日々にあらたに!

2016/10/31(月)06:33

座右の銘「日々にあらたに」

ビジネス(74)

1999年の8月、私はそれまで33年間勤めていた会社を辞めて、経営コンサルタントとして独立した。その時、直ぐに取りかからなければならない仕事があった。人脈づくりである。そのためには所属する中小企業診断協会(大阪)の中の、交流会や研究会に入会して診断士仲間との親睦を深めるのが手っ取り早い。そう考えた私は、これらの中で興味にある会に手当たり次第に参加した。当時、少なくとも週に2~3回、中小企業診断協会に顔をだした。  会が始まると、新参者の私は最初に、自己紹介をしなければならない。名前と経歴、参加の動機、将来の希望や抱負を一通り述べるのだが、この時に座右の銘でも開示すれば、より早く私が何者かが分かってもらえて、より早くより多くの人と知り合いになれるであろう。そう思ったものの、私にはそんな気のきいた座右の銘などない。その必要性をこれまで、微塵も感じなかったからである。  しかし好きな言葉は何かと問われればそれはあった。「日々にあらたに」という言葉である。四書のひとつ『大学』にでてくる「苟(まこと)に日に新たに、日々に新たに、また日に新たなり」という文章の一節である。何時の頃に、この言葉に接したかは忘れたが、相当若い頃だったように思う。その日にどんなに辛くて嫌な出来事があっても、一晩寝て起きれば、新しい日がくる。きのうのことはすべて忘れて、気分新たにしてスタートする。そうだ。この言葉を座右の銘にしよう。それから私は何時も、この言葉を傍らにおいた。  朝起きて「日々にあらたに」を口にすれば、昨日の一刻も早く忘れてしまいたい出来事を、きれいさっぱり拭い去れた。こうして自分をリセットして、新たな課題に向かう気力を蘇らせてきたように思う。そして今、会社生活を離れて独立コンサルタントの道を歩み始めたその時、私はこれまでになく、この言葉の重みを感じていた。会社にいさえすれば、「日々にあらたに」をことさら意識しなくても、新たな気持ちで向かわなければならない問題が毎日起こる。まわりには、どんなに落ち込もうとも、日々あらたな気持ちに導いてくれる部下がいて同僚がいて上司がいる。しかし今は、そんな人々は傍にいない。どうすれば、日々新たな気持ちを継続できるか。  独りになった今は、毎朝「日々にあらたに」を口にしただけでは、何も新たなことは起こらない。ともかく動かなければ、新たな問題にぶち当たることもなければ、気持ちを新たにして取り組むべき課題も見つからないだろう。何もしなければ時はただ、いたずらに過ぎていくのではないか。そんな不安や焦りが無きにしもあらずだったが、独りで道を切り拓いていくことへの挑戦意欲の方が勝った。これからは、自力で、新たな問題を見つけ、新たな課題を設定し、新たな解決策を引き出さなければならない。本当の自分が試される時が来たと思った。  そこで起こした最初の行動が、中小企業診断協会を舞台とした人脈作りだったのである。独立してからこそ「日々に新たに」を、それこそ文字通りに、真剣に実践していかなければならないことになったのであった。(平成28年8月14日) http://www.ac.auone-net.jp/~helloelm/

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