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好き、という気持ち

私がまだゲイデビューして間もない頃、(って今でもようやっと4年目位?信じて…)
私は「誰かを好きになる」と言うよりも、
むしろ肉体関係が持てる=ぶっちゃけSEX出来る事に喜びを覚え、
その快楽の探求=やりまくり(とまでは行かないが)に走った訳で。
精神的には年寄りじみていてもまだ若さ溢れるその体には
内側からこみ上げる肉体的衝動と言うものがございまして、
それまでとーんと恋人関係&肉体関係など持たなかった私には
もうそれはウハウハな毎日で
ネット活動と飲み屋での出会いを見つけては
肉体的欲求の充足にいそしんでおりました。

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肌を重ねること。
今まで知らなかった他人の肌の温もりや湿り気。
看護士として当然人の肌には良く触れてはいたけど、
それとはまったく異なる「肉」としての客体。
熱い吐息、汗、汁、伝わる鼓動。
初めて誰かと一緒になる感覚。
今まで知らなかった他人との関わりと交わり。
一人の布団ではなく、二人のベッド。
そこには誰かいてくれて、
それがたとえ一回きりの出会いだったとしても
私は今誰かと肌を重ねてココにいる。
新しい自分の存在の確認の仕方。
それを知る事で、
そしてその熱いインパクトで安らぎを得ている私が居た。

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そんな刹那的な出会いを繰り返す中で、
やがて私には友達ができた。
私がノンケだった時にいたのと変わらないような、
気の置けない友人達。
それは今まで知らなかった自分を見つけ出せるような、
乱れも、甘えも、毒も、我が儘も、性的志向も、全てがさらけ出せる友達。
ある意味それは思い切りが良いと同時に、
新宿二丁目と言う限られた空間の中での交際で
時にはとてもSuperficialな関係な事もあった。
それでも、楽しかった。
それでもそんな中からやがて本当に大切な友達ができた。
本当に大切な、大切な友達。

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やがて、そんな中から今までとは違う感情を抱かせる相手が出てきた。
初めての感情。
今まで自分が歩いてきた「肉」を求める欲望でもなく、
居心地のいい友達関係でもなく、
本当に今までとは違った気持ちが生まれてきた。
その人に対しても確かに体を求め、
そして友達のような居心地のいい関係も望みはしたけれど
それ以上の気持ち。
そしてそれはどんどん強くなっていく。
内側から自然に溢れ出してくる、とめどない感情。
ただその人の事が忘れられなくて、
頭から離れなくて、
気が付くといつもその人の事を想ってる。
体でもなく、友達としてでもなく、
ただ思いを伝えたくて、そして相手からもその思いを返して欲しくて。
肉体関係なんてホントに関係なく。
友情なんかじゃ物足りなくて。

すごく強い、そして抑えきれぬ感情。

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「好きになる」と言うこと。
前は、それがどんなものか分からなかった。
聞いた事はあるけれどもまったく知らない感情。
そんなものが無くても20年以上(むしろ四半世紀近く)平気で生きてこれた。
それで苦しむ人がいる事を、
その気持ちとは遥か遠い所にいながら不思議に見つめてた。
そんな気持ちが持てる事に少しのやっかみを抱きながら。
他人の幸せを横目で見ながら、
それに対する純粋な喜びと、一抹の寂しさを噛み締めながら。

何故私の周りのみんながそういった感情に押し流され苦しんでいたのか、
今は痛いほど良く分かる。
愛しさと、切なさと、寂しさの違い。
「狂おしい」と言う言葉の本当の意味。

その人を思うだけで、
時間はこんなにも早く過ぎていく。
その人を思う事でこんなにも時間を無駄に過ごしても、無駄と思わない。
流れる時間と距離が辛くない。

そして、それと同時に、全く反対の感情も生まれてくる。

その人を思う度に、
その人に今会えない事がどこまでも自分を惑わせる。
携帯のメールを無意識にチェックしている私がいる。
呼び出し音が今鳴らないか、と心待ちにしている。
この気持ちが届かない事に気付いて、苛立ち、辛くもなる。

いっそ、好きにならなければ良かったのに、と思う。
いっそ、こんな感情知らなければ良かったのに、と思う。

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私は前よりも弱くなってしまった。
人を好きになる事で。
本当の「好きになる」ということを知った事で。

今まで一人っきりで立っていても何とも無かったのに、
その気持ちが私の中に芽生えてからは
一人っきりで立っている事が寂しくて仕方ない。
今までは一人で歩いて来れたのに、
今は誰か側について歩いていてほしい。
大好きな友達がいるのに、それだけでは物足りない。
あの人にいてほしい。
大好きなあの人にいてもらわないと全ての事に意味が無い。

私は前よりも貪欲になってしまった。
絶対に私はその人とずっと一緒にいたい。
ただ彼と一緒にいる事だけを深く、強く思い続ける。

私は前よりも我が儘になってしまった。
その人無しでは生きられない。
世界の平和も、他の人の幸せも、
もしその人が私のそばにいてくれるなら
そして自分と一緒に笑ってくれるのならば、どうなったって構わない。

弱くて、貪欲で、我が儘な自分の再発見。
それが自分が「好きになる」事から得たもの。

でも、こんなイヤな自分でも、この感情を捨ててしまおうとは思わない。
思えない。
イヤな自分でもいいから、
私は我が儘に、貪欲にあの人の側に居続けたい。

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自分の醜さと、自分の弱さと、新しい一面を知る事で、
私は前よりも「生きる事」に近づけたのかもしれないね。
それまでの穏やかで、
春の日差しのような(と言うと言い過ぎだぁね)生活も良かったけど、
それはまた同時に陽だまりの中で氷漬けになっていたかのような不思議な生活で、
日の光の暖かさを氷越しに感じる事は出来ても
実際自分は固く凍てついたまんまで、
誰に触れることも、触れられる事も無かった。
傷付く事も無ければ、外界を本当に知る事も無い。
自分の世界の中から冷静に外を見つめ続けるだけの人生。
見えてはいるけど、決してつかめない人生。

あの時は自分が氷漬けだなんて思わなかったんよ。
でも、今はそうだった気がする。
そう感じられるようになった。
それが合ってるかどうかもわかんないけど、
そう信じられるだけに足る強い思いが自分の中に生まれてる。

今、私はよりいっそう人間らしくなれた気がする。
前よりも本気で泣いて、笑って、怒って、
妬んで、ひがんで、悩んで、苦しんで、
想って、求めて、微笑んで、
キスして、抱きしめて、そして誰かを心の底から「好き」と言える。
それは今まで知らなかった新しい世界。
新しい強さ。
新しい力。

これが私が「好きになる」という事から得たこと。
この気持ちを誰かに伝えて、誰かと向き合って、
弱さではなく強さに対してより一層目が向けられるようになった時、
私はさらに強い自分を見つけられるような気がする。

好き、という気持ち。
それはあまりにも鋭い諸刃の剣で、
果たして本当に私のためになるのかは分からないけど、
今はただそうなる日が来ることを望んで、
この気持ちを大事にしていきたいと思うんです。

はあ、でも人を好きなるって、
ものすごい体力も精神力もつかっちゃって、
ホントに辛いンですよ。
ぬひー。
まだ恋愛を楽しむ、というのは無理めっす。
                                24, 08, 03


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