127082 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

そよ風のように☆

そよ風のように☆

君に恋した夏(6、残像)

店に足を踏み入れた瞬間、冷房の効いたひんやりとした風を受けた。

「お一人様ですか?」と店員が聞いてきので、
「後からもう一人来るんだ・・・」といいかけたところで、
奥で手招きしている男と目があった。

その男は、鈴木だった。

「よっ。悪いな。忙しいのに」
昨日澤谷と一緒に来た喫茶店で偶然にも同じテーブル。

今日はアイスコーヒーを頼んだ。

久しぶりに会った鈴木も、やっぱりモテてるんだろうなと思わせる雰囲気を漂わせている。


「どうしたんだ?お前が俺を呼び出すなんて珍しいな」
「ちょうど仕事の関係で近くを通ったからさ」
「フッ。昨日同じことを澤谷も言ってたよ。」
「あいつ。来たの?」
「ああ。」

「ふぅ~ん。なるほどね、そういう事か」
「何の話だ?」

「いやいや、こっちの話」
顔の前で手をひらひらさせていった。

「ところで、お前って今特定のやついるの?」

首を左右に振って
「いや、いない。俺がモテないのしってるだろ?」
それには鈴木は答えなかったので、
「鈴木は持てるもんな。彼女いるんだろ?」
「残念ながら」
気のせいかもしれないが一瞬睨んでるように見えた。

「おまえ、澤谷の事どう思ってる?」
いつもより、低いトーンで真面目な顔を向けてきた。
「別に、どうも思ってない。」
「まだ、あの例の彼女の事引きずってるのか?」
微妙な重い空気が流れた。


「それも澤谷から聞かれたよ。」

それから2,3何気ない言葉を交わして俺は帰った。


☆★☆★

鈴木の言葉を反芻していた。

”彼女の事を引きずってるのか”

逆に教えて欲しいよ、どうやったら忘れられる?

「君」を忘れた事は一度もない。

今も変わらず好きだ。

いや、それ以上かもしれない。

あれから、俺もいろんな女と付き合ってみたが、ダメだった。

君の変わりには、なれなかった。



ショートカットの女を見たとき、

君じゃないかと。

また、何事もなかったかのように俺の前に表れないかと。



期待している俺がいる。



君は、何処を探してもいるはずがないのに・・・。


君が居なくなって、あらゆる場所を探した。

何処にも君がいなて、ただ足を棒にしてずっと探し続ける日々だった。


あの日。

俺は、全てを知ってしまった。


もう君に会えないんだという事実を。




© Rakuten Group, Inc.