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デヴィッド・クロネンバーグ監督が近代心理学の学祖を描く、、となるとどんな映画になるのだろうか?と思うが非常に真摯な真っ向からの映画で、クロネンバーグ風なところはあまりないと思う。
1904年、1856年生まれのフロイトはすでに権威者であり発表当時は物議をかもしたであろう彼の教義も若い後輩たちの支持を得ているらしい。1875年生まれのユングはこの時はまだ29歳で、新進の学者だが、フロイトの学問の治療の実践ともいうべきことをスイスの病院でやっていた。患者としてきたザビーネ・シュピールラインという若い女性とユングの恋愛もあるが、私は中年のフロイトと若いユングの「手紙付き合い」だけが強く印象に残った。頻繁にやり取りし研究のこと、身の上問題、悩みのうち受け、と話し合える二人であったのが興味深い。二人とも精神医学者だ。二人の会話である手紙の文章は決してよそよそしいところはなく、かなり率直に意見を言い合っているが自我の強いお二人のことだから当然厳しいところもある。素晴らしいペンフレンドを持ったものだと思った。いまなら、もっとも価値の高いメルトモともいうべきか。 学問上のことは難しいのでわからない。学者同士の意見の相違も当然起きてくる範ちゅうのことだろう。実は昔、フロイトの「精神分析学入門」とかいう本を読んだことがある。今はどうか知らないが昔割合ポピュラーに読まれていた本だ。しかし私のように程度の低い読者の興味は主にフロイトの夢判断にあり、見た夢が自分の内部に隠れている何が夢になって出てきているのかを知りたかっただけだ。本もその部分だけ読んだのでフロイトの学説を知ったわけではない、よく出てきたのがリビドー、または欲求不満とかいう言葉だったように記憶する。 20世紀初め医学も工業も生活文化も爆発的に進歩した。精神医学の大進歩というか改革はフロイト、ユングらが起こしたものだろう。それらのほとんどはヨーロッパで起きて、日本の森鴎外や夏目漱石らもヨーロッパで勉強してきたわけだ。ウイーンの文化度の高さは最高のレベルらしいなという感じが画面から感じられた。やがて最高の文化的ヨーロッパ社会も第一次大戦の破滅へと走ってしまうのが後の出来事を知る者には分かる。スイスの湖畔のリッチな家に住み、裕福になに不自由なく暮らすユングはすべてが消滅する予感を感じていた。 マイケル・ファスビンダーのユング、ヴィゴ・モーテンセンのフロイトはあまりに各学者たちになりきりすぎて、もう俳優としての顔はでてこないくらいだ。この二人の俳優を使ったことが監督の慧眼かも。キーラ・ナイトレーのザビーネは大切な役割かもしれないがどうしても二人の学者のツナギのように思えた。 (おまけ)ザビーネも死に、フロイトも死に、最後に1961年まで長生きしたユングはどんな風に老年を送ったのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.08.22 09:11:28
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