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2006年11月24日
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カテゴリ:第2章
 先制核攻撃も辞さないソ連の野望

 一九八一年八月七日、伝統的保守紙ワシントン・イブニング・スターが廃刊を発表し、百二十八年の輝かしい歴史に幕を閉じたとき、最も慌てたのがホワイトハウスであった。
 レーガン大統領が就任してまだ七カ月しか経っていないときである。ホワイトハウスの責任者たちは顔面蒼白になった。保守反共の大統領を迎え入れたホワイトハウスは孤立無援に陥り、まるで絶海の孤島のようであった。
 苦悩に沈むレーガン大統領は、「千に一つと言えども奇跡が起こって、スター紙が救援されることを強力に期待する」と語った。大統領の悩みの深さが分かろうというものである。そしてその奇跡が起こった。ワシントン・スターの救援ではなく、ワシントン・タイムズの誕生である。
 ホワイトハウスはワシントン・タイムズの発展過程を黙って注視していた。とはいえ、ワシントン・タイムズがレーガン大統領の政策遂行に決定的な影響を与える世論形成の主役である、と看破するのに、多くの時間はかからなかった。
 レーガン政権最大の功績であり、“共産主義解放の決定打”と言える重大な戦いが開始された。そしてレーガン大統領は、ワシントン・タイムズの強力な後押しのおかげで、獰猛な狼の群れにも似たリベラル派メディアを抑えて、歴史的な政策遂行に邁進できたのである。それが一九八三年三月二十三日に発表された「SDI(Strategic Defense Initiative 戦略防衛構想)」、俗に“スター・ウォーズ(Star Wars)計画”と呼ばれるものである。
 文鮮明先生は共産主義とソ連の本質を誰よりもよく知っていた。先生はソ連の世界共産化戦略を正確に見抜いておられた。
「共産主義という思想は、人命の損失に関係なくどんなことでもやる。アメリカを全部破壊してでも、また世界人口が半分に減るようなことがあっても、世界赤化が成し遂げられる保証さえあれば、これを躊躇なくやってのけるのが共産主義思想である。これこそ『目的がその手段を正当化する』というレーニンの赤化戦略そのものである。ソ連はまた自国の国民経済を全部犠牲にしても、核兵器をアメリカの二倍、三倍作って、核戦争に勝つ見込みさえあれば、いつでも大量の核兵器を使用して先制攻撃を行うことは明らかである。その結果は地球破滅の戦争になるであろう。
 アメリカは、ソ連の先制攻撃を受けて反撃するという現在の牽制戦略(deterrent policy)では必ず失敗する。アメリカはソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射されても、それがアメリカに到着する前に防御できる新戦略を模索すべきだ。そうしなければ、アメリカはもちろん自由世界は必ず滅亡する」
 これは文鮮明先生の絶え間のない絶叫であった。
 ちょうどその時、文先生の後ろ盾でもするかのように、アメリカで新しい戦略構想が胎動を始めた。米国防総省情報局長官、中央情報局(CIA)副長官を歴任したダニエル・グラハム将軍が提言した「ハイ・フロンティア(High Frontier)構想」である。
 これはソ連とアメリカを結ぶ宇宙空間に、コンピューターとハイテク技術を駆使した各種人工衛星によって何重もの網を張る壮大な構想であった。
 ソ連から発射された核ミサイルは、宇宙空間に配備した四百三十二個の人工衛星が探知して、衛星が装備する小型迎撃ミサイルで捕捉・撃破する。第一段階での迎撃をすり抜けたミサイルは、宇宙配備のレーザー兵器などを使って、やはり宇宙空間で捕捉・撃破する。この第二段階の迎撃を運よく逃れたとしても、宇宙空間から大気圏への突入段階で、地上基地からのミサイル攻撃やレーザー攻撃で捕捉・撃破する。
 要するに、ソ連の核ミサイルを、アメリカ本土に到達する前に一〇〇パーセント捕捉して、撃破しようというのである。
 これは徹底した防御重視戦略である。これが実現可能であれば、これ以上に優れた戦略を想像できるだろうか。グラハム将軍は、アメリカの先端技術の進歩によって、この構想が決して夢物語ではなく実現可能であると訴えていた。





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最終更新日  2006年11月24日 18時45分40秒
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