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江戸東京ぶらり旅

江戸東京ぶらり旅

目黒のサンマ

目黒のサンマ

 目黒といえばタケノコ,「タケノコは目黒に限る」のです。ところが目黒はサンマの方が有名になってしまいましたね。

 


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 本当は,目黒とサンマとは何の関係もありません。明治時代になってから落語の中で,世間知らずの殿様が登場。この松平出羽守が目黒へ遠出した折に農家で食べたサンマが実に旨かった。これを聞いた他の大名が家来にサンマを所望。「サンマって旨いんだってさ。是非食いたい」 ところが出てきたのは殿様の健康に配慮した脂や尾頭,骨を抜いてだしがらのようになったサンマ。翌日,ちっとも美味くないじゃないか,と松平出羽守に苦情を言ったところ,「ところで,そのサンマってどこで手に入れたの」と聞く。「房州直送の新鮮サンマですよ」との答えに,出羽守は「それはだめだ,サンマは目黒に限る」と説明。こんな話なのですが,飽くまで作り話。殿様がサンマごときの魚を知らないはずはない。


 でもこれが目黒のさんま祭にまで発展。「魚,魚,魚・・・」と魚ブームに火をつけ,消費拡大を狙おうという魂胆なのですが,実は目黒では2種類のさんま祭があります。

 一つは,目黒駅前商店街振興組合青年部の主催,品川区の誕生稲荷神社一帯で行われます。岩手県宮古市からさんまが届けられ,徳島神山町の「すだち」がこれに加わって,無料ゆえか多くの人で賑わいます。

 もう一つは,目黒区民まつりの出し物として田道広場公園を会場に行われます。こちらは宮古市に負けじと宮城県気仙沼市からさんまが大型トラックで運ばれ,大分のカボスがこれに加わります。こちらも無料で,やはりたくさんの都民が足を向けます。


 さて,魚の販路拡大の効果は如何ほど?

 私は秘かに安いときにサンマをたくさん購入,一尾ずつラップに包んで冷凍。食べたい日の朝に必要な数だけ冷蔵庫へ戻す。すると夕方にはほどほどに解凍されて,うまく焼けます。アツアツにレモンを搾って,ハフハフといいながら一気にいただきます。内臓部分は苦みがありますが,大人の味。めったに食べませんが,酒があれば内臓もいただきます。ああ,旨い。

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目黒のタケノコ

 筍や目黒の美人ありやなし(正岡子規)

 目黒で有名なのが実は「太く,柔らかく,おいしい」タケノコだったのです。江戸に孟宗竹が入ってきたのは18世紀の終わり頃。その後幕府御用達,江戸鉄砲洲の海運業者山路治郎兵衛が,三田にあった薩摩藩の中屋敷でタケノコをご馳走になり,その美味しさにびっくり。さっそく薩摩から取り寄せ,あるいは薩摩の中屋敷からもらい受け,(今は品川区の)戸越村の別荘近くで育て始めたのです。1789年のことでした。食材としてのタケノコ料理の開発をはじめ,販路拡大の努力などで次第に普及していったようです。



 タケノコはとりたてが一番美味い。刺身としても食べられるのですからね。時間が経つとえぐみが際だって美味しくなくなる。そのためにこれを取り去る方法を見いださなければならない。米ぬかを入れて一緒に茹でるとかね。産地直送が可能な目黒不動の門前では,タケノコの出る春から初夏にかけて,茶店で参詣人に新鮮なタケノコ料理を振る舞うなどしたので,参詣よりもタケノコ目的で目黒不動を訪れる人まで出てくるしまつ。目黒不動前の料亭角伊勢,内田屋,大黒屋などでは「名物筍飯」が人気を呼びました。最初に紹介した正岡子規ら多くの文人墨客も目黒のタケノコの味を楽しんだのですね。品川育ち,目黒のタケノコの大ブレークはこうして起きたのです。

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