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"tomoraku"の徒然

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March 29, 2020
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カテゴリ:LIFE





新型コロナに関して、国別の感染者数、死亡者数に著しい差があるという事実をどの角度から説明するのか、様々な研究機関、研究者が試行錯誤している中で、東北大学大学院医学系研究科教授大隅典子氏が新たな視点で解析・寄稿されているのでご紹介する。

単に民族的な慣習や検査数の多寡、隠蔽体質かどうかという視点ではなく、医学的歴史的な見地からのアプローチは大変興味深い。


↓↓↓

想定内のことであったが、ついに東京オリンピックの開催は延期され、直後に小池都知事は都民に対して外出自粛の要請を発した。

1ヶ月前と国内外の状況は大きく異なっている。もはや感染者数の世界トップは米国で、イタリアも中国を抜いた。

欧州の主だった国の感染者数も日に日に増加している。本日は東京で60人超え、千葉でも障害者福祉施設で、28日職員と入所者合わせて57人の感染者が報告されるなど、日本にも、いわば第二波(実は第三波?ー追って別記事を書きます)のような感染者数増加が著しい。

このような国別の感染者数、死亡者数を見て、国による差が著しいことについて、多くの人々がその理由を考えている。

理由がわかれば、予防に繋がると期待されるからだ。


もちろん、誰でもすぐ考えつく文化的な差異としては、COVID-19蔓延以前からのマスク着用の習慣や社交的な挨拶の仕方などがあり、さらに医療インフラの多寡なとが挙げられる。そのような理由はもちろんありえる。

では、生物学的な観点からの違いは何だろう?

アジア系とヨーロッパ系の人々の間には、ゲノムレベル、遺伝子レベルでの違いは存在し、そのような研究も為されているものと思われる。

また、国によって高齢化率が異なっており、高齢者の多い国ほど感染者や死亡者が多くなることはありえるだろう。

だが、3月26日付けで興味深い解析が「JSatoNote」というブログに掲載された。ブログ主の方のプロフィールは以下になっている。

The random notes of Jun Sato in English/Japanese.

I am a middle-aged Japanese male, brought up in Tokyo and moved to Brisbane at the end of 2017.

I started my career at the Tokyo office of a global management consulting firm and dived into a bank turnaround and launching its internet channel. I've started my own business and consulting in 2006 and have grown it to around $10M revenue.

I'm very open to new business/consulting inquiries to survive next year and next decade.
JSatoNote: If I were North American/West European/Australian, I will take BCG vaccination now against the novel coronavirus pandemic.(2020.3.26)




まずこの世界地図の塗り絵を見ていただこう(図の出典は以下。うーむ、2011年の3月の論文ですか……)。The BCG World Atlas: A Database of Global BCG Vaccination Policies and Practices, March 2011, PLoS Medicine 8(3):e1001012

これは世界の国々で、結核予防のためのBCG接種をどのように行っているのかによって色分けされている。

BCGは、結核を予防するワクチンの通称であり、ワクチン開発に関わったフランスのパスツール研究所の研究者の名前を冠した菌:Bacille Calmette-Guerin(カルメットとゲランの菌)の頭文字をとったものであり、生後1歳までに接種される。

A(黄色): 現在、BCGの予防接種プログラムが実施されている国B(紫): 以前は誰にでもBCG予防接種を推奨していたが、現在は推奨されていない国中止した年は、スペイン1981年、ドイツ1998年、イギリス、フランス2005年~2007年など。
C(オレンジ):BCGワクチンの普遍的な接種プログラムが無い国

で、この国々を見ていて気づくことは………ざっくり結論を言うと、BCGの接種が行われている国では、COVID-19の広がり方が遅いという「相関性」があることについての指摘である(注:「相関関係」があるからといって「因果関係」があるかどうかはわからない)。

例えば、スペインとポルトガルは隣国同士だが、前者はBCGの接種プログラムが無く、後者は実施されている。

拙記事執筆時点で、スペインの感染者数は65,719、ポルトガルは4,268である(数字はJohns Hopkins UniversityのCOVID-19マップに基づく)。

さらに興味深い比較としては、旧東ドイツと旧西ドイツが挙げられており、前者はソビエト型のBCGワクチンを接種し、後者は西ヨーロッパ型のBCGワクチンを1998年まで使用していた。患者の分布は圧倒的に旧西ドイツ側に多い。

さらに、イラクとイランの違いについても言及されており、前者は日本型のBCGワクチンを使用し、後者は独自のワクチンを1947年から1984年まで使用していたという。
前者の感染者数は458、後者は32,332となっている(3/28付)。

感染者数に対する死亡者数の割合も、日本、タイ、イラクでは低く、感染者数の増加が著しい欧州諸国においても、日本人の死亡例や重篤例は今のところ報じられていない。

逆に、日本の感染者1,349人のうち、日本人は934名で、外国人が415名となっていることは、人口構成を鑑みて同じ日本国内でも外国人の方が感染しやすいことを示している。

あるいは、日本でのCOVID-19により死亡した高齢者45人のうち44人は、1951年に開始されたBCGワクチン接種よりも前の世代(70歳以上)という事実もある。

さらに詳しい説明は、元ブログを参照されたい。

では、仮にBCGワクチン接種に新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に対する感染や重症化の予防効果があるとしたら、そのメカニズムはどのようなものだろうか?

筆者は「ワクチンの効果は、せいぜいが20歳くらいまでではないのか?」と思っていたので、最初、この話は奇妙な偶然なのではないかと考えたが、どうも抗体価の問題ではなさそうなのだ。

種々の医学生命科学論文をブログで紹介されている西川伸一先生の3月26日付けのコラムによれば、BCGの接種により、免疫状態がエピジェネティックに変化するらしい。
西川先生は、オランダのグループの論文を紹介している。

BCG Vaccination Protects against Experimental Viral Infection in Humans through the Induction of Cytokines Associated with Trained Immunity. Cell Host & Microbe, 2018




この図は論文のGraphical Summaryとして挙げられているものだ(オープンアクセス万歳)。
BCG接種によって、免疫系の細胞である「単球」にエピジェネティックな変化が生じ、遺伝子のスイッチの入り方が変わることによって、IL-1β等、各種の「サイトカイン」の分泌が盛んになる結果として、黄熱病の発症が抑えられるとされている(注:実際には、血液幹細胞におけるエピジェネティック変化でないと持続しない?)。
筆者らはこの状態をtrained immunityと呼んでいる。

この研究では、BCG接種した健常人の血液を採取して調べているが、同じグループは2016年頃からこの方向で研究を行っており、trained immunityの成立には、細胞内のコレステロール代謝に重要なメバロン酸が関わるということも2018年のCell誌に報告している(注:これは、重症例と基礎疾患の問題を考えると興味深い点かもしれない)。

このような研究背景をもとに、すでにオランダではCOVID-19対策のためにBCG接種を開始した。主として医療従事者への接種を行う。Can a century-old TB vaccine steel the immune system against the new coronavirus? Science, 2020 (2020.3.23)

ドイツのマックス・プランク研究所も同様(報道としてはこちらが早い)。Immune boost against the corona virusIn Germany, a vaccine candidate will be tested for its effectiveness against infections with the novel corona virus(2020.3.21)

オーストラリアでも開始された。Australia Enters 4,000 Healthcare Workers in Trial for Coronavirus Vaccine (New York Times, 2020.3.26)

SARS-CoV2そのものに対するワクチン開発や、その他の治療薬の開発には年単位で時間がかかることから、これまで高い安全性が認められ汎用されてきたBCG接種に期待が集まっている。

もちろん、他の生物学的な要因も絡んでいることは十分にありえる(注:別記事にするつもりであるが、SARSCoV2に弱毒性のものと強毒性のものの2種あって、国・地域によってどのウイルスが最初に侵入したのかなど)。We will see...

【追記(2020.3.29)】他のブログ経由でもっとわかりやすい図にたどり着きました。

タナココ:新型コロナウイルスとBCGの接種率とその株との関係について(2020.3.28)

引用されていた図は以下のデータベース公開サイト(オープンデータ万歳)に掲載されています。

Our World in Data: Vaccination

by Samantha Vanderslott, Bernadeta Dadonaite and Max Roser

Samantha Vanderslott, Bernadeta Dadonaite and Max Roser (2020) - "Vaccination". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/vaccination' [Online Resource]

こちらのページを下の方にたどっていただくと、国別1歳未満児のBCGワクチン接種率が出てきます。デフォルトは、記事が書かれた2015年時点のものですが、過去に遡ることもできるインタラクティブなインフォグラフィックスとなっています(注:ただしすべての年ですべての国のデータが揃っている訳ではありません)。

その公開されている世界地図がこちら(注:グレイの部分はno dataとなっていますので、接種率がゼロという訳ではありません)。




もう一つ、挙げられていた図を元論文情報とともに再掲します(注:元論文はオープンアクセスではないのですが、私はリモートでVPN接続し、東北大学附属図書館経由でTubeluclosisという雑誌を閲覧することができます。元がオープンアクセスだったらなお良かったのに……)。

BCGワクチンの「株」にも差があって、ロシアや日本の使っているものの方が上記の効果が高いのではないか、という考察が為されます。

Mapping the global use of different BCG vaccine strains, Tuberculosis, 2009



繰り返しますが、現時点でBCG接種とCOVID-19との負の相関関係は、疫学データを元にした仮説です。

現在、3カ国で開始されている結果がどうなるか、というヒトに対する効果とともに、本当にBCGの株による差異があるのかについては、ぜひ、まずモデル動物を用いた実験や、もし何か公開されているデータがあれば、それを用いた仮想比較などを行うことが良いと思います。

もし読者諸氏が他にも気づかれた情報があれば教えて下さい。

Twitterアカウントは以下です。@sendaitribune

【さらに追記します(2020.3.29.16:46)】
本ブログを読まれた方から教えて頂いたのですが、東北大学老年内科に所属されていた大類孝先生という方が、寝たきりの老人に対して、BCG接種による肺炎予防効果について調べておられました。

BCG接種後にツベルクリン反応が陽転になった方々では、陰性群に比して肺炎の発症率が有意に抑制されたとなっています。

ただし、これは上記で紹介した、長期にわたるサイトカイン応答エピジェネティクスによる(かもしれない)trained immunityそのものとは異なる観点です。

しかしながら、BCGワクチン接種により高齢の方の肺炎劇症化を防ぐことができるのであれば、その原因がSARS-CoV2かどうかに関わらず朗報でしょう(注:ただし、ワクチン接種には副作用もありえます)。

<以下、科研費報告書より引用>
高齢者介護施設に入所中のADLの低下した155名の高齢者を対象とし、ツ反を施行し陽性群及び陰性群に分け、さらに陰性群を無作為にBCG接種群及び非接種群に割り付けをした。

そして、BCG接種4週間後に再びツベルクリン反応を施行し、陽性者を陽転群とし、その後2年間にわたり各群における肺炎の発症率を前向きに追跡調査した。

その結果、ツ反陰性群では44名中19名(42%)に、陽転群では41名中6名(15%)に、ツ反陽性群では67名中9名(13%)に新たな肺炎の発症が確認され、ツ反陽転群では陰性群に比して肺炎の発症率が有意に抑制された(p=0.03)。

以上の結果より、BCG接種は細胞性免疫の低下した寝たきり高齢者において、肺炎発症の予防効果を有する事が明らかにされた。
科学研究費の報告書(2004年):BCGワクチン療法による高齢者肺炎の予防法の確立

上記の内容が含まれる英文総説:Preventive Strategies for Aspiration Pneumonia in Elderly Disabled Persons. Tohoku Journal of Experimental Medicine, 2005

⬜️大隅教授ありがとうございます😊








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Last updated  March 29, 2020 09:58:27 PM
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