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 多くの人が予想した通り,福島原発の事故は全く見通しのたたない状態になってしまった.政府や東電が,マスコミを動員して情報隠しに躍起になっている間に汚染は拡大し,今も拡大し続けている.この状況が近い将来に多少とも改善されるという見通しはゼロに近い.早晩おそらく全国の自治体は独自に放射能汚染を測定する必要が出て来るだろう.土や衣服の表面をガイガーカウンターでなぞるだけでなく,サンプルを採取して正確に測定する方法を採用することが求められるだろう.

 そういう状況であるが,今回は話を「食の安全」に限って述べてみる.


1.野菜の汚染.
 野菜の放射能汚染が見つかったとき,NHKの朝のニュースで解説をした先生がいた.そのお話によると,野菜の放射能汚染を調べるときは,表面の土を落として,水でざっと洗って調べる.簡単に落とすだけだから,野菜の表面には放射性物質がまだ付いている.それを測定しているのだ.だから野菜はしっかり洗って食べればよい.仮に洗わなくても人体に影響の出るような濃度ではない.
 そういう意見がマスコミの大勢を占める中,日本科学者会議:
http://www.jsa.gr.jp/pukiwiki/index.php
が「放射線被曝問題について」という記事を載せている.その中で生井兵治さんという「植物遺伝育種学」の専門家が,「野菜の放射能測定値は『よく洗ったあとの測定値です』」という記事を書いている.厚生労働省が3月18日に,野菜は流水で洗浄してから調べろ,というような趣旨の指導をしている.それに従った手法で測定した筈だから,検出された放射線量は野菜の表面ではなく,内部のものだという主張である.

 放射能が野菜の表面についているだけなのか,それとも内部にあるのかで,話はまるで違ってくる.表面なら,放射性降下物が偶然野菜に付着しただけの話で,洗って食べれば全く問題はない.
 しかし内部だとすると,放射性物質が土に滲(し)み込んで,根の表皮細胞の細胞膜(原形質膜)を通じて植物に取り込まれたことになる.つまり土壌がすでに汚染されている.野菜を食べるどころか,この畑で食べ物を生産すること自体を控えねばならない.

 放射能は野菜の表面だったのか内部だったのか.ニュースを何度聴いても判らない.肝心の点をボカして報道しているのでないか,と疑ってしまう.


2.魚の汚染
 3月29日の夜,NHKで「魚の安全性」について解説した専門家がいた.水産大学の教授だったか,そういう肩書きの人だ.その人の発言:
- 海が汚染されているといっても,魚は水を飲みません.
というのを聞いて,私は固まってしまった.

 「浸透圧の調節」という言葉を知らなくても,のどが乾いたからといって海水を飲むものでないことは,みんな知っている通りである.
 人間の場合はそうだ.しかし,では海の生物(脊椎動物)は水分をどうやって補給しているのだろうか?
 よく知られているのは鳥(トリ)の話.
 海の鳥,と言ってもカモメなどの中途半端なやつでなくて,アホウドリとかカツオドリ等の本格的な海鳥は,海水を飲むことで水分を補給する.そして塩分濃度の高い液体を,クチバシの付け根のあたりから排出する.これらの海鳥では上クチバシの付け根に「鼻孔」のような穴があいているので,それによって海の生活に適応した「海鳥」であることがわかる.
 海の魚(硬骨魚)にそういう「鼻孔」はない.しかし海の中に住んでいて体に水分を補給する唯一の方法は,海鳥と同じく,海水をガブガブと飲むことである.過剰の塩分は腎臓や鰓から排出される.
 だから,「魚は水を飲まない」はウソである.

 淡水魚は積極的に水をとらなくても,水は浸透圧で体に入って来る.しかし海水魚は積極的に海水を飲まねばならない.汚染された海水を飲んで放射性物質を体内に取り込むことも十分に考えられる.
 海水からの直接取り込みのほか,よく指摘されるのは食物である.まず単細胞藻や原生生物が汚染を取り込む.それをワムシやカイアシ類や,その他の「動物性プランクトン」が食べる.それらを小さな魚が食べる.小さな魚を,もっと大きな魚が食べる.こういう「食物連鎖」を通じて,汚染は魚の体内に蓄積される.


 原発事故に関しては,しっかりした専門家による明快な説明・解説をマスコミは用意して欲しいと思う.あまり根拠のない「安全」宣言とか,見え見えのウソ解説は,却って「風評被害」を拡大するだけである.





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Last updated  April 6, 2011 10:51:40 AM
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