|
カテゴリ:カテゴリ未分類
私の長年の落語仲間である、落語作家の井上新五郎正隆先生が、
ついに!落語本を上梓した。 それにしても、タイトルのインパクトが凄いもんである(笑)。 「何とかの一心、岩をも砕く」じゃないけれど、井上さんは夢を ある程度、実現させちゃったんだから凄いことだ(笑)。 こうして落語本を出した井上さん、歌謡ショーの司会や落語会の プロデュースをしている私…。毎度同じようなことを書いてるが、 Twitter上でウダウダ文句を言ったりしているだけでなく、実際に 金を使い、常に動き、人と接してきたからこそ”私たちの夢は実現 できた”ということは言えるだろう。小さな夢だけどさ(苦笑)。 井上さんご本人から「感想よろしく!」みたいに言われていて、 実は数週間前から感想文の中身を練っていたのだが、どうにも こうにも上手く書けなくて、延び延びになってしまっていた。 --------------------------------------------------------------- 仲良くしている人が初めて出した本なので、手放しで褒めようと 一生懸命読んだのだが…賞賛すべきところと「????」という 箇所が半々ぐらいだった…と言えるだろうか。 まず何に驚いたかというと、井上さんの「自己顕示欲の凄さ」! 頭からあとがきまで、普段私と話す際はあれだけ静かで穏やかな 人が、もう文章から、あるいは文と文の間から「俺が!俺が!」 という自己アピールがバシバシ飛んできたのだ(笑)。 「今まで20数年、心の中にあった鬱積した感情が大爆発したの かいな?」と思わずにはいられないほどの自己PRが、強く印象に 残った。 でも、この自己顕示欲は間違った料簡ではない。むしろ正しい! これぐらい書いてくれなきゃあ!いいのいいの、これで! 「喋ると穏やか・文章は過激」は、立川志らく師匠に近いかも。 逆に私は「喋ると過激・文章は穏やか」なので、談春師匠の系統 なのかもしれない(笑)。 ---------------------------------------------------------------- この本の90~91ページに書いてあった、井上さんが三朝師匠に 書いた初めての擬古典作品「殿様いらず」のサゲを作ったのは、 この私(笑)。 本文に書いてあったが「本編は順調に書けたのだが落ち(サゲ)が 決まらない」と電話があったことは、よく覚えている。 それで私が「どんな話なんですか?」と聞いて、百姓一揆がどうの こうの…とおっしゃったので「それじゃ『徐々にゆっくりとやろう。 もう一揆(一気)はこりごりだ』しかないんじゃないですか?」と 言ったら、採用されてしまったというわけ。 この件は読んでいて「井上さんに悪いことしちゃったかな?」と 妙な汗が出てきてしまい、こないだメールで弁解した(笑)。 ------------------------------------------------------------------ あと、これから書くことは井上さんに事前に電話で「ひとつだけ 差別的な酷いこと書きますよ」と許可を貰っているので、あえて 書くことにするが…。99~100ページに「子供のうちから落語に 身近な東京人と、身近にない田舎者とでは感性に差がつく」という 件があった。 井上さんは新潟県のご出身。新潟はかなり落語IQの高い地域で、 白鳥師匠や扇辰師匠も輩出している。 しかし!はっきり言わせてもらうが、地方出身の方が江戸の料簡を どんなに頑張って体内に入れても「最終的に東京出身に勝つことは できない」と私は思う。 井上さんは、東京出身だということを露骨にアピールし、田舎を バカにする人は、自分が東京人だということだけにしか縋れない 人なのだろうと書いていた。これは当たっている。なぜなら私が そうだから。ワハハハハ‼‼ ただ、地方出身の落語好きの人が「江戸の粋」を大上段に構えて 直接話してこられたら「解りもしねえくせに、田舎もんが何ィ 抜かしやがる!」と、私は100%ブチ切れるとは思う(苦笑)。 …井上さんは、絶対そういうこと言わないから大丈夫よ(笑)。 私が敬愛していたり、テレビ見てて「いいな」と思った人は、 大体が東京(せめて神奈川・千葉・埼玉あたり)出身だった。 数十年にわたり尊敬してやまぬ、立川談志師匠に高田文夫先生。 コロムビアトップ・ライトのご両人。 歌謡ショー司会の玉置先生に宮尾たか志先生、ハーモニカ漫談の 青空たのし先生。 ビートたけし、関根勤、小堺一機、さまぁ~ず、飯尾和樹という 方々にも、東京の匂いが感じられる。 いま現在、私がもっとも仲良くしている林家たけ平師匠。 小~中の後輩の三遊亭司師匠。 らくごカフェ仲間の柳家小傳次師匠。 キレの良い口跡の立川こはるさん。 らくごカフェのオーナーの青木さん。演芸評論の長井さん・ 和田さん・瀧口さん。そして活動弁士の坂本頼光先生。 あと演芸関係じゃないが、日大商学部の刑部芳則准教授。 上記の私の仲良しの演芸関係の人は、人それぞれ性格も違うし、 芸に対するベクトルも違うところがある。 しかし根底に流れている喋りや呼吸の間、あと感性と照れ。 これは間違いなく「東京の人の匂い」なんである。 数少ない例外は、たけ平師と並ぶ友人の春風亭三朝師だろうか。 あの人が大分県ってのは、聞くまで意外だったもの。 私が直で接した演芸関係者で「東京の人の匂い」が最強&最大 だったのは、やっぱし談志師匠になるだろう。 東京人の性格のいいところ・悪いところが両方あったものね。 たけ平師匠も、意外に(失礼!)談志師匠に認められていたと 聞いているし、私もいろいろと認めてもらったのは、やっぱり 歌の趣味は二の次で「東京出身だったからかな…?」とは思う。 井上さんの感性は、確かに私やたけ平師匠とは微妙に異なる。 夏丸師匠や真紅さんも微妙に異なる。でも我々はそれをバカに したりはしないのに、なんで東京人に対抗意識をメラメラと 燃やすような件を入れたのだろうか?この件だけは井上さんに 申し訳ないが、入れなくてよかったと思う。 ------------------------------------------------------------- 個人的には、第二章「全二十六席のかんどころ」が面白かった。 私は井上さんの会にはかなり足を運んでいるが、仕事の都合で 行けなかった回でネタ下ろしされた噺、あるいは今まで聴く チャンスのなかった噺はこの本で知ることとなったので、非常に 面白く読むことができた。 活字になって「そういやぁ聴いた聴いた!」と思い出す噺あり、 数回聴いて、脳裏にガッチリ残っている噺あり、改めて読んでも 「なんだこりゃ」となる噺…といろいろあった。 …「なんだこりゃ」となったのは、ほぼ夏丸師匠の噺ね(笑)。 個人的にだが、井上作品をひとつ選べ…と言われたら、やはり 「御落胤」だろう。次点が「まんぷく番頭」「千両泥」かな? 「御落胤」は初演は柳家小せん師匠で、先々月だったかカフェで 柳家一琴師匠でまた聴けた。 両師匠とも、今の東京落語界で抜群の巧さを誇る噺家さんだから 面白おかしく聴けて、また「練られれば練られるほど面白くなる」 という”落語の凄さ”を、眼前に見せつけられたのを覚えている。 一席選ぶとなりゃ、やっぱしこれだろうね。 批判も賞賛も両方書いてしまったが、どっちにしても私に落語本の 執筆依頼は永久に来ない(笑)。だから本を書くチャンスに恵まれ、 その本が出版され、落語好きの間でかなり話題になっている…という ”それだけ”で、井上さんはもう、落語好きの勝ち組よ。 3,300円と結構なお値段の本ではあるが(笑)都内の落語会に 頻繁に通われる方は、読んでおくべき本ではないだろうか? 9月25日(日)には高田馬場「ばばん場」で、出版記念落語会も あるそうです。私はもちろん行きますよ、夜勤明けで(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年08月15日 00時30分54秒
コメント(0) | コメントを書く |