2008/12/11(木)16:34
『つくもがみ貸します』 畠中 恵
お江戸の片隅、お紅と清次の姉弟二人で切り盛りする、
小さなお店「出雲屋」。鍋、釜、布団にふんどしまで、
何でも貸し出す出雲屋ですが、よそにはないような、
ちょっと妙な品も混じっているようで…。
彼らは、生まれて百年を経て、つくもがみという
妖怪に化した古道具。気位も高く、いたずら好きで
おせっかいな妖怪たちは、今日もせっせと、出雲屋を
引っ掻き回すのでありました。
ほろりと切なく、ふんわり暖かい。
畠中ワールド、待望の最新作。
(「BOOK」データベースより)
『しゃばけ』シリーズでおなじみの畠中恵さんの時代物。
『しゃばけ』同様、この作品にも妖(あやかし)が登場します。
『しゃばけ』では、妖たちは主人公と仲睦まじい様子でしたが
この作品では、妖たちは「絶対に人間と会話をしない」という
ちょっと一線を引いたような関係になっています。
とはいっても、間接的ではあるものの、つくもがみたちと
主人公の清次やお紅達との意思の疎通はできています。
なんだかんだ屁理屈をこねつつも、清次とお紅の作戦に
まんまとのせられてしまうつくもがみの面々は、
結局のところ清次とお紅の為に一肌脱いでしまうわけです。
「人間ごときに使われるなんて…」と腹を立てる反面
健気に店を切り盛りしている清次とお紅を心配する
気持ちもあり、つくもがみたちはちょっと複雑な心境。
「できの悪い孫を見守る偏屈なお年寄り」という感じですかね。
その微妙な距離感がすごく微笑ましいです。
物語の舞台となっている「出雲屋」は、古道具屋兼
日用品から高級品まで様々な品を貸し出すという
「レンタルショップ」のようなお店。
江戸時代にもこんなお店があったとは知りませんでした。
テレビの時代劇などではあまり窺い知ることができない
江戸の庶民文化が散りばめられていてなかなか楽しいです。
実の兄弟ではない、清次とお紅の関係にも注目です♪
この作品も、「ほのぼのムードなんだけどちょっとせつない」
という感じの、畠中さん独特のテイストがありました。