「幸せなお酒」

2007/08/08(水)09:18

自分なんかよりももっと疲れた人がいる。

その日は気持ちもからだも、どちらもクタクタに疲れていました。 汗みどろになって、その日の用事を全て終わらせて遅い時間に 入った食堂でのこと。 大阪のミナミの街のはずれにあるその店には、つかれた気持ちの 吹き溜まりのように、どんよりよどんだ空気が支配していました。 日曜の夜の遅い時間、その店にくるのは何か事情のある人たち ばかりのようで、肩を落とした人たちが、次から次へと入って きては、何も語らずに白いご飯を詰め込んでいます。 今日の出来事を振り返りながら、自分の中のやりのこした思いを 冷やしすぎて味気のなくなったビールで流し込んでいました。 思い通りにならないことの悔しさと、違うやり方もあったのでは なかったと思う後悔、自分を責めてはため息をつき、疲れた 心に追い討ちをかけていたときのことでした。 となりのテーブルに若い女性がひとり席につきました。 乱れた髪を気にする余裕もないくらいに疲れた表情で、食券を 店員に渡すと携帯電話でメールを送っていました。 運ばれてきた定食を食べながらふと横をみると、その女性は テーブルにつっぷしてあたまを抱えるように眠り込んでいました。 よほど疲れていたのでしょう。 若い女性が場末の定食屋でひと目をはばかることもなく、 眠り込むとは、どんな事情があったのかわかりませんが、 途方もなくクタクタに疲れていたのでしょう。 注文したものが運ばれてくる頃には起き出して、疲れたままの からだでゆっくりと箸を動かしていました。 おつかれさま。 こころの中で声をかけて、自分よりも疲れた人がまだまだいるのだと そんな当たり前のことにようやく気がついたのでした。

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