ウィーンはここぢんまりとした,そして美しい街だ。
旧市街を囲むようにリンクと呼ばれる路面電車が,ちょうど山手線のように走っている。この一周が4kmなのだから,いかに可愛らしい街なのかわかるだろう。
このリンクに囲まれた中には王宮あり,街のシンボルであるシュテファン教会あり,オペラ座ありで,いづれもお散歩気分で,美しい広場や町並みを眺めながら歩いて行ける距離にある。
王宮の南側,リンクを南にまたいでという感じなのだが,似たような建物が対になって建っている広場がある。西側にある建物は自然史博物館だが,今日は東側の建物,美術史美術館に入ってみよう。
これが美術館の内部である。さすがハプスブルグ家と息をのむほどの豪華さだ。パリのルーブル美術館,マドリッドのプラド美術館,そしてこの美術史美術館,これがヨーロッパの三本の指に入る美術館なのだ。
ハプスブルグ家は政略結婚を繰り返し,フランドル,ネーデルランド,スペイン,イタリアと領土を拡張したのだが,それゆえ美術作品の中でもルーベンス,レンブラント,ラファエロ,フェルメールなど,喉から手が出そうな有名な絵をどっさりと確保することになったのだ。
ここにブルーゲルの作品だけを集めた部屋がある。私は,かつては絵画にはそれほど関心がなく,ブリューゲルなどと聞いても,それって誰?といった程度だった。曾野綾子の書いた「ブリューゲルの家族」を読んだことがあるが,そのときもさほど記憶には残らなかった。しかしウィーンに来て,この美術館でブリューゲルの作品を観ると,これがなかなかいいのですね。
下の写真は有名な「バベルの塔」である。勿論この塔は想像上のものであるが,古代バビロニア(バビロン)にあったとされ,ノアの洪水の後,人間が天国に届くような塔を作ろうとする。これに怒った神が「人間が神に近づくなど,とんでもないことだ」と,塔の建設を中止させる。こんな逸話なのでありますね。ローマのコロッセオがこの作品(塔)のアイデアのもとになっているとも言われているようですが。
作品は,フラッシュさえ灯さなければ写真は思う存分採り放題。太っ腹ですね。日本じゃ絶対にあり得ないことです。それに模写している人たちもいるのです。本物を模写できるのですから,これはもう最高の勉強になりますよ。業者が型に入れていくつも作ったであろう石膏像をスケッチする,などという気分も滅入りそうな日本の美術教育とは雲泥の差。羨ましい限りですね。