テーマ:今日の健康状態は?(10520)
カテゴリ:健康情報
魚油などに豊富に含まれるω3脂肪酸の積極的に摂取すべき栄養素として、広く認知されているが、残念ながら、がんリスク低減は望めないようだ。10種類を超えるがんに対する系統的レビューで明らかになったもので、詳細は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2006年1月25日号に報告された。
これまでの疫学研究では、ω3脂肪酸を多く摂取する人々は、ある種のがんを発症しにくいことが示唆されている。ω3脂肪酸の摂取が、がんの形成と増殖に影響を与えるという動物実験の結果もあった。米Southern California Evidence-Based Practice CenterのCatherine H. MacLean氏らは、前向きコホート研究を対象とする系統的レビューを行い、乳がん、大腸がん、肺がんなど10種を超えるがんの発症とω3摂取の関係を分析した。 その結果、65件の比較評価のうち55件は有意な結果を得ておらず、さらに、4件が有意なリスク上昇、6件が有意なリスク低下を報告しており、一貫した結果は得られていないことが明らかになった。したがって、ω3摂取によるがんリスク低減は望めないと考えられた。 著者らは、ω3脂肪酸のがん発症との関係を調べた発表済み、または、未発表のエビデンスを総合的に扱うため、各種データベースを利用して1966年から2005年10月までに発表された論文を検索、また、機能性食品業界の専門家に研究者から寄せられた手紙を基に未発表の研究も広く探した。 最終的に38論文を選び、がん発症率、がんの種類、患者の数と特徴、ω3脂肪酸摂取の詳細や研究方法の質に関するデータなどを抽出した。研究の質は様々だったという。 ω3脂肪酸摂取源は以下の6通りに分類した。 (1)ω3を豊富に含む食材である魚、(2)総ω3(食品から摂取可能なすべてのω3)、 (3)海産物由来のω3(海産物から摂取できるリノレン酸(ALA)、EPA、ドコサヘキサエン酸(DHA))、 (4)単独のALA、(5)EPA、(6)DHA。 38論文が対象としていたのは、7カ国の20コホート(対象者の総計は70万人超)で、観察期間は3-30年(観察人年は約300万人年)。対象疾患は、乳がん、大腸がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、上部気道・消化器がん(口腔、咽頭、食道、喉頭の扁平上皮がん)、膀胱がん。ω3摂取源ごとにカウントした評価件数は、計65件だった。これらの研究の均一性は低く、著者たちは、データをプールして解析することを断念した。 乳がんでは、6集団対象の8論文が11件の評価を行っていた。魚の摂取と乳がん発症の関係を調べた研究では1件が有意なリスク上昇を報告(摂取量が最大と最少のグループを比較した多変量調整済みリスク比は1.47)。一方、リスク減少という報告が3件(リスク比は0.68-0.72、干した魚を高頻度に食べる女性、海産物ω3摂取量の最高四分位群、ALA摂取の最高四分位群)。残りの7件は有意な関係を示していなかった。 大腸がんでは7集団を対象とする9論文、18件の研究について分析。1件でリスク減少(0.49)が示されたに留まり、17件は有意な結果を得ていなかった。 肺がんは、3集団、3論文、4件の研究がすべて魚の摂取と発症率との関係を評価していた(うち2論文は日本の研究)。発症率については、1件が有意なリスク上昇(3.0)、もう1件はリスク減少(0.32)を報告。死亡との関係を調べた日本の研究1件は、有意な関係を示していない。 リンパ腫(非ホジキン・リンパ腫)は、女性のみ2集団を対象とする2論文について分析。1件は魚の摂取、もう1件は海産物ω3摂取との関係を調べていたが、いずれも有意な結果は得ていない。 卵巣がんについては、2集団対象の2論文、4件の研究を分析。魚の摂取、DHA、EPA、ALAの摂取と発症率の関係は有意でなかった。 膵臓がんは、2集団、2論文、4件の研究について分析。一方の論文は、魚摂取、総ω3、ALA摂取、もう一方はALA摂取との関係を評価していたが。いずれも有意な関係を示せなかった。 前立腺がんは、5集団対象の7論文、10件の研究について分析。魚の摂取では、リスク減少(0.43)が1件あった。一方、ALA摂取が進行前立腺がんの発症リスクを上昇させる(1.98)と報告した研究が1件あったが、それら以外は有意な関係を示していない。 皮膚がん(基底細胞がん)の発症率との関係を調べた研究は、男性対象の1件のみ。リスク上昇(1.13)を報告している。 このほか、胃がんに関して日本で行われた1件、上部気道・消化器がん(口腔、咽頭、食道,、喉頭の扁平上皮がん)についてハワイの日系米国人を対象にした1件、および、膀胱がんについて、ハワイの日系米国人を対象とした1件の研究のいずれでも有意な関係は見られなかった。 65件の研究で、統計学的有意性を示せたのは10件(乳がん4件、大腸がん1件、肺がん2件、前立腺がん2件、皮膚がん1件)のみ、さらに、それらのうち4件がリスク上昇、6件がリスク低下と報告していた。多様な集団を対象とする広範な文献を調べても、ω3脂肪酸とがん発症の関係を示唆するエビデンスは得られなかったことから、著者たちは、食事からのω3摂取でがんが予防できるとは考えられない、と結論している。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.02.16 23:12:07
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