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丸い眼鏡をかけた60歳くらいの店主が出てきた。
「この書を見て欲しいんですけど」 藤棚の男からもらった“武蔵の書”を広げて見せた。 骨董屋の店主はその巻紙を広げて一瞥すると、 「これはどうされたのですか」 と口元に笑みを浮かべて訊いた。 そこで一昨日の藤棚での顛末を話した。 店主は興味深そうに聞いていたが話が終わると、 「それはいいことをなさいましたね」 と巻紙を仕舞い始めた。 「でその書は・・・・」 「もちろん武蔵の書ですよ」 「・・・・・・・・・」 「ただし、プリントですけどね」 「すると値段のほうは」 「ほとんど無価値です、しいて言えば2、3百円ですかな」 きょうもあの藤棚の前を通ったが、 あの男の姿を見かけることはなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2003.04.16 21:57:39
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