【連載】三代目 豪太の挑戦(最終回)
社長の健太に報告 来年は創業60周年。豪太、社長就任の年。年始早々、販売の激減の知らせにショックを受けたが、ずっと先の夢を描いているうちに、何のこれしきのことに驚いていられるか!という気持ちになってきた。今、ユメミールの原点に還った。起業家源太の思いが蘇る。 今の窮状を打開するための5つの方針をA4一枚にまとめ、10年先の姿をデッサンした資料と経理課長の作った資料を添えて、社長の健太の前に差し出した。5つの方針は次のとおり。1.「雇用を守ること」を全従業員に宣言 何はさておき、直ぐにも「雇用を守ること」を従業員全員に宣言し、不安を取り除く。2. 生き延びるのではなく、生まれ変わる 今を凌いで「生き延びる」のではなく、あらたに「生まれ変わる」という思想を貫く。3.顧客の要求から一切逃げない 製品の改良要求やクレームから逃げない。クレームこそ開発の指針を示す宝の山。4.真に価値ある情報を共有 風評に躍らされることなく、現場の生の声に耳を傾け、真の情報を全員で共有する。5.常に次に打つ手を準備しておく アイデアと次に打つ手を常に温存し、新製品を市場投入するタイミングをはかる。 健太は先ず経理課長の作った資料から見はじめた。一枚一枚丹念に眺めながら、少しも表情を変えない。平然とした面持ちだ。 一通り見終えて、「それでどうするのだ!」という顔をして、5つの方針に目をやり、最後に10年先のデッサンに見入った。5分ほども眺めていただろうか?豪太には随分長い時間に感じられたのだが・・・・。 そして社長健太は書類を閉じた。豪太の顔を、鋭いがどこか優しい眼差しで見つめて、何も言わない。豪太には健太の気持ちが読みとれた。親子だから当然かも知れない。 「お前に任せる。思い切ってやってご覧!」とその目が語っていた。 どこからともなく力が湧いてきた。夕方テレビをつけると、日本型ワークシェアリングのニュースが流れている。方針通り明日にも、全従業員の前で声高らかに、「雇用は守る!」と宣言して、みんなの不安を拭い去り、安心させてやろう。 恐怖は去った。迷いも消えた。これもやりたい!あれもやりたい!と思う。 神から与えられた試練を甘んじて受けよう!と決意した瞬間だった。(了)♪♭♯・・・・・♪♭♯・・・・・♪♭♯・・・・・♪♭♯・・・・♪♭♯・・・・・ただ今、「中小企業 経営実践の道しるべ」 好評発売中!!書店の他に、アマゾンやパレード社からお買い求め戴けます。・・・・♪♭♯・・・・・♪♭♯・・・・・♪♭♯・・・・♪♭♯・・・・♪♭♯・・