顔見世のお目当ては、人間国宝・坂田藤十郎
京都南座の顔見世、一度は見ておきたいと思いで、大枚をはたいての参加である。その年の、チケット額が、いつも、南座の顔見世が、日本一になるということも聞いたが。 私は、それほど歌舞伎ファンでもなければ、歌舞伎のこともよく知らない。一つの目的は、その雰囲気をじかに見てみたいという気持ちである。それに、自宅から電車にのると、四条で降りたら、南座は、廊下で繋がっているという便利さもある。 開演が、10時半である。入り口には、終演の時間も書かれていた。何と4時10分とある。と言うことは、幕間の時間も入れてであるが、5時間40分の長時間である。やはり価格と比例しているのかな?とか思いながら、雰囲気体験も目的であるから、売店を覗く。 弁当に、長蛇の列。5000円の弁当も有る。幕の内弁当の由来は、南座で食べる弁当のことらしい。劇場で弁当を食べるのが南座のしきたりである。この日のために、いつもの節約し、質素の中で貯めたお金を、この日に、散財するのが、京都人であるとか。 まずは,一階の、25,000円の席を覗いて、今のうちにパチリ。確か、二階も同じ、2,5000円の席である。私のチケットを見ると、3階である。遥か彼方に見える席であるが、10,000円である。 3階席に上がると、何とここも、満席である。幕が開くと、私の席は、とても見にくい席だった。右列の一番端で、体と顔を前に倒さないと全景は見えない。ただ、後ろには席がないので気楽では有ったが。確か大分昔に、二階か三階で見たときは、桟敷席だったのを、思い出したが、改装後は、全部いす席になったようである。 舞台は、値段だけあって、4つも有る。一つ目は、文楽でよく見た古典もの。「会話は外国語のようで、よう判らんな・・・」という声が聞こえる。二つ目は、花道を行く姿を、見事に見せる。三つ目は、セリフに、「レシート」と有ったので、新作ものか?筋書や内容も知らずに来ている。三階席は、後ろに座ったスタッフの一種か、「なり駒屋!」「待ってました!」とかの、男女で、声掛けが頻繁に行われる。 遂に、私が顔見世に来た目的である四つ目の開演が、最後にあった。86歳になる、人間国宝の坂田藤十郎の「新口村」である。この人今月には、87歳になる。この老齢での、若者である忠兵衛という、若者をどう演じるのか。若い人が老人役をやるのはあちこちに有るが、老人が若者役は、歌舞伎の世界であろう。 (ヤフーの画像である。)この歌舞伎の内容は、勧進帳と同様、だれでも知っている有名なものである。若い忠兵衛が、遊女梅川の見受けのため、封印切をして、恋の逃避行の物語。坂田藤十郎は、若い頃から何度も演じている。もちろん、梅川の美し女役も見事だった。 今回は、もちろん忠兵衛の役。相手の遊女、梅川を演じるのは次男の扇雀であった。花道を通って出てきた、父役は、長男の鴈次郎と、親子の競演。舞台は、ほとんどが、扇雀と鴈次郎が取り仕切ったものであった。人間国宝・文化勲章受章の、老俳優、坂田藤十郎のセリフは、わずか、動きは,能の役者のように・・・、花道を期待したが、無理であった。遊女役のほうが、忠兵衛より背も高いし、坂田は恐らく花道を歩けないのだろう。演出の苦労を感じる。 87歳になる老役者が、若者役。わずかな顔の向き、体の傾きとセリフに、歴史を感じる舞台であった。今日の日記は、取材のようになりました。