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テーマ:今の国会(9)
カテゴリ:読書
2018年7月20日、会期末を迎えた国会にて安倍内閣に対する不信任決議案が提出され、最終日のこの日、野党第一党の党首、枝野幸男氏が議案提出の趣旨説明を行った。提出側の党首が趣旨説明を行うこと自体珍しいことではないのだが、今回の枝野氏の演説は、その時間が2時間43分という記録に残る1972年以降最長の演説であったことが話題となった。 本書はその演説を忠実に書き起こしたものである。 この演説について少し疑問に思ったのは、国会とはいえ演説時間というのは時間制限がないということだ。これについては本書の解説にあったが、基本的に時間制限はないそうとのこと。ただ議長が制限できるとのことであるが、今回については事前の議運において「常識の範囲内」ということで具体的な時間制限を設けていなかったということである。 もう一つ解説を読んで知ったことだが、今回の演説を枝野氏はノー原稿で行ったそうである。本書に写真が掲載されていたが、箇条書きのメモに基づいて行ったということである。演説自体は聞いていないので、本書を読む限りだが、若干の言い間違いなどはあるものの内容は趣旨に基づき首尾一貫している。 具体的には不信任の理由7点について説明しているのであるが、議席にいる国会議員向けというよりも一般国民に向けたものとして理解できる内容であり、その姿勢も含めて注目に値する内容である。今の政治情勢を見て、安倍内閣を支持するかと問われれば私もさすがに支持するとは言えない。初期の期待感は薄れているし、経済環境も良くならない、各国との国際関係も自前でよくなっているものはないし、最近の行政の不祥事に至ってはまさに政府の怠慢、緊張感のなさが招いているといえるのではないか。また、今国会の審議について言えば、後ほど言及する枝野氏の理由7つのうち大半は賛成できるし、就中、参議院の議員定数を変えた公職選挙法改正案については自民党の党利党略であることは明白であると思う。 そうかといって、今の野党が政府を担えるかと問われれば、かつての民主党のような勢いもないし、実力もない。そうなると選択肢は、与党は自民党で仕方がないが、国会が野党と拮抗していることと、野党にしっかりした主張ができるリーダーが存在することが条件だと思うがどうだろうか。 その点、今回の枝野党首の演説は歯切れがよかった。 もちろん、全ての理由に賛成するわけではない。例えば、理由1の高度プロフェッショナル制度に関しては、いつまで労働時間だけを判断の尺度とすればよいのだろう。このままでは生産性は停滞していくだろうし、若者にとっての魅力ある職業選択の足かせになるのではないかと私は考えている。その点で、この問題に関する野党の主張には賛成できかねる。カジノ法案は何とも言えない。それ以外の理由に関しては概ね主張に賛成する。いまの安部政権の政権運営はそれくらい疑問符がつくのではないだろうか。 もちろん先に挙げたように枝野氏率いる立憲民主党が政権をいま担えるかと言えばそんなことはないだろう。ましてやその政権を先の選挙で推挙したのはまさに国民の審判なのである。 八方ふさがりのようではあるが、今回のような枝野氏の演説を多くの人が聞き、読み、自らの姿勢を一度振り返ることがあれば将来のことを少しでも変えることが可能であるかもしれない。 一人一人が自律することこそが現代を生きていくうえで大切なことであり、その自律とは現状の中の一つ一つのことを「自分ごと」として捉えていくことではないだろうか、と私は考える。 (2018.08.21) 目次 本書の刊行理由 あの演説はこのメモから生まれた ------------- 不信任決議案を提出した7つの理由 災害対応よりカジノ法案を優先した安倍政権は信任に値せず! 不信任の理由その1 高度プロフェッショナル制度の強行 不信任の理由その2 カジノ法案の強行 不信任の理由その3 アベノミクスの失敗 不信任の理由その4 政治と社会のモラルを低下させるモリカケ問題 不信任の理由その5 ごまかしだらけの答弁。そして民主主義を無視した強行採決 不信任の理由その6 行き詰まる外交と混乱する安全保障政策 不信任の理由その7 官僚システムの崩壊 未来と過去に対して謙虚な姿勢を ------------- 解説: 国会研究の視点から枝野演説を読む 千葉商科大学特別客員准教授・田中信一郎 働き方改革関連法案の審議にみる騙しと開き直りの常態化 法政大学教授・上西充 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.08.21 20:50:30
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