から人気の寿司屋に行列を作っている光景が見受けられます。この場内市場ではターレットという荷物を運ぶための乗り物が，我が物顔に走り回っています。場内の店は本来，魚市場で働く人たちが仕事を終えて朝飯を食べるところ，そして場内はこの人たちの仕事場なのですから，関係ないお客など邪魔な存在，ターレットにひかれても文句は言えませんよ。



　さて，晴海通り渡ると右手に築地本願寺があります。浅草にあったものが築地埋め立て後間もなくここへ移転たのですが，関東大震災で本殿が崩壊。東京帝大の伊東忠太さんによって設計された古代インド様式の本堂が１９３４年に完成。日本のお寺としては異様な感じを受けるスタイルですが，あのｈｉｄｅのお葬式が行われたのがここ。


　
　ｈｉｄｅは自宅マンションの寝室で首を吊った状態で婚約者によって発見されたそうです。その後，遺体は築地本願寺に安置されたのですが，これがワイドショーなどで取り上げられ，築地本願寺にはファンが殺到。３００人ほどの関係者で密葬が執り行われましたが，ファンが絶え間なく押し寄せ，疲労で倒れたり，中には後追い自殺をするファンまで出る始末。告別式はテレビで生中継，ＹＯＳＨＩＫＩの伴奏でＴＯＳＨＩがＸ　ＪＡＰＡＮの「Ｆｏｒｅｖｅｒ　Ｌｏｖｅ」を歌いました。お墓は神奈川県三浦市の三浦霊園。

さて，ここで最後にご紹介したいのは・・・築地本願寺から目の前の大通りを向こう側，つまり京橋築地小学校側へ渡ります。大通りの沿って築地本願寺交差点の次の路地を左折。右側に「築地小劇場跡」があります。築地小劇場は，１９２４年に小山内薫さんと土方与志さんが開いた日本初の新劇の劇場であり劇団だったのです。新劇とは，歌舞伎に代表される旧劇などを超え，ヨーロッパ流の近代的な演劇を目指す日本の演劇のことです。現在の文学座や俳優座もこの延長線上にあるのでしょうか。



　劇場は平屋の建物でしたが客席は５００席，天井は高く，可動式舞台と近代的照明装置。俳優の養成もしました。第1回公演はラインハルト・ゲーリングの「海戦」及びチェーホフの「白鳥の歌」，マゾオの「休みの日」。４年後に小山内さんは急逝，劇団は内部分裂，国からの統制などでついに解散，１９４５年の東京大空襲で建物は焼失しました。坪内逍遙さんをはじめ，こうした時代に先駆けて新しい物事に挑戦する，まさに「新しい地を築く」の進取の精神のおかげで私たちも現代を楽しんでいるのですね。