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2007年01月16日
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テーマ:統一運動(71)
カテゴリ:第6章
 国際安全保障協議会「セントルイス宣言」の慧眼

 一九八三年のワシントン・タイムズ社長室での出来事である。
 ある日、珍しいお客様が訪ねて来た。彼はユダヤ人学者として国際問題、特に国家安全保障問題の最高権威者であった。彼の名前はジョセフ・チャーバ博士(Dr. Joseph Churba 米空軍大学教授、米空軍情報局中東・ソ連問題特別顧問、レーガン候補外交顧問、米軍備管理軍縮局上級政策顧問など歴任)である。
 博士が私に言うことには、
「私はワシントン・タイムズの創刊以来、生き甲斐を感じています。今日の冷戦体制下で勝利を収めるのに、この新聞が決定的な役割を果たせると私は確信しています。レバレンド・ムーンは共産主義を解放できる唯一の人物、唯一の希望です。
 ところで、私はきょうレバレンド・ムーンに一つの提案書を持って来ました。それはISC(International Security Council 国際安全保障協議会)の創設です。新聞だけでは足りません。政府の政策立案者たちに、『共産主義に勝つための政策と理論』を作ってあげなければなりません。そうしなければ、すべてが絵に描いた餅です。私にその役目を下さい。私は終生の事業としてこの仕事を担当致します」
 私はチャーバ博士の提案に大きな感動を覚えた。本当に正鵠を射た言葉であると思った。私はすぐにニューヨークに駆け付けて、文鮮明先生にその提案書を提出した。
 判断が早い先生は、そうでなくともチャーバ博士の名声を知っておられたので、一言のもとにその創設を許可してくださった。
 ISC<22>の発展過程で産婆役を果たし、チャーバ博士を助けてその組織を導いてきた隠れた功労者が、当時ワシントン・タイムズ社の副社長として事務を執っていた韓相國氏(前ノルウェー大使)である。
 さて、国際安全保障協議会は一九八九年三月二十九日から三十一日までの三日間、米国ミズーリ州セントルイスで、ホワイトハウスの要請により「ソ連における変化の評価」という主題で国際セミナーを開いた。ここにはアメリカだけでなく、国際的に名の知れた西側の安全保障、共産主義問題担当の専門家十八名が集まった。このセミナーは参加人数よりも質に重点を置いた世界最高権威者たちの集まりであった。
 このセミナーで、ゴルバチョフ改革と今後のソ連の展望、そして特にアメリカが取るべき対ソ外交政策について集中討議があった。勿論、文鮮明先生の基本原則を土台としてである。ここで編まれた政策が、ソ連評価の物差しを提示する、いわゆる「人参政策」(走る馬の前に人参を吊す政策)であった。
 ISCは、このセミナーの終わりに「セントルイス宣言」を発表した。そこには、ソ連の改革を評価する十箇条の物差しが提示されていた。この物差しに合致すればその改革は本物であり、そうでなければ改革は偽物、欺瞞政策であるということだ。
 十箇条の物差しは、
 (1)ブレジネフ・ドクトリンの放棄(東欧諸国に対するソ連の干渉を放棄する)
 (2)ソ連の軍事諸計画の大幅縮小(核兵器の調達、近代化を含む)
 (3)キューバ、ニカラグア、アンゴラ、アフガニスタン、ベトナム、エチオピアなどの共産主義政権に対する軍事援助の中止
 (4)軍備管理協定の誠実な順守(ABM条約違反の中止を含む)
 (5)START(戦略兵器削減交渉)をSDI計画の制限・禁止にリンクさせないこと
 (6)ベルリンの壁の撤去
 (7)ソ連からの自由出国を含むヘルシンキ協定の順守
 (8)ソ連国内での政治改革(一党独裁の放棄、複数政党制、司法の独立、自由な労組など)
 (9)アメリカに対する欺瞞情報、虚偽宣伝キャンペーンの中止
 (10)国際テロ支援の即刻停止
 以上である。
 この十個の条項が順守されれば、ソ連は西側の大幅支援を受ける資格があるということになる。しかし、これらの条項を見れば分かるように、セントルイス宣言はソ連に対してソ連であることを放棄せよと言っているに等しい。世界赤化の野望は勿論のこと、共産党一党独裁も放棄せよ、マルクス・レーニン主義も放棄せよ、と厳しく迫っているのである。
 この政策建議が基礎となって、ブッシュ大統領の「対ソ外交の基本方針」が策定され、「人参政策」が動き出したのである。






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最終更新日  2007年01月20日 19時10分57秒
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