2008/09/24(水)08:13
『謎の転倒犬』 柴田よしき
謎の転倒犬
― 石狩くんと(株)魔泉洞 ―
就職が決まらない大学四年の僕は、アルバイトを終えた早朝
厚化粧の女性・摩耶優麗と出会った。
こんなバイトをすることになった要因をズバリ言い当てた優麗は、
占いの力で時を遡り僕の過去を覗いてきたという。
さらに僕が遭遇したスリ事件を鮮やかに解決した優麗のもと、
(株)魔泉洞に就職することになった僕。
果たして、優麗の力は占いなのか? それとも推理なのか?
カリスマ占い師・麻耶優麗の名推理と、優麗に翻弄される
石狩くんの受難をユーモラスに描いた、本格ミステリ連作集。
(東京創元社HPより)
今年の5月に出たばかりの柴田さんの新作です。
『謎の転倒犬』っていう妙なタイトルを見て、
「どんな話じゃい!?」と興味津々でおりましたところ、
目次を見た途端、「プッ!」って吹いちゃいました。
この作品、連作短編集なんですけど、各話のタイトルが、
「時をかける熟女」
「まぼろしのパンフレンド」
「謎の転倒犬」
「狙われた学割」
「七セットふたたび」
・・・って、これ全部、筒井康隆さんと眉村卓さんの
小説のタイトルのパクリじゃん!(爆)
いや、パクリっていうか、パロディですね、これは。
一応ご説明しておきますと、こういうことです。
「時をかける熟女」→「時をかける少女」筒井康隆
「まぼろしのパンフレンド」→「まぼろしのペンフレンド」眉村卓
「謎の転倒犬」→「なぞの転校生」眉村卓
「狙われた学割」→「ねらわれた学園」眉村卓
「七セットふたたび」→「七瀬ふたたび」筒井康隆
話の内容は、ご本家の作品とは全く違うので
たぶん柴田さんは、まず「タイトルありき」で
それぞれの話を作ったんでしょうね。
うーん。なんだか楽しそうです♪
そんな遊び心満載のこの作品ですが、
これまでの柴田さんの作品の中でいうと
『猫探偵・正太郎シリーズ』と系統が近いかも。
殺人のように物騒な事件はまったく起きません。
ジャンル的にいうと「日常ミステリ」かな?
デート中に突然失踪してしまったパン好きの男が
テーブルの上に残していったクリームパンの謎。
散歩中に何もないところで転倒してしまう犬の謎。
そんな謎の数々をカリスマ占い師・摩耶優麗(まやゆうれ)が、
鋭い観察眼で次々と解明していくというお話です。
この作品、キャラクターがすごく楽しいです。
摩耶優麗さんは、強引でわがままで大食いで
すっぴんの時と厚化粧の時のギャップが激しくて
推定年齢20代半ばから50代、と年齢不詳(笑)
(株)魔泉洞の屋台骨を支える「ウサギちゃん」こと
宇佐美儀一郎さんは、有能で腕っ節も強いのに
なぜかおネエ言葉を使うオカマチックなおっさん。
そんな二人にこき使われ、振りまわされるのが
ちょっと気の弱い主人公・石狩くん。
それぞれいい味出してるんですよね。
シリーズ化して欲しいなぁ、これ・・・