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そよ風のように☆

そよ風のように☆

君に恋した夏(8、居酒屋)

8月の夏真っ盛りの時期には40度を超える酷暑など珍しくなくなっていた。

深夜1時であっても、アスファルトはそれを記憶したままである。

ガードレール沿いの屋台に俺達は来ていた。

葛島から勧められた店は、会社から徒歩10分の場所にある。

オーソドックスな屋台に簡素なテーブルに木の椅子が4,5席。

下手したら、1グループで満席となるだろう。

幸い、俺達が来た時は誰も居なく店じまいをしょうかと考えていた頃だったらしい。

「竹中部長、嫌いなものってなんかあります?」
「海老くらいかな」
カブトムシの幼虫みたいに見えるから、小さい頃から食べれない。
いわゆる食わず嫌いってやつだ。

葛島は愛想よく笑う。

「分かりました。おやっさん、いつものやつ2人前で。ビール・・・」

葛島は俺の顔を伺っていたので、頷いておいた

「2人前ね。」

「あいよ。」
おやっさんと呼ばれた男は、頭に白い布巾を巻いて、眉毛の濃い男だった。
後から知ったが、沖縄出身らしい。

よれよれの黒のT-シャツに黒のパンツの上に白い汚れたエプロンというスタイルだ。


「ここ、おでんが美味しいんすよ。特に牛筋がお勧めです。」

葛島は、昔居酒屋で働いていただけあって、注文も素早くこなしてくれるから、ありがたい。

今日みたいないろいろあった日などは、食べる事すら面倒くさくて、

一人ならそのまま寝る事の方が多い。

二人の元へビールが運ばれてきて、俺達は小さく乾杯をした。


「明日話そうかと思っていたんだが、葛島に頼みたい事がある」
緩んでいた顔を引き締めた葛島は、「何ですか?」

「来年の新卒の社員の審査をしてくれないんだ」

目を剥いて、飲みかけのビールをこぼしそうになっていた葛島は俺を再び見る。

「え、俺ですか?」

「本来なら、俺が出るところなんだがな。
今度新しいメーカーの発掘や新店オープンの準備をしないといけないからな。
そっちにまで手が回らないという訳だ。」

「もう新店ですか?早いですね。今年何店舗めでしたっけ?」
「5店舗目だ。もう5店舗は今年中にオープンするからな。悪いが、葛島の負担増えるだろうが、悪いがよろしく頼むな」

満面の笑みで、「分かりました」


俺達の会社は、そこそこ名の知れた会社だ。
鞄を専門に扱っている。
まだ発掘されていない海外のブランドに目をつけて買い付けたり、
新店準備などは俺の業務となっていた。
葛島は、現状の店舗のクレーム処理や、売り上げなどの報告をまとめたり、店の要望を聞くといった実践的な営業の役割である。

現在店舗数は135店舗に登っていた。
2年後には150店舗を目標に動くと専務から聞いている。
それには、人材が不足している為に葛島の新入社員選びは重要な任務である。

俺達の仕事はハードになる事は予測がついた。

そして、俺はまたあの夢を繰り返しみては、君の存在がまだ刻まれている事を思いしる。


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