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「米国での生活は楽しい.ただし,それは君が健康でいる限りでの話だ」.
米国に留学していた先輩が,そう言っていた.短い滞在期間でも米国で生活しようと思うなら保険に入っていた方が良い.でなければ病気をしたとき医者にかかることもできない.保険料の払えない貧乏人は,米国では病気になることができない. 一方,英国では「ゆりかごから墓場まで」のキャッチフレーズ通り,医療はすべて国が面倒を見てくれる.医療費はタダ.これが英国の誇るNHS(National Health Service)だ.NHSは英国で暮らす外国人にも適用される.私も体験したことであるが,病院で診察を受けて治療してもらって,全くカネを取られない.ホントにタダで良いのかい?と,他国のことながら心配してしまう. NHSは立派な制度だけれど,国が負う財政負担は相当なものだろう.実際,よほど財政難と見えて,たとえば「手術が必要」と告げられてから実際に手術を受けられるまで何か月も待たされるらしい.待てない人は高額な医療費を払ってプライベートな医療を受ける.だから結局は「地獄の沙汰もカネ次第」に近い制度となっている. さて,わが日本には「国民皆保険」の制度がある.米国のように保険会社まかせでなく,さりとて英国のように国がすべて引受けるのでもない.国の出費が少ない割に,国民が受ける恩恵が大きい.いろいろ問題はあるにせよ,世界に誇ることができる.けっこう良い制度である.日本国民の健康は,この制度によって守られていると言ってもよい.自分や家族が大病を患ったとき,この制度の有難みを思い知らされたという人も多い.世に完全な制度はない.現行の制度を改革しようとする試みは常に必要である.しかし米国と同じ制度にすることだけは,絶対に止めたほうが良い. 医療制度の改革について,どの程度の議論をわれわれはしたのだろう.たとえばアナタは家族の間や職場の同僚との間で,そういう話をしたことがありますか? または大手マスコミが,この問題を本格的に取り上げたことがありますか? たいへん重要な問題であるけれど,今のところ日本人はしっかり考えていると言い難い.まだ日本人の多くはそういう状態でしょう. ところが,その重要な制度が,日本人相互の合意形成を経ることなく,こともあろうに外圧によって,米国ふうに変えられようとしている.それがTPPである. TPPは農業の問題だ.都市部に住む大多数の日本人には関係ない.自由化によるメリットのほうが大きい.そのように,そうであるかにように,大マスコミは報道している.なるほど農家は大きな影響をこうむるだろう.農村部を地盤とする保守系政治家の中には,自分はTPPに反対だ,とのたまわっている人もいる.とりあえず選挙の投票日までは,そういう意見を述べる.選挙が終われば,やがて党の方針に従うしかない.知っていて反対を唱えているわけで,こういう人をウソつきと言います. たしかに農家には深刻な問題であるが,それだけではない.農業関係に限定して考えても,次のような問題は,農家だけの問題では済まない.たとえば食料の自給率を下げて,国民の食料供給を外国の商社に依存するのが,日本国のとるべき道なのだろうか.たとえば食肉の安全性についてはどうなのだろう.たとえば日本の農村風景から水田が消えて行くという問題.この最後の点は風景だけの変化で終わるわけではなく,微気象の変化,植生の変化,乾燥化,温暖化,自然災害の増加,などに波及する. 話をもとへ. 農業は大いに関係しているけれど,農業だけの問題ではない.私が最も心配しているのが上記の医療制度の問題だ.これは非常に大きな問題だ.高額な保険料を払えない低所得者層を地獄の底に突き落とす.恐怖の大改革だ.TPPに賛成だと言っている候補者には,世界に誇る日本の医療制度が崩壊する可能性についてどう考えるのか,ぜひ質問してみてください. |
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