おじいさんのごはん
先月法事のあった祖父は、ごはんの炊き方に好みがあって、いつも自分専用の電子ジャーで自分のごはんを炊いていた。祖父母の家に行くと、夕食時、叔母ちゃんの炊いたごはんとは別に、電子ジャーを持って自室から現れる。その姿が幼い記憶に鮮明に残っている。祖母も母も、そんなことを覚えているのかと驚いたけど。そんな風にごはん好きだった祖父のせいか、それとももともと家族みんなが好きだったのか冷蔵庫にはいつも数種類を盛り合わせた漬け物の鉢があった。私は子どものころ(今もわりとそうだけど)、匂いがすごく気になって買ってきたお漬けものの場合は、封を開けたその日じゃないと食べられなかった。だから冷蔵庫に保管されたお漬け物の鉢にはまったく興味がなかった。でも、大人になって久しくなった今お漬けもの大好きである。家族や好ましい知人の誰かが「あれあれのおつけもんが好き」と言えばそれを長く心に留めて「あの人が好きと言ってたあれだ」と季節のたびに買い求める。おじいさんのように、家族で暮らしていないので一度に鉢に盛れる種類がひとつきりになってしまうのが寂しいところではある。たくさん買っても食べきれないんだもん。でも、そんな訳でおつけもんを食べるときは、大抵かならずおじいさんを思い出す。ごく小さいときに死んでしまったおじいさんだけどそんな訳で身近に感じられることがある。今度おばあちゃんに会ったらおじいさんのおつけもんの好みを聞いておこう、と思う。