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カテゴリ:キャリア
34歳5か月で、初土俵から実に所要114場所にしての十両昇進。年齢、所要場所ともに史上1位のスロー出世だ。
出羽海部屋には1986年、15歳のときにスカウトされて入門。相撲取りとしては体格にも恵まれて比較的スムーズな入門だったが、「引っ込み思案」な性格が災いしてか、その後の道のりは長かった。7人の関取に付き人としてついて19年。後輩に次々と抜かれていく気持ちは、どんなものだったのだろう。 「幕下」に昇進してはじめて、「関取」と称される。やっとプロになれたということでもある。しかし幕下に昇進したのも、10年前、やっと1995年のことだ。幕下になって初めて給料が支給されるが、これでも2ヶ月ごとに15万円という安さらしい。 これが十両になれば一気に月給104万円に跳ね上がるという。苦節19年にして、やっとここまできた。本当に厳しい世界なんだなと思う。しかも、まだまだ頂点への道は遠いのだ。十両から上の階級順序は次のとおりである。 十両 ――> 幕内 ――> 小結 ――>関脇 ――> 大関 ――> 横綱 少々古いデータだが、2002年6月現在、幕内40人、十両26人、幕下120人、三段目200人、序二段234人、序ノ口97人の力士がおり、合計717人を数える http://homepage1.nifty.com/zpe60314/monogoto5.htm 34歳といえば、普通はとっくに横綱が引退している年である。貴乃花などがいかにスピード出世して、さっさと横綱になり、さっさと辞めていったかを考えてみれば、やはり「別格」なのだと思う。しかし、出羽の郷のような「粘り出世」も味があっていいなと思う。どちらかというとこちらのほうが努力好きな日本人の心に訴えるものがあるかもしれない。 先日インタビューに答えて出羽の郷は、「相撲とは忍耐です」と言っていた。 なんだか、長年司法浪人を続けてやっと司法試験にうかったという例にも似ているが、通訳者への道にも似ていなくもないなと思う。通訳は角界ほど厳しくはないし、頂点もあってないようなもんだし、資格もいらない。しかし、プロになるまで、そしてなった後からも、非常に長年の努力を強いられる。もちろん、貴乃花タイプも10年に一人くらいはあらわれるが、出羽の郷タイプのほうが多いだろう。 出羽の郷の例を引き出して、「努力すれば報われる」といいたいのではない。19年続けてやっと中堅になったとしても、その後は保証されないという点では、通訳に限らずどの仕事も一緒だと思う。 通訳志望者はまずこの現実を冷静に見つめて進路の選択をすべきだと思う。その上で、やはり挑戦したいと思えばすればいい。その時その時の実力に見合った仕事というものを素直に受け止めて自分の役割を果たしていく。そうすることで自分の道ができてくるだろう。それはもしかして頂点に至らない道かもしれないが、その自分の道に満足できなければ続けることはできない。その道を楽しみながら進める人が結局一番強いのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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