想い出は心の宝石箱に。。。

2014/11/04(火)23:59

奈落の恋 。。。。( 8 )

にほんブログ村                               第八章         大学校内の道を、イチョウの落ち葉が、黄色に敷き詰めている。     東北の秋は短く、すぐ冬になってしまう。散り尽くしたイチョウの木々が、白い     綿帽子をつける日も間近い。                       秋の陽射しは、研究室の奥まで覗きこみ、長い影を残している。      黒田は、読みかけの学術書を閉じた。     < 千佳との関係も、そろそろ清算すべき時かもしれない・・>    三十前独身の千佳の肉体は、若鮎のごとく勢いがあり、且年のわりに性愛にたけていた。     しかし、准教授に推挙しなければ、二人の関係を妻か学長に暴露すると脅かされては、     このまま放置しておくのはまずい。千佳との関係は冴子と会う前に出来たものだが、     その後もずるずるとここまできてしまった。                                      隣の机で書類の整理をしている千佳に、  ( 来年の教授会で、君を准教授に推挙したいと思っている。僕の後継者として、この         研究室をそろそろ託しても、いいかな・・・ )     ( あら・・どうして、来年なわけ。 )  ( 僕が、学部長に昇進したばかりだし。学部長の職権乱用で、准教授になれたと思われ         ては、 君も本意ではなかろう。 )       ( そんなことは、ないわよ。権力なんて、使える内に使わねば。 )   ( それに、八代が知っていたことは、二人の関係が学内でもかなり噂に、なっているの          かもしれない。だから、僕との関係も、今日で終わりにして、准教授への道を確実に          した方が、君のためだと思うのよ。)   ( へえ~~、ほとばりが、さめてからというわけね。学部長が我慢出来るなら、私は          別れても構わないけど・・・・)   千佳は、<うふっ>と、含み笑いをした。それが何を意味しているのか、黒田には      わからなかった。                                                         ここは、東京下町にある、小さなマンション。   ベッドに体を横たえながら、久実は仙台にいる夫黒田のことを想っていた。教え子で      優秀な男がいると父からの薦めで結婚し、早いもので二十数年が過ぎていた。三年前      子宮ガンが発見され、卵巣への転移が見られた末期段階であったことから、子宮卵巣を      全摘出せざるをえなかった。   それ以後他の部位への転移は認められないが、治癒の為闘病生活の日々を送っていた。      幸いなことに娘が成人しているので、身の廻りの世話はしてくれる。もともと病気がちな      久実であることもあり、黒田の仙台学院大学への転勤にも、彼女を帯同することはなかった。      それを、妻の役目を果たせずに申し訳ないと、涙ながらに久実は黒田に詫びたのだった。                                                                                                   黒田からは、3日に1回ぐらいの頻度で電話があり、病状を細かく聞いては励ましの      言葉をくれた。今般学部長に昇進したとの報告もあったが、久実にとってはそんなこと      よりも、 単身生活での食生活で健康を害してしまう事の方が、心配であった。   きちんと食事をしているの?との問いに対して、俺は近くのスーパー・コンビニの弁当を      食いまくり、ほとんど制覇したと電話口で笑っていた。                            黒田からここしばらく連絡がないが、夫は元気でいるのだろうか?  窓から見える空には、いくつもの鰯雲がなたびき、秋から冬への景色に変わっていた。  つづく~                              ブログ村ランキング、参加しています。                            下の画像を応援クリックしてね。                                           ↓                         

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