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2018.01.04
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カテゴリ:読書
 「残像に口紅を」、30年前出版の長編



出版社:中央公論社 (1995/4/18)



 本年最初の読了本。

 昨年12月に新聞下欄に出版社の広告が掲載されており、何故に30年前に出版された筒井康隆氏の本が今頃になって宣伝されているのだろうと不思議に思いながらも購入し、読み始めたもの。

 購入した本の帯に、「アメトーーク『本屋で読書芸人』で大反響、Amazonランキング第一位」と書かれていた。「アメトーーク」を知らなかったので、調べてみたら、テレビのお笑い番組で、芸人が本屋へ行き自身のお勧め本を紹介するというコーナーで、11月16日の放送でカズレーザーという芸人がこの本を紹介したということである。

 30年前のこの本を紹介するというのは異例のような気がするが、それにしてもこの放送で本がベストセラーになるというのも異例ではないか、テレビの影響は確かにそれほど大きいということであろう。

 内容であるが、筒井康隆氏の「実験小説」である。30年前頃、「虚人たち」や「大いなる助走」など、実験的でセンセーショナルな小説を発行していた時期の一冊である。当時、何冊かは著者のこの手の作品は読んでいたが、この小説は未読で今回初めて読んだもの。

 小説という虚構の中で、「音」が少しずつなくなっていき、その「音」を使った言葉がなくなるということが物語の中で続いていくのだが、一番最初に消える音が「あ」である。

「あ」が消えることによって、主人公である作家の妻が夫を呼ぶときに困る姿が秀逸である。つまり普段最初に声をかける「あなた」がなくなってしまった訳である。

 小説の文章の中で消えた「音」を使わずに進めるという長編小説であるが、著者の語彙力には驚くべきものがある。今更ながら「筒井康隆恐るべし」である。

 一般的には文庫の最後に「解説」があるが、この文庫版には「解説」の代わりに「調査報告」として「論文」が掲載されている。この本を題材に大学の卒業論文に取り組んだ学生とその指導教授による論考になっているが、あまりにも言語学的な論文なのできちんと読むのには抵抗があったが、日本語研究にはとても興味のある小説となったようである。

 何れにしても久しぶりにかつて愛読した筒井康隆氏の小説を読むきっかけができ、続いて近著の著者自身が「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長編」と宣言された「モナドの領域」を読んでみることとし、中古本を購入した。

 これもまた楽しみ。
 


 


(2018.01.04)









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最終更新日  2018.01.04 11:47:39
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