僕と彼そして君窓の外の景色をただ眺める毎日雲の流れを感じることに生きがいを感じている そんな毎日 僕は独りだった 友達はここにはいない 僕の親友は僕の全く知らない土地に行ってしまった 少し期待したこの新しい生活には 僕の居場所はどこにもなかった 前は親友である彼が僕の居場所をつくってくれていた 僕は彼に頼ってばかりだった 何をするにも だからぼくは、今独りきり 一人では何もできない僕がいた 会話する勇気もなく 僕は雲の流れをぼんやりと眺め続けた 進学校だったからこんな僕へのいじめとかいうものは別になかった だけどみんな勉強、勉強・・・ってわけでもなく 勉強、部活、友情、それぞれの生活を確立していた うらやましくも叶わぬ夢と諦め 僕はまた窓から見える空を眺めた 独りで 親切にも僕に話しかけてくる人もいる だけど僕はうまく返せなかった だから返事をするのが僕の精一杯 誰にもかまってもらえなくなった 独り、独り、独り 彼がいたときのみんなで笑い合った日々を思う 彼がいたから僕がいたのかな ということは僕は今ここにいない 別にいなくてもいい存在なのかもしれない 独りの時間が流れ続けたある日 梅雨の中休みらしく 珍しく雲ひとつない快晴 すべて彼のおかげだった過去が ひどく懐かしく、愛しく 今、一番彼が欲しかった きっと彼は今、僕の知らないところで 楽しくやっているのだろう 彼が生きていたら・・・ 聞こえますかこの叫び 独りがこんなにも怖いものだなんて知らなかった どうすればいいの 答えは返ってこない だけど返ってくるはずもない答えを受け取りに 僕は無我夢中で屋上へむかった 階段を一気に駆け上がり 思いっきり扉を開けた 始業のベルが鳴り響く そこに彼がいた いや、彼ではないけど やっぱり彼だ その後姿は彼そのものだった だけど彼より少し背が高く、少し髪が長く でも優しい彼の目がそこにはあった どうしたの 彼のように僕に問いかける 優しい言葉 ドアノブから手を離さずに見つめていた僕に問いかける 君が彼に見えたんだ 彼って誰 僕の親友だよ 授業はいいの 君は心配そうに訊いてくる こんな僕のために こんな僕なんかのために 君こそいいの 今日はいいの 僕は安心して話せた 僕の口が彼といた頃の口に戻った気がする この感じ、なんだか懐かしい 屋上の手すりにもたれかかって 二人でずっとしゃべっていた このまま時が止まれば良いとさえ思えるほどに きっとこれは彼の魔法 教室に戻ったらとけてしまうような彼の魔法 僕がうけとった彼からの贈り物 君は僕の事を良く知っていた やっと話せてよかった とさえ言ってくれた なんだか初めて会ったきがしなかった もっと前から君を知っていたような 君は言った 僕は君をずっと前から知っていたよ 小学校で僕がいじめられていた頃からずっと 僕は答えた やっとここから僕の生活が始まる 普通の生活が だけどかけがえのない生活が ありがとう、きっと僕はもう大丈夫 とても大事な贈り物をもらったから 彼に心から感謝 この魔法がとけてしまっても、大丈夫 勇気をもらった気がするから いつも助けてくれた彼に感謝 君は突然僕に言った 君はどこへも行かないよね ずっと友達だよね なんだかとても悲しそうな目で 僕にそう言った 君のまっすぐな思いが涙がでるほどうれしかった 君もどこへも行かないよね ずっと友達だよね 僕も君に言った この時をゆっくりと、ゆっくりと かみしめながら 僕は魔法がとけることを心配していたけど 結局、その日は日が暮れるまで二人で話し続けた 僕は独りじゃなくなった そして僕に二人目の親友ができた それは君 彼からの僕への贈り物だった 僕等の生活が始まる |