銀の裏地

2011/01/18(火)22:40

絵本 アンネ・フランク

調べ学習(13)

 中1生リンの調べ学習シリーズ3日目。『お父さん戦争のとき何していたの』他を受け取りに市立図書館へ。一緒に借りたのは収容所へ向かう列車の窓から外に放り出されて生きのびた赤ん坊の絵本『エリカ』(柳田国男の文体はこの絵本にはまったく向いていない)、そしてアンジェラ・バレットが絵を描いている『絵本 アンネ・フランク』。 絵本 アンネ・フランク価格:1,575円(税込)   ジョゼフィーン・ブール 文   アンジェラ・バレット 絵   片岡しのぶ 訳   あすなろ書房  『マンガで学ぶナチスの時代』を読み終えていたおかげで時代背景がなんとなく頭に入っていたらしく、リンはこの絵本、とても読みやすかったようだ。これと『もう一つの「アンネの日記」』が良かったそうで、次は『アンネの日記』を読むと言っているので、書庫から出してこなければ。これまでノンフィクションは自分から読みたがることの無い子だったからこれをきっかけに現実についても知りたい気持ちを持ってくれるといいのだけれど。あんまり言うと嫌がるので直接には黙っておこう。  ジョゼフィーン・ブールとアンジェラ・バレットのコンビの絵本はあと2冊、邦訳がある。『絵本 ジャンヌ・ダルク伝』そして『白雪姫』だ。特に『白雪姫』の挿絵はぞくぞくした。いちばん好きなのは日本語版の表紙にもなっている森を駆け抜けようとする姫(ちなみに原書の表紙は物売りに化けたお妃が姫に櫛をさす場面)。『ジャンヌ…』のほうはまだ精読していないので、つい先日入手した、世界で最も美しい絵本と評する人が何人もいるモンヴェルの『ジャンヌ・ダルク』とじっくり見比べてみたい。  バレットはギャリコの『スノーグース』の挿絵も評判がいい。暗い色冷たい色を多用してもそれだけに終わらないところが好きだ。そして画面の奥行き。ミニシアター向けの上質の文芸映画のような。力量に比べまだまだ邦訳が少ないバレット、大人の女性が自分用やプレゼント用に購入するのにもぴったりなのでどんどん出てほしいものだ。  『アンネ・フランク』も暗い時代暗い題材を扱いながら、『日記』の最初の邦題であった『光ほのかに』の語感のように、打ちのめされる感じがない。希望を捨てず尊厳をなくさなかったアンネその人のように。アンネの個性的な風貌もうまく絵柄に落とし込まれていて、シック。小学校中学年から読めると思う。ブールの文(片岡の訳も含め)もしまっていて良い。  差別についてはよく知らなくとも、仲間はずれに心を痛める年頃なら、この絵本は手渡せる(早すぎても逆に遠い世界のお話、で終わりかねず逆効果)。このあと高学年で『悲劇の少女アンネ』、中学生で『アンネの日記』が標準コースかな、女の子なら。その後は白バラか。男の子はアンネの自意識過剰なところが鼻について読みにくいだろう、『あのころはフリードリヒがいた』三部作か『父への四つの質問』コースへ。  私は6年生のときに民藝の舞台に接し、一緒に鑑賞したクラスメイトとしばらくアンネ研究にいそしんだ。日記も当時出ていた抜粋版は読んだ。映画版は大学時代に。最初にアンネ役をオファーされたオードリー・ヘプバーンがやはりオランダで地下室に隠れ住んでいたことはあまり知られていない。アンネと同い年の彼女はユダヤ人ではなかったが抵抗運動に身を投じた親族を目の前で銃殺された体験を有する。異父兄も同じ理由で一人は強制労働、一人は収容所送りに。オードリー自身も抵抗運動の支援者である母を助けて連絡係をしていた。『マンガで学ぶナチスの時代』のオランダ人主人公のように少女でも手伝えることはあった。あの斬新なプロポーションは当時の食生活とストレスが祟ってのものだ。『日記』を読んで「自分が崩壊するような衝撃を受けた」オードリーは、その後めぐってきたアンネ役を辞退した。それだけ戦時中の傷は深かったのだ。  2日前の記事中『もうひとつの「アンネの日記」』に「アンネの親友だったドイツ人少女の回想」という説明をつけていましたが、ハンナはユダヤ人です、すみません。収容所で奇跡の再会を果たした幼馴染のハンネリ(リース)が生き延びて語った本です(前の記事は訂正済みです)。2人が共に通い共に退学せざるを得なかった学校はモンテッソーリ校。自由教育を標榜するここですら、時代の波に抗することは難しかったのか。 ↓よろしかったら押してください。

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